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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
81/186

公爵邸

『え~、残念なお知らせです。試合開始の宣言から15分が経過してしまいました。この時点をもって、両者失格とします。』


失格のアナウンスで会場からブーイングが起きる。


『観たいカードだったんだけどな。』

『私も非常に気になる試合でした。やっと勇者様の本気の戦闘が観れると思っていたのですが・・・こうなってしまったものは仕方ありません。気を取り直して次に行きましょう。』

『仕方ないか』

『次の試合は、まさかまさかの2人目のダークホース、本戦出場回数2回目にして準決勝進出。アデル選手。』

『アデル選手は今回の意気込みがすごかったからな。それだけで勝ち抜けるわけではないのだが、トーナメントの場所が良かった事もあって怒涛の勝ち上がりを見せてくれた。』

『そして、四回戦でレックス選手を破っての準決勝進出、冒険者ギルドSランク初出場のロレイ選手です。』

『何故かケガを治してこなかったレックス殿の隙を突いての勝利。試合内容は白熱していたはずなんだが、記憶に残らないな。ロレイ殿のスキルなのだろうか?』

『確かにそうですね。ロレイ選手の試合はほとんど記憶にありません。一番熱かったのはハヤト選手とリリィ選手の試合でしょうか?』

『目立たないスキル・・・実際戦うと、どういう風に認識できるのだろうか。』

『やはり、ロレイ選手は気になりますね。おや?そのロレイ選手もステージに顔を出しませんね。何かあったのでしょうか?』

『失格はやめて欲しいところだな。』

『不吉な事言わないで下さいよ。』


会場はロレイが来ないせいで、また待つはめになった。





ハイゼンベルク公爵邸



「なぜ貴方がここにいるのですか?」

「ボクの所に面白い依頼が来ててね。キミの魔石が邪魔だから潰しに来たんだ。」


ハイゼンベルク公爵は突然の来訪者にも驚いたのだが、自分のおこないがバレていると知り、一瞬狼狽える。


「何の話だか分かりませんね。」

「そうかい?この王都にばらまかれている最近話題になっている魔石の供給源はここだと思っていたのだけど。」


「根も葉もない噂で公爵邸に乗り込まれても困りますよ。これだから野蛮な冒険者とやらは嫌いなのです。」


ハイゼンベルク公爵は手元にあるベルを鳴らして使用人を呼び寄せる。

すぐさま武器を持った護衛や私兵達が入ってきてロレイを囲み、武器を突きつける。


「ボクがわざわざ面白くないパーティーや武闘大会に参加して情報を集めたのに、ハズレだったなんてある訳ないじゃないか。」

「大した自信ですね。しかし、そこまでです。そこの侵入者を捕えなさい。」


私兵達は公爵の号令で一斉に動き出すも、一歩踏み込んだところで全員が倒れ伏す。


「キミの策はこの程度なのかな?」

「き、貴様!何をした!?」


ハイゼンベルク公爵は冷や汗を垂らしながら一歩後ずさる。


「何もしていないよ。勝手に夢の国に旅立ったんだ。キミもすぐに送ってあげるよ。何を企んでたか知らないけど、残念だったね。」

「なんだと?ふざけるな!私が長年かけて温めてきた計画だ!こんなところで壊されていいわけが無い!」

「おや、それは自白したって事でいいのかな?」


ロレイは黒い笑顔を浮かべたままハイゼンベルク公爵に近づいていく。


「私たちは絶対的な権力を持った貴族の支配の元で、平和な世界を作らなければならないんだ。今のこの国は貴族の力が失われつつある。私が国王にとって代わって正しい方に舵を切らなければならない。これは革命なのだよ。」

