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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
8/186

魔術

降りて来ないんじゃなかったのかよ。

スゴい頻度で来るじゃん。


「こんばんは、待っていましたよ。勇者ハヤト様」

「こんばんはディア。」


部屋の中へと足を踏み入れると、ドアで死角になっていた所にもう1人座っていた。

目元まで前髪で隠れていてほとんど顔は見えなく、口元も表情がほとんどない、とても小さく華奢な女性だ。


「ディア、こちらの方は?」

「女神のフィーレですよ。」


ディアは、相変わらずの笑顔で名前だけ教えてくれた。

女神と言うことはわかったが他の紹介は無いのか?


「一応勇者の隼人です。宜しくお願いします。フィーレさん。」

「・・・・・・・・・・・・・・ぃ・・・・」

「えっと、すみませんもう一度お願いします。」

「・・・・・・フィーレでいい・・・・・・敬語も・・・いらない・・・」

「わかった、宜しく、フィーレ」

「・・・・・・ん」

「お待たせしました。」


自己紹介が一通り済んだところで、マリエルさんが俺用のティーカップと紅茶を持ってきてくれた。

流れるような手つきで紅茶を注いでくれる。


「豊穣神様と魔術神様はおかわりはいかがでございますか?」

「いただきますね」

「・・・・・・・いる」


うん?魔術神?

凄くタイムリーな女神様がいらっしゃるな。


「フィーレは魔術の神様なのか?」

「・・・・・・ん」


数ミリうなずくように頭が動く。


「フィーレは、ハヤト様に魔術を教えるために、呼んだのですよ。」


初心者が魔術界のトップに教えてもらうとか、各方面の方々からすごく怒られそうな状況だな。


「ちょうど魔術の先生を捜していたところだったんだ。」

「見ていたので、知っていますよ。」

「・・・へ?」


ヤバいなんか変な声がでた。

今、何とおっしゃいましたか?

たぶん、魔術の先生を捜しているところを見たのだろう。


「違いますよ。ゴブリンに火の初級魔術が撃てず、ちょっと赤面しながらキョロキョロしているところを見ていました。」


グサッ・・・最悪じゃないか・・・

しかもナチュラルに思考を読まれて返答されている。


「あれを見てたんですか・・・」

「はい、独学では難しいので先生が必要だと思って呼んでおいたのですよ。できる女神なのですよ。」

「ディアはとても頼りになる女神だな。」


とりあえず誉めておこう。


「ところで、魔術の練習はどこでされるのでございますか?外に出てしまうと、降臨されている事がバレてしまうのでございます。」

「それは大丈夫ですよ。フィーレ、そろそろ行ってきたらいいのですよ。」

「・・・・・・ん・・・行ってくる・・・」


そう言ってフィーレは、俺の顔の前に手を向ける。

何だ?と思ったその瞬間、まばゆい光で視界が埋め尽くされ、気付けば天井も壁も無く、床さえ無い真っ白な空間の中にいた。

視界に映るのは目の前に立っているフィーレだけでだった。



閑話


二人が消えた現実に理解が追い付かないマリエルさんは、ディアに質問していた。


「豊穣神様、お二人はどこに行ってしまわれたのでございますか?」

「神界ですよ。」

「・・・ふぇ?」


マリエルさんはたっぷり10秒ほど固まっていた。



閑話休題


座っている時も思ったが、やはりフィーレはとても小さかった。

身長は、俺の首元くらいまでしか無いんじゃないだろうか?


「フィーレ、この真っ白な空間はどこなんだ?」

「・・・・・・神界」

「人間が入っていい場所なのか?」

「・・・・・・問題無い」

「ここで魔術を教えて貰えるのか?」

「・・・・・・ん」


ダメだ、会話が全然続く気がしない。


「宜しくお願いします。フィーレ先生」

「・・・・・・フィーレでいい。」

「雰囲気出ると思ったんだけど・・・じゃあ宜しくフィーレ」

「・・・・・・ん・・・加護・・・あげる」


フィーレは、両手で包み込むように俺の手を取った。

ディアから加護を貰った時と同じで、手が柔らかな光に包まれる。


称号


New魔術の女神の加護(小):消費魔力・魔力コントロールにボーナス小


「ありがとう、フィーレ」

「・・・・・・魔術・・・教える・・・」

「頑張ります」

「・・・・・・ん・・・ハヤトの魔力、動かす・・・感じて・・・」


フィーレは、俺の後ろに回り込み抱きしめるように手を回してきた。

左手はへそ辺りに、右手は俺の右手に添えるようにして前に出す。

フィーレさん、すごく無防備に密着しているんですが大丈夫でしょうか・・・

邪な感情を振り払おうと添えられた手に集中すると、体内で循環しているエネルギーを感じた。


「フィーレ、この動いてるのが魔力なのか?」

「・・・・・・もう・・・わかったの?」

「なんとなくだけど、フィーレが触ってる所を動いてるのがわかる。」

「・・・・・・すごい・・・一人で・・・やってみて」


フィーレは身体を離し、後ろへ数歩さがった。

フィーレにやってもらった感覚を思い出すように全身に魔力を循環させる。


「・・・・・・できてる・・・手に・・・集めて」


いわれた通り右手に魔力を集中させる。


「・・・・・・魔術・・・使える・・・・・・好きに・・・動かせる」


魔力のコントロールはできているはずなので、昼間のように巨大なファイヤーボールは出ないはずだ。

手を伸ばし、手のひらを上に向け、野球ボールくらいの大きさを出そうと思いつぶやく。


「ファイヤーボール」


多少大きいかもしれないが狙ったサイズの玉が出来上がった。

ファイヤーボールをふわふわと上下させてみるが、おかしな挙動も無く、思い通りに動かせた。


「消えろ」


フッと火の玉が消える。


「どうかな?」


後ろで見守ってくれていたフィーレに声をかける。


「・・・・・・上手」


どうやら神様のお墨付きをいただけたみたいだ。

その後、真っ白な空間に本が大量に現れ、魔術の座学が始まった。

フィーレと話していて知った事だが、教会でもらった装備と魔術の相性が良くないらしい。

おそらく魔術師ではない人の装備だったのだろう。

早急に自分用の物を新調しなければいけない。


「・・・・・・今日は・・・ここまで」

「ありがとう、フィーレ」

「・・・・・・ん・・・・・・ハヤト・・・手・・・出して・・・?」


いわれた通りに右手を前に出す。

またも、俺の手を両手で包み込む。

そして、手が柔らかな光に包まれる。


称号


New魔術の女神の加護(大):消費魔力・魔力コントロールにボーナス大


「・・・・・あげる」

「いいのか?」

「・・・・・・ん・・・ご褒美・・・えらい」


なんだかすごく褒められた。


「ありがとう」

「・・・・・・また・・・きて」

「あぁ、もっといろいろ教えてほしい。」

「・・・・・・ばいばい」


また、一瞬光ったと思ったら、マリエルさんの部屋へと戻ってきていた。


「戻ってきたのですよ。」

「どうでございましたか?」

「多少は使えるようになったよ。」


そこから少し雑談して、お開きとなった。


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― 新着の感想 ―
[一言] フィーレが可愛いので星5です
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