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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
71/186

二回戦

変なボディービルダーに会わないように"竜の息吹"を探す。

運良く、すぐに見つかったので、輪に入れてもらう。


「ハヤトさん、試合は興味ないんじゃなかったんですか?」

「見ないつもりだったんだが、変なのに絡まれたから逃げてきた。」

「そうですか。じゃあ一緒に見ましょう。丁度一回戦が終わって、二回戦が始まる所ですよ。」


二回戦といえば第一試合が光輝だな。図らずも光輝の実力を見る事になってしまいそうだ。

対戦相手が光輝から本気を出させてくれればの話だが。


『それでは、皆さんおまちかねの”光の勇者”コウキ選手の登場です。対するは、一回戦で見事筋肉を打ち破った魔術師です。ついに勇者様が来ましたよ。会場も大いに湧いております。王女殿下はどう思われますか?』

『勇者殿は、剣と魔術を使うから、魔術1本では難しいかもしれない。先の戦いの様に、先制を取れるかがカギになるだろう。』

『なるほど~、ありがとうございます。それでは選手入場です。』


光輝と対戦相手が入ってきてステージに上がる。歓声が上がり、会場に光輝への声援が飛びかう。両者、離れたところで構えて審判の開始の合図を待つ。

審判がゆっくり手を上げて、振り下ろす。


『始め!』


魔術師が、開始と同時に距離を取りつつ詠唱を開始する。対して光輝は、走って距離を詰めながら、無詠唱でライトボールを2つ出し、牽制を放つ。


「なっ!!」


魔術師は光輝の無詠唱の魔術に驚き、牽制を避けるために詠唱を止めてしまう。

ライトボールの直撃をさけたものの、2発ともかすらせて被弾する。正確には、光輝がかする場所を狙ったと言った方が良いだろう。クリーンヒットさせていれば、場外に弾き飛ばして、試合はここで終わっていた。

魔術師は、被弾によろめきながらもなんとか踏ん張り、正面を見る。しかし、既に光輝の姿は無かった。


「こっちだよ。」


魔術師は声のした、後方を振り返ると、眼前に剣が迫っていた。

光輝は魔術師がよろけて目を離した瞬間に、身体強化で後ろに回り込み、ラケットでボールを打つように、剣の腹で魔術師の顔面を殴り付ける。


「がぁ!!」


もろに食らった魔術師は、そのまま何度かバウンドしてステージから転げ落ちる。


『決まったー!勇者コウキ選手の勝利です。無詠唱魔術での牽制。さらにバランスを崩した一瞬を突く鮮やかな一撃!!素晴らしいの一言に尽きます。』

『そうだな。牽制からのキレイすぎる試合運びは完全に計算しつくされているだろう。おそらくわざとかすらせているな。』

『そうなのですか?しかし、さすが最速の属性です。ライトボールは初級魔術ですが、攻撃速度が速すぎて目で追えません。これを何とか攻略しないと勝ち目はなさそうですね。』


光輝の試合が終わり、大会は順調に進んで、俺の番が回ってくる。




会場のVIP席


「ついに隼人の試合だね~本物かな~」

「普通に考えたら、同姓同名じゃないのかしら?この世界で、同姓同名は珍しいけど。」

「確かに都合よくココにいるなんて、ありえないですわね。」

「まぁ、見れば分かるんじゃないか?」


光輝も試合から戻ってきて4人と合流して話の輪に入る。


「そうですね。」


光輝の言葉に、いまだに信じられない顔をしたアリアが答える。アナウンスが入り、遂に本人かどうかの答え合わせとなる。


『続きまして、初出場同士の対決です。ハヤト選手とウッツ選手の入場です。えー両者初出場という事で、こちらに上がってきているプロフィールを紹介させていただきます。ハヤト選手は、なんとBランク冒険者という事です。あれ?ハヤト選手の情報はこれだけしか無いんですか?・・・気を取り直して、対するウッツ選手は、騎士学院の学年主席の様です。風属性で、ブロンドヘアーのさわやかなイケメン。付いたあだ名は”そよ風の貴公子”風になびく髪が美しいとのことです。どうですか?王女殿下。』

