勇者 王宮散策
光輝は目を覚まして伸びをする。
「さすがに昨日は疲れたな。」
光輝はムスぺリオス国王の依頼で挨拶してくる貴族の名を覚えて動向を観察していた。
挨拶やダンスだけなら軽くこなせただろうが、常に周囲を観察し続けるのはそうとうな気力と体力を要した。
「しかし、結局わからなかったな。最終手段としては、土壇場でスキルに頼るしかないか。」
独り呟いて朝食に向かう。
「おはよう。みんな」
アルカディア王国から来たメンバーが集合し、朝食をとる。パーティーが終わった事で、少し時間ができた。アリアはムスぺリオス国王と公的な会談が控えていて別行動となるが、残りの4人は自由になり、光輝達は王宮内を散策することにした。
王宮内を歩き回る許可をとり、アレクシア王女の案内で王宮内を見て回る。
1度入った事のあるホールや謁見の間も見て、見たことのない食堂や書斎、兵舎や訓練場まで案内される。
「さすがダンジョンの多い国だね。兵士の質がアルカディア王国よりも高い気がするよ。」
「そう言ってもらえると嬉しいな。どうだ一緒に訓練に参加していくか?」
感心する光輝に対して嬉しそうにしながら提案するアレクシア。
「遠慮しておくよ。あまり変な事をすると後で姫に怒られそうだ。」
「そうか、残念だ。」
社交辞令だったのか、アレクシアはあまり残念そうには見えない様子で言葉を返す。
訓練場を出ようとしたところで、反対側から第二王女がやってくる。
「お姉さま、こちらにいらっしゃったのですか。」
「クラリス、珍しいなこんなところに来るなんて。」
「勇者様方もこんにちは。カミルが訓練風景を見たいと言っておりまして。」
クラリスのとなりに控えていた少年が、前に出てきて挨拶をする。
「昨日は挨拶もできずすみません。クラリス王女殿下の婚約者のカミル・ゼクレスです。勇者様。」
クラリスの婚約者の登場に驚く4人。
「こちらこそ。なかなか時間を作れなくて悪かったね。王女様はその年で婚約者がいるのか。」
「カミルは侯爵家の嫡男で、クラリスに一目惚れらしくてな。会ってすぐにお見合いの手紙を出したらしい。」
アレクシアがカミルについての説明を入れる。
「アレクシア姉さん。あまり言いふらさないでください。姉さんこそ、そろそろ恋人を見つけないと国王陛下に何言われるかわかりませんよ。」
「ぅぐ、私はなかなか強い男が出て来なくてな・・・。まぁ、そんな話は良いじゃないか。カミルも正式に好きな人と婚約者になっているんだから。」
「そ、そんなことは置いておいて、勇者様に1つお願いがあります。1度戦いのご指南を頂けないでしょうか?」
「カミル。ダメですよ、勇者様にご迷惑をおかけしては。」
戦う事が好きなのか、ただの話を逸らすネタなのか、少し興奮気味にお願いをするカミルをクラリスが止めに入る。
「ごめんね。僕はそういうのは向いてないんだ。得意な人がいるんだけど、あいにく今居なくて。」
「そうですか。私も大会にエントリーしてますので、その時はよろしくお願いします。」
「あぁ。全力で相手をさせてもらうよ。」
「はい!是非!」
もう少し騎士団の訓練を見て行くという二人を置いて、4人は散策を再開した。
「おや、皆様お揃いで、散策ですか?」
高年者ほどのおじさんが近づいてくる。
「ハイゼンベルク卿、勇者殿を案内していたところだ。」
「他国の者が王宮内に詳しくなるのは避けたいところですが、国王陛下の決定ならば仕方ありませんね。」
「勇者殿は世界の救世主になるかもしれない方だ。他国の者というのはあんまりではないか?それにアルカディア王国は友好国で色々と良くしてもらっている。何も隠す事などないだろう。」
ハイゼンベルクの発言に若干の苛立ちを見せつつアレクシアが反論する。
