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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
75/186

三回戦3

「がああぁぁぁぁああぁぁ!!」


化け物は咆哮を上げながら観客席の方へと走り出す。

向かってくる化け物にあちらこちらから悲鳴が上がり、それを皮切りにパニックにおちいる。


『落ち着いてください。闘技場と観客席の間にはバリアが張られているので大丈夫です!アレクシア王女殿下、指揮をお願いしても宜しいですか?』

『あぁ、警備部隊は避難誘導班と迎撃班に分かれて事態の収束にあたってくれ。化け物を包囲し、魔術で無力化しろ。』


化け物が二度三度とバリアに攻撃したところで、警備の騎士がすぐさま包囲網を完成させる。


「総員、魔術を展開・・・撃ーーーー」

「はあぁぁぁぁ!!」


号令がかかろうとした瞬間、気合いと共に土煙の中から人の大きさの影が飛び出す。

影は包囲の間をすり抜けて、キャノンボールの様に化け物に激突し、向こうの壁まで化け物を弾き飛ばした。


「コイツは俺の相手だ!邪魔してくれるなよ!」


砲弾の正体はレックス。ショルダータックルで化け物を弾き飛ばし、入れ替わるように包囲の中でサイドチェストを決めていた。

誰もがポカンとした表情でレックスを見つめる。

普段通りの調子で動いているが、剣を受けた左腕からは結構な量の流血をしていて、おそらく骨辺りまで斬られているだろう。


「は、はい!」


レックスの気迫なのか、あれだけ吹っ飛ばされて重傷なのにピンピンしていることにドン引きなのか、騎士の隊長が噛みながらも返事をする。

レックスは飛んでいった化け物を睨み付け、再びタックルをかます。


『レックス選手の復活です!しかし、試合はレックス選手の勝利なので、戦う意味はありません!これはただの場外戦闘です!』

『腕の出血が酷いな。あそこまで傷付いたレックス殿は初めて見た。』

『レックス選手、騎士を無視して突撃!連携する気は全く無いようです!・・・バカですね。』

『Sランク冒険者ともなれば、そんなもんだろう。』


化け物は、レックスのタックルをジャンプで避け、ロングソードを振り回す。

レックスはロングソードを回避し近づいていくが、避けきれず当たって弾かれる。

当たる寸前にバックステップで衝撃を殺し、ダメージをやわらげるが、それでも無傷とまではいかなかった。

そんなやり取りを何度か繰り返し、ついにレックスの堪忍袋の緒が切れた。


「あぁぁぁあぁぁ!!」


咆哮と共にフルパワーで突っ込み、一気に拳の当たる距離まで近づき、拳を握り締めて身体を弓なりにしならせる。

化け物は、レックスの動きに合わせて剣を振るう。


「がああぁぁぁぁああぁぁ!!」


化け物の剣の方が早く、レックスに到達する。レックスは腕で剣をガードし、体勢を崩しながらも受け止め、カウンターを放つ。

肉を切らせて骨を断つ捨て身の一撃。


「ぬん!!」


レックスの拳は鎖骨辺りにヒットし、文字通り上半身を消し飛ばした。


『決まったー!!フルパワーのレックスパーンチ!!・・・ですよね?』

『あぁ、だが、体勢が崩れていたからマックスでは放てていないだろう。』

『その辺はノリでいきましょうよ!脳筋の捨て身の一撃!レックス選手はこれしか出来ないのでしょうか?』

『唯一の武器だからな。当たれば勝つさ。』

『防御ありきの戦い方ですね。いえ、一撃を決めるための防御でしょうか。』

『まぁ、タネは身体強化だから、大元は同じなんだけどな。』

『何はともあれ、もう大丈夫ですね。すでに決まっていましたが、レックス選手の勝利で本日の試合は全て終了です。続きは明日になりますので、選手の皆様はコンディションを整えて次の試合に備えてください。』


お気楽な司会で無事?本戦初日が終わった。




最後の最後で問題が発生したが、観客に被害は無く大会は中止にはならなかった。まことに残念である。

落ち着きを取り戻した会場は、全試合終わったのでパラパラと帰路につき始める。俺達も明日に備えて帰る事にした。


「酷い戦いだったな。あれだけ食らってピンピンしてるとか、人間じゃないな。」

「レックスさんはSランクの中でも頑丈さがずば抜けてますからね。」

「頑丈とかいうレベルじゃないだろ・・・。」


きっとロングソードもモヤによって強化されていただろう。そんな一撃を受けて骨折で済ませるとか、アイツもモヤで強化されてんじゃないのか?

ロングソードを防具無しの生身で受けるのはさすがに無謀だ。レックス以外の人間が身体強化で防御力を上げたところで気休めにしかならないだろう。

あれを受けきる筋肉の鎧は尊敬に値する。それ以外はバカで、トータルすると完全にバカだったが・・・


「次は、ハヤトさんとリリィさんの戦いですね。楽しみです。」

「リリィさん、その件なんだが、そろそろめんど----」

「ハヤト殿、私とも真面目に戦ってくれるのだろうな。」


面倒臭いから負けたいと言いたかったのだが、言い切る前にリリィさんに先制される。戦える期待と、逃がさないといった表情が混ざり合った何とも言えない顔つきでこちらを見てくる。


「・・・はい」

「そうか、よかった。まさかこんなに早く全力の試合出来るとは思わなかった。正々堂々と戦おうか。」


いやいや、そんな目で見られたら断れないでしょうよ。

リリィさんとガチ戦闘とか、目立つ以外の何物でもない気がするんだが・・・仕方ないな。


「が、頑張ってください・・・ね。」

「楽しみにしているよ。」

「あぁ、出来れば頑張りたくなかった・・・」


シアちゃんとパトリックにありがたいお言葉を頂き、ぽろっと愚痴をこぼす。

もし勝った場合、八百長は光輝とやるしかないだろう。乗ってくれるといいんだが・・・。

そんなことを考えて歩いていると、前から声がかかる。


「ひ、姫様?」


ここに姫と呼ばれる人はいない、他の団体だろうか?


「姫様!」

「・・・え?」


目の前にいた青年は、シアちゃんの手を掴み、呼び止める。


「姫様、ご無事だったのですね。」

「・・・わ、私は・・・違います・・・ひ・・・ひとちがい・・・です。」

「・・・失礼しました。あまりに似ていたもので・・・」

「・・・いえ・・・」


青年は勘違いだとわかり、謝って去っていった。何だったんだ?

良く分からない状況も去り、竜の息吹メンバーと宿が違うので、解散することになった

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