「あんな制御できない石ころでどうしようっていうんだか。」

「あの魔石はただの失敗作だ。理性が無くなっては意味がない。私には完成品とそれを量産するだけの技術がある。これを使って軍隊を作り、この世界を一つに統一する!」

「大した夢だけど、興味が欠片もわかないよ。」

「貴様の同意など求めていない。どうせここで死ぬんだからな!」


ハイゼンベルク公爵は引き出しを開け、ビー玉程度の魔石を取り出す。


「それが完成品かい?」

「そうだ!貴様を殺す最強の力だ!失敗作ですらレックスに重傷を負わせた。完成品の力はあんな失敗作の数倍強力に出来ているぞ!」


ハイゼンベルク公爵は魔石に魔力を込める。魔石からモヤが噴き出し、ハイゼンベルク公爵を包みだす。


「じゃあ面倒になる前に終わらせようか。」


ロレイが腕を振るう。ロレイの手にはいつの間にかナイフが握られていて、ハイゼンベルク公爵の腕を肩から切り飛ばした。


「あ”あ”ぁぁぁあぁぁ!う”でがぁぁぁ!」


あふれ出していたモヤは止まり、ハイゼンベルク公爵は千切れた肩を押さえて痛みにのたうち回る。


「汚い悲鳴だなぁ。ほら、痛みは無くしてあげるよ。」


ロレイはヒールを唱えて切った腕を止血する。


「貴様!ただで済むと思うなよ!」

「そんな事よりも聞きたいことが山ほどあるんだ。教えてもらうよ。」

「ふん。教えることなど何もな----あがぁ!」


ロレイはハイゼンベルク公爵を蹴り飛ばして黙らせる。切られた腕から、魔石をひったくり指でもてあそびながらハイゼンベルク公爵に近づいていく。


「面倒なのは嫌いなんだ。素直になる技でも使おう----おっと・・・残念だけど時間切れのようだね。」


ロレイは入り口側に目を向ける。静かになった途端に今まで聞こえていなかった足音が聞こえてくる。


「何の音だ!?警戒しつつ突入!」


ドアをけ破り、ドタドタと騎士達が公爵の書斎に入ってくる。


「これは・・・どういう状況ですか?」


隊長が倒れる公爵と、追い詰めるロレイを見て問いかける。


「簡単だよ。僕の元に依頼が来ていてね。ここで名前は明かせないけど、貴族からのちゃんとした依頼だ。追っていたのは君たちと同じモノだろうね。」


ロレイは書斎の引き出しを開け、厳重に保管されている箱を取り出し中身を騎士に見せる。


「確かに、同じモノのようです。」


箱の中には、公爵が完成品と言っていたモノがキレイに並べられていた。


「ボクの事情聴取は、さっさと済ませてくれるかい?まだ試合が残ってるんだ。」

「わかりました。証拠品の押収とロレイ殿の事情聴取を急いでくれ。」


隊長は部下に指示して公爵の方を向く。


「ハイゼンベルク公爵、ご同行願います。」

「くっくっく。すでに手遅れなんですがね。まぁ良いでしょう。」


騎士隊長に残った方の腕を掴まれて、ハイゼンベルク公爵は連行されていった。





『来ませんね・・・誘拐でもされたのでしょうか?』

『Sランクを騒がれずに誘拐出来るとか、どんな実力者だろうか。』

『そうですよね。このままロレイ選手も来ないとなると、なぜか来ているアデル選手の優勝になってしまいます。』

『この準決勝が実質の決勝という時点でどうかと思うのだが、不戦勝だとなおさら盛り上がりに欠けるな。』

『盛り上がりに欠けるどころじゃないですよね・・・。良い事思いつきました、延期にしましょう。』

『ダメだ。』

『ですよね~』


ニーナとアレクシアで気の抜けた繋ぎのトークをしているとステージ中央に魔術の陣が出現し、鈍い光を放つ。


『ド派手な演出でロレイ選手の登場でしょうか!?』

『そんなわけないだろう!総員警戒態勢!』


アレクシアが警備の騎士に呼びかける。


光が収束し、黒いモヤが姿を現す。モヤもだんだんと形を変え、人のような姿を取る。モヤが一気に消し飛び、中から骸骨が姿を現した。

骸骨は、キョロキョロと辺りを見渡して首をかしげる。


「おや?予定時刻の前に術が起動したので見に来たのですが、もしやカレは失敗しましたか?」


『えっと・・・どなたでしょうか?』


「これはこれは、失礼しました。ワタシは”不死の魔王”アンデッドロードと申します。」


名乗った瞬間に放たれたアンデッドロードの死の魔力に、会場にいた全員が恐怖と威圧で動けなくなった。


「うあぁぁぁぁぁ!!」


誰もが震えて立ち上がる事も出来ないなか、アデルはアンデッドロードに切りかかる。いや恐怖で実力差もかえりみず切りかかってしまった。


カンッ


平常心を保てていないアデルの剣は、突っ立っていたアンデッドロードの頭部に直撃するも、1mmも動かす事すらできなかった。

アンデッドロードは頭部に当たった剣をつまみ、羽虫でも払うかのように拳を振るう。


「ガァ!」


長い腕はアデルの空いたわき腹辺りを振り抜き、アデルは何度か地面をバウンドして壁に激突して止まった。

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