「失礼、そうでしたね。勇者殿には是非とも頑張っていただきたいものですね。」
「お任せください。魔王を倒し、この世界の希望になってみせましょう。」
「いい報告を楽しみに待っていますよ。」
「えぇ。」
ハイゼンベルクは何事もなかったかのように踵を返して去って行った。
「なんか感じ悪~い」
「結依、滅多な事は言わないで。他人に聞かれたらまずいわよ。」
結依が率直な感想を述べ、すぐさま雫が止めに入る。
そもそも異世界の人間なので、外交も何もなさそうだが、問題発言は問題発言なので雫は肝を冷やす。
「残念ながら、すでにアレクシア王女が聞いてますわよ。」
「アレクシア王女、うちのメンバーがすまない。」
「気にしなくていい、こちらこそ気分を害してしまって申し訳ない。ハイゼンベルク卿は排他的で、あまり他国を良く思っていないんだ。仕事になれば私情を捨ててくれるから問題ないのだが、公でない所ではあんな感じなのだ。」
アレクシアも、ハイゼンベルクの日常の振る舞いに頭を悩ませているようで、額に手を当ててため息をつく。
「それでも王宮内を歩き回れるという事は、相当の地位なのだろう。」
「ハイゼンベルク卿は公爵家の人間で、今まで何十年も王家に尽くしてきてくれた方だ。ぞんざいな扱いは出来なくてね。」
「なるほど。それは仕方ないね。」
「すまないな。」
ムスぺリオスの王宮を余すところなく見て回り、解散しようとしたところで騎士が走りよってくる。
「お取り込み中のところすみません。勇者様方、国王陛下がお呼びです。書斎まで来てください。」
「わかったよ。」
騎士に案内されて4人は国王の居る書斎へ向かう。
「アリアも居るんだね。」
「私はムスペリオス国王と会談が終わったところです。」
書斎に入るとアリアと国王が居て、みんなを待っていた。
「失礼します。お呼びでしょうか国王陛下。」
後に続いてカミルとクラリスも入ってくる。
「集まったな。来てもらったのはこれを渡すためだ。」
ムスぺリオス国王は、光輝とカミルに紙を差し出す。2人はそれを受け取り、眺める。
何かと思えば、武闘大会のトーナメント表だった。シードが2人と16ブロックの勝者32人の計34人の名前が書き込まれている。
「武闘大会のトーナメント表か。僕が第1シードで良かったのかい?」
「構わん。」
「私は№10ですか。勇者様と当たるのは準決勝になりそうですね。」
カミルが光輝に問いかけるが、光輝はトーナメント表の一点を見て否定する。
「どうだろうか。カミルの2回戦は相当強いよ。人違いでなければだけど。」
光輝の発言にアルカディア王国のメンバーがトーナメント表を盗み見る。
「えぇ?」
「あ~あ。」
「何やってんのよ。」
「なぜここにいますの?」
カミルの2回戦はおそらくこの人になるだろう。№12ハヤト。
決勝ではなかったが、ぶつかれるかもしれない現実に光輝から笑みがこぼれる。
光輝は同姓同名の人違いでない事を願った。
時間がそろったので次回から隼人の話に戻ります。
あまりこういう事は好きではないのですが、宣伝させてください。
実は先週短編小説を投稿しました。
理由は短編で良いので何か一個完結したものを書けという記事を目にしたからです。
結論
ジャンルと題材が悪かったのか、誰も見ない。(´・ω・)
ネットの嘘をつかまされましたね。
内容は異世界召喚しない系異世界召喚物語です。
詰め込み過ぎてどこのジャンルにすれば良いのかわからなかったので、コメディーにしておきました。
おそらくこれが原因でしょう。
暇だったら覗いて見て下さい(切実)
見れないとコメントいただいました。すみません。
リンクの貼り方を勉強しておきます。少々お待ちください。
作者ページに跳べるようにしました。
リンクは良くわかりません。ちょこちょこ勉強してみます。




