それぞれの思い
死霊系ダンジョンの一角
「おや、アナタですか。何か用ですか?相変わらず好き放題してるみたいですね。」
ガイコツが後ろから近づいてきた人に語りかける。
「キミこそここでナニをしてるのかな?」
「下準備でしょうか。くれぐれもワタシの邪魔しないでいただきたいですね。」
「その辺り打ち合わせしようか。お互いジャマするようなら戦いを避けられくなるからね。」
「そうですね。ワタシもアナタとは戦う気はありませんし。」
「座って話そうか。"不死の魔王"アンデッドロード」
「良いでしょう。"×××××"××××××××」
2人はダンジョン内にある、ホラー映画に出てきそうな廃れた洋館の中で今後について話し合う。
「・・・ルーどう思う?」
混乱しすぎてループスに話しかける。
「ガゥ?」
「何で光輝の名前がこのトーナメント表に書いてあるんだろうな?」
「クゥゥゥン」
残念ながらループスはわからないようで、頭としっぽが地面に付きそうなほどテンションを下げてしまった。
「人混みが嫌いだから避けていたんだが、この間、町中がお祭り騒ぎみたいになってたのが到着した日だったのか?」
答えは出ないな。
光輝が出てくるとなると、最悪でも準決勝では負ける事が出来るだろう。なんとか口裏を合わせて八百長試合をしよう。
そう思いつつ、もう一度トーナメント表に目を落とす。
二回戦・知らない人ウッツ。三回戦・知らない人。四回戦・リリィさん。五回戦・光輝。決勝・おそらく第二シードの前回大会優勝者。後半がえらいことになっている。
「考えるのは止そう。ルー寝ようか。」
「ガゥ!」
明日に備えてベッドにダイブした。
王都の屋敷
「トーナメント表を見ましたよ。あなたが最初に当たる強敵はSランクのレックスのようですね。」
「あぁ。」
男は後ろに控える冒険者風の人物に話しかける。
「私が与えた魔石を使って、レックスを処分しなさい。」
「・・・いいのか?この国のSランク冒険者だぞ。」
冒険者風の人物は、男から貰った禍々しい魔石を見つめながら答える。
「構いませんよ。私の計画に彼は必要ないのですから。」
「これにどんな力があるのかは知らんが、やるからには約束は守ってもらうぞ。」
「えぇ。強敵を全て殺す事が出来たら、預かっているモノを返しましょう。あなたは明日に備えて休んでおきなさい。」
「ふん。わかっている。」
冒険者風の人物は、ずかずかと部屋を退室していく。
「かれでは、レックスに勝てないでしょうね。まぁ問題ないでしょう。」
男は、一人になった部屋で、カギのかかった箱を大切そうに開ける。
中には、ところ狭しと、いびつな魔石が並び、禍々しい光を放っていた。
「フッフッフ、これだけあれば、あの魔王さえ必要ないでしょう。かれにも、早々にご退場してもらいましょうか。」
悪魔に取りつかれたような高笑いが、部屋にこだました。
各自、それぞれの思いを胸に武闘大会前日の夜を過ごしていった。
日付が変わり、大会当日がやってくる。
予選と同じ会場で、控室に通されて開会式を待つ。
選手は、付き添いを何人か連れて来ても良いみたいで、ほとんどの人が付き添いと話していた。
独り、ループスを抱えながらポツンとしているのもなんだか嫌だったので、居るであろうリリィさんを探して歩き回る。
”竜の息吹”のメンバーが集まっている所を発見し、近づいていく。
「やぁ。」
それぞれ挨拶をして、”竜の息吹”のメンバーは、特に重要な作戦会議をしている訳ではなかったので、会話に入れてもらう。
試合中はルカがループスを預かってくれることになった。
「おい、貴様!」
最近、全く同じ感じで声をかけられたと思いつつ、そちらに振り返る。予選の時に絡んできた騎士が立っていた。
「関わるなと言ったはずだぞ!」
騎士の言葉を無視してリリィさんに話しかける。
「リリィさん、アイツのこと知ってる?予選の時からやたら絡んでくるんだよ。多分リリィさんのファンなんだけど。」
「確か・・・、アデルくんだったかな?」
リリィさんは、少し考えて騎士の名前を思い出す。
「そうですよ。確か前回の大会で、リリィさんの強さに惚れて、告白してきた人です。」
ルカからさらに補足説明が入る。どうやら只のファンではないようだ。しかし、付き合っている様子ではないので、アデルはフラれたのか?
とすると、急にリリィさんから男を引きはがそうとする女々しく未練がましい男に見えてきた。どんまいアデル。
「なんだその目は!」
同情の視線に気づかれたのか、アデルは若干キレ気味に言い放ってくる。
「ねちっこい男は嫌われるぞ。」
「貴様に言われたくないわ!それに、返事は保留だった!」
アデルは、怒りなのかテレなのか、顔を赤くしつつ反論してくる。
意外な答えに驚き、向こうに聞こえないように小声でリリィさんに聞いてみる。
「そうなのか?」
「・・・そういうのが苦手でな。なかなかハッキリと言えないんだ。」
「そうか。諦めてくれるといいな。」
結構粘着しそうなアデルの姿勢に若干引きつつ、希望を呟く。
「何をコソコソと話している!リリィさん、僕は貴女にふさわしい男になる為、この1年死に物狂いで修行してきました。絶対に優勝してみせます。」
アデルは、本気で優勝宣言をして走って去って行った。
「・・・なんだこれ?」
よく分からない感じで取り残された5人は、特に会話もなく開会式を迎える事になった。




