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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
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本戦開始

会場の特別席、拡声の魔術が刻印されたマイクのマジックアイテムで国王陛下の開会宣言がおこなわれる。

バリアの張られた特別席の中ではあるが、国王陛下の登場によって、会場は歓声に包まれる。


「本日は皆よく集まってくれた。2日に渡るムスぺリオス1番の大きな大会だ。選手はこの大会のために調整してきた者も多いだろう。知っている者も多いと思うが、今回は異世界より召喚された勇者も参加している。」


勇者の話が上がり、観客席の方が色めき立ち、選手達は勇者を倒し、名を上げようと不敵な笑みを浮かべる。

様々な感情が、会場内にひしめき合い、ボルテージがどんどんと上がっていく。


「優勝者には少くない賞金と名声を用意してある。実力を十分に発揮し、優勝を目指してくれ。」


選手達から大きな歓声が上がる。優勝賞金は白金貨1枚で約1000万円。さらには一年間勇者の称号が手に入り、他者とは一線を画した存在になれる。勇者の称号が無くなっても優勝したという経歴が無くなる訳ではないので、不安定な冒険者であっても将来が、かなり安定する。テンションが上がらない訳が無かった。


「観戦者達はこのムスペリオス最高峰の戦いを楽しんでいってくれ。それでは武闘大会を開始する!!」


一番の歓声が上がり、戦いの火蓋が切って落とされた。




『それでは国王陛下に代わりまして。私、ニーナが司会進行、実況を務めさせていただきます。そしてそして、解説にはムスペリオス第一王女アレクシア王女殿下にお越しいただきました。』

『解説のアレクシアだ。よろしく頼む。』


テンションの高い司会進行と、簡潔な挨拶をするアレクシア王女。


『試合の準備が整うまで王女殿下の予想を聞きましょう。ズバリ、注目の選手はいらっしゃるのでしょうか?』

『注目と言えば、皆同じではないだろうか?やはり勇者殿だな。この世界の救世主たる実力を見る機会だ。注目しないわけにはいかない。それ以外にも、Sランクのロレイ選手を含め、初出場の選手が多い。大番狂わせを期待している。』

『なるほど。やっぱり見たことないモノを見たいと言うことですね。・・・おっと、そろそろ準備が整ったようです。では、第一回戦。運悪く一回戦のある逆シードの4人です。』


光輝と、レックスの対戦相手を決める第一回戦の説明をして試合が開始される。




「始まったな・・・」


会場は大いに盛り上がり、興奮した歓声が闘技場全体に響き渡る。

俺は特に試合に興味もないので、会場内をウロウロと歩きまわって適当に時間を潰す。


「アニキ、今年もお願いしやす!」

「アニキ、ドリンク持ってきましたんで飲んだ下さい!」

「兄貴!」

「レックスアニキ!」


野太い声の響く場所があり、チラッと覗いて見る。

そこには荒々しい岩場。いや、元の世界で言うボディービルダー達の姿があった。

ブーメランパンツとはいかないまでも、より多くの筋肉を見せる為にがかなり露出度の高い服装をしている。あれが正装なんだろうか?


「今は子分の試合中だ!落ち着いて果報を待て!」


身長2mオーバーはあろう一番巨体の男が、周りの興奮を抑えるようにいい放つ。

おそらくボスはその男だろう。少し暑苦しすぎてお近づきにはなりたくない集団だ。


「「「「はい!」」」」


見なかった事にして、会場の建物探検を再開する。


「待て!そこのしなやかな筋肉!」


あの集団が試合に出てるとか悪夢だろ。初戦の相手のウッツ君がボディービルダーじゃない事を祈るばかりだ。


「お前だ!しなやかな筋肉!待てと言っているだろ!」


後ろから近付いてきたボスに肩をガシッと掴まれる。嘘だろ俺の事だったのかよ。


「・・・なんだ?」


恐る恐る振り返ると、ゴツゴツとした巨大な筋肉の壁で視界が埋め尽くされる。・・・近いな。


「良い筋肉だ!」

「・・・ありがとう。じゃ。」

「待て!」


軽く手を上げて逃げ出そうと、振り返るもまたもガシッと肩を掴まれる。


「なんだよ、俺は忙しいんだ。」

「そう言うな、お前も出場者だろ。筋肉談義で交流を深めようじゃないか!」

「・・・微塵も興味ねーよ。」


ものすごい笑顔だったので、恐怖で早々に退散しようとするも、強引に引っ張られてボディービルダーの中に放り込まれる。


「お前も、しなやかで良い筋肉をしている!そこまで仕上げるのは困難な道のりだっただろう!」

「トレーニングは日課だ。困難も何もないだろ。」

「素晴らしい!日々のキツイ俺たちのトレーニングに対して、筋肉はちゃんと答えてくれる!筋肉は俺達を裏切らないんだ!」


ダメだ、こいつ等微妙に話がつながらない。感動の涙を流してるけど、まったく解らないし、伝わってこない。


「見ろ!俺達の努力の結晶を!このオリハルコンの様な筋肉の美しいたたずまいを!お前も一緒にこのフォルムを目指さないか?」

「・・・」


ボスのダブルバイセップスをかわきりに、全員が思い思いのポージングを決める。

すぐに逃げ出したい。歩いてただけで、何でこんな筋肉に囲まれなきゃいけないんだ?


「レックスのアニキ!大変です!マッスルが、一回戦で魔術師風情に敗北しました!今運ばれてきます!」

「何だと!俺達はより強い筋肉にしか負けてはいけないんだぞ!おのれ、魔術師め!」


どうやら筋肉一派が一回戦でやられたらしい。

無残にも、切り傷だらけになったボディービルダーが、担架で運び込まれる。

ボディービルダー達は慌ただしく動き回り、用意していた回復ポーションで回復させていく。


「必ずかたきは取ってやるからな!」


ボスが熱く語りかけるが、おそらくその魔術師は二回戦で光輝と当たって負けるだろう。遠目で一連の動きを見ながらそんなことを考える。

ハッと思いつく。今なら逃げられるぞ。俺は、物音を立てないように、そっと現場から逃げ去った。


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フェンリル

Sランクの魔物。真っ黒な狼で、人間の言葉を理解するほど頭が良い。

大きさは体長が4~5mほどまで成長する。

火属性で、魔術も使う事が出来る。



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