『2人に言える事は、将来有望といったところだろうか。あの年でBランク冒険者も、騎士学院の学年主席も素晴らしい。将来を担う若き戦士の戦いだろう。』

『そうですね。魔物との命がけの戦いをしてきた冒険者と、対人戦の試合を積み重ねてきた騎士の一騎打ちがいま始まります。』


隼人とウッツがステージに上がり、審判の掛け声で両者構える。


「本物みたいだね。」

「そうね。」

「そうですわね。」

「でも~隼人がこういう大会に真面目に出るとは思えないんだよね~」

「隼人はやると決まればやるじゃない。」

「う~ん。それは、目立たない事が大前提だから~こういう目立つ事には何かして来るかも~」


誰も結衣の言っている隼人がやるかやらないかの違いが判らず、行く末を見守り、結依は拭いきれない不安を抱えながら、試合開始の合図を待つ。




どうやら、対戦相手は学生の騎士らしい。主席というからには強いのだろう。そんなことを考えつつ、拳を構える。


「始め!!」


審判が腕を振り下ろす。


光輝は相手が魔術師だった為、魔術を撃たれる前に動いたが、騎士相手なのでお互いに出方を見て睨み合いとなる。


『睨み合いの膠着状態が続きます。慎重な探り合いをしていますね。果たしてどちらが先に仕掛けるのでしょうか。』


「どうやってBランクに上がったか知らないが、俺は騎士学院の学年主席で、試合では負け無しだ。お前のような冒険者では俺に勝つ事は出来ない。」

「・・・」

「今すぐ棄権でもすれば、痛い目みなくて済むぞ。」

「・・・そうか。審判。」


右手を上げて審判を呼ぶ。


「なんだ?」

「棄権する。」

「はぁ?」


あっさりとした俺の発言に、ウッツは素っ頓狂な声を出す。何で提案した本人が驚くんだよ。


『おぉっと!ハヤト選手棄権を申し出ました。これはどういう作戦なのでしょうか?』


「ダメです。」


『すかさず審判からNoが出ます。この大会の勝敗条件は、戦闘不能と場外と戦意喪失ですが、この場合は認められなかった様ですね。』


「実は調子が悪いんだ。特例とかないのか?」

「認められません。」


『なおも食い下がるハヤト選手。何かあるのでしょうか?』


審判にあれやこれや言ってみるも、全て突っぱねられる。どうもこの状況では戦意喪失にはならないらしい。違いが判らない。

そして、無視され続けたウッツがシビレを切らして突撃してくる。


「そんなに負けたいなら負かしてやるよ!!」


ウッツは後ろを向いて審判と話し込む隼人に肉薄し、剣を振りかぶる。普段はしないだろうイライラした大雑把な攻撃。


「今、話してる途中だろうが!」


襲い掛かってくるウッツに対して、半ば無意識に反撃してしまう。振り向きざまに顔面に廻し蹴りを一発。廻し蹴りは、ほぼ勝ちを確信して大ぶりなウッツの顎を、正確に撃ち抜いた。

もろに蹴りを食らったウッツは、何度かバウンドして、ゴロゴロと転がっていく。


『決まったー!!ハヤト選手の廻し蹴りです。審判を利用してのだまし討ち!これはセコイ。会場からもブーイングが飛びかいますが、ギリギリ反則ではありません。ただのウッツ選手の奇襲失敗です。』


「・・・あ」


実況を聞いてやってしまったことを思い出し、このままでは場外になってしまうウッツを助けに走る。

なんとかギリギリで手を掴み、ステージに引っ張り上げる。


「場外!」

「待て!こいつはまだ戦える。」


ぐったりしたウッツを操り人形の様に動かして手を振らせる。


『どうやら場外の地面に、ウッツ選手の手が触れてしまったようです。汚い手ですが、ハヤト選手の勝利です。』


「・・・なんでだよ。」


隼人のつぶやきは、会場のブーイングや歓声にかき消され、はかなく散った。


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