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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
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勇者 出発

時は少しさかのぼり、アルカディア王国王宮内


「まさかまた居なくなるとは誰も思わなかったわね。」

「そ~だよ~あとでお仕置きだよね~」

「でも今回はちゃんと連絡はしてたみたいだし。したといって良いのかわからないけど。」


思い出して腹を抱えて笑う光輝。それに対して、雫の表情は厳しかった。杏華と結依はいつも通りといった様子で、大して気にしていない様子だった。


「光輝は笑いすぎよ。隼人がもっとしっかりしてたらこんなギリギリになってないわ。それに、届かない連絡なんて連絡じゃないわよ。」

「残念ですが、この4人で行くしかないですわ。」


勇者召喚のお披露目会も終わり、落ち着いてきたので、勇者メンバーで隣国への挨拶が予定されていた。

しかし、すぐに問題が発生してしまう。最後の一人である隼人を探していたところ、まさかの遠出でどこかに行ってしまっていたのだ。

門番が、一応言伝てを預かっていたのは良いのだが、門番で話が止まっていて、上の方まで話が上がってこなかった為、隼人を止めることが出来なかった。

どこへ行ってしまったのか捜すのに王宮内がてんやわんやしてしまい、騎士達はギルドと教会と王宮を何往復もするはめになった。

捜索の結果、護衛依頼でオルコット領に行った事はわかったが、タイミング的に会えるかは不明な状態だった為、入れ違いになる事を恐れて待機するという選択肢を選んだ。

本当にギリギリまで待っていたのだが、隼人は一向に戻ってこず、時間だけが刻々と過ぎてしまっていたため諦めることにした。


「仕方無い。隼人はおいていこうか。」

「そうするしかないわね。」


隼人を置いていくことが決定し、移動の準備を進めていく4人。



「それでは、出発しましょう。」


アリアの号令で勇者パーティーは馬車に乗り込む。光輝達、異世界組4人と、案内役として年の近いアリアが同行する事になった。

馬車は快適に進み、貴族街を超えた倉庫のような所で停止する。


「ここで乗り換えますので、荷物を持って移動しましょう。」


それぞれ、自分の荷物を詰めたマジックバッグを手に取り、馬車から降りる。


「うわ、すご。」

「船だね~」

「凄いですわ。」

「これに乗って行くのかい?」

「はい、これはアルカディア王家所有のもので、先方にも連絡を入れてありますので、これで一気に向かいます。」


光輝達4人の前には、全長、全幅共に50mはありそうな翼の生えた船が鎮座していた。

馬車から見えた倉庫は、この飛行船の格納庫だった。今はすぐにでも飛び立てるように格納庫から出て、目の前の滑走路のスタート位置に停止している状態だった。


「けっこ~乗れそうだね~」

「最大で50名ほど乗れます。最も、運航に携わる操縦士や魔術師が10名ほど乗りますので、実際はもっと少なくなってしまいますが。」

「なるほど~」

「どうやって飛ぶんだい?」

「基本的に風の魔石で飛びます。魔術で機体を浮かせつつ、翼についているプロペラの回転で前進します。」


飛行船に近づきながら、4人は飛行船の話を聞く。

飛行船から1人の人が下りて来て、駆け寄ってくる。


「お待ちしておりました。アリア王女殿下、勇者御一行様。私がこの度、船長を勤めさせて頂きます。よろしくお願いします。」


ビシッとした敬礼をする船長。


「「「「「よろしくお願いします。」」」」」

「出航の準備は出来ておりますので、皆様の準備が出来ましたら出航させていただきます。」


挨拶もすみ、船の中へ入って行く。

船内は、広くは無いが各個室が用意されていて、そのほかに食堂や広間など、快適な旅が出来そうな造りになっていた。


「部屋も良さそうだし~良い旅になりそ~だね~」

「そうね。」


一通り内部を確認してデッキに戻る。


「それでは、出航いたします。」


船内で、風の魔術師が魔石を利用してフロートの魔術を使い、機体を持ち上げる。さらに、プロペラを回してゆっくりと進み始める。

飛行船は、ゆっくりと上昇しつつ、前方へも加速していく。


「おお~魔術ってすごいね~」

「そうね。結構な速度出てるみたいだし、すぐに着くんじゃないかしら?」

「この調子なら3日程ですよ、雫さん。」


アリア王女と船長が近づいて来て、答えてくれる。


「風向きがあまりよくないので少しかかってしまいますね。」


実際、船の帆は畳んであり、プロペラだけで進んでいる。追い風なら帆を張ってさらに早く移動できるのであろう。


「そうですか。」

「残念ですわ。この船の全速力も見たかったですわ。」


杏華も話しに参加してくる。


「勇者様方は、これから何度か飛行船を使われるでしょう。その時に体感してください。といっても、それほど変わる訳ではありませんよ。1日短縮出来るかどうかといったところですね。」

「あら、そうなのですか。残念ですわ。」

「プロペラだけでも結構な速度が出てるけど、風がほとんどないのはなぜなんだい?」

「それは、結界の魔術のおかげです。動力室では常に数種類の魔術が発動していて、風や空気、温度調整までやっているんです。」

「すごい技術だな。やっぱり魔石が相当重要みたいだね。」

「それもそうですが、飛行船は魔術師が必要不可欠ですね。船に武器を搭載していないので、空での戦闘は魔術主体になります。魔術師が何人いても余りはしないですね。」

「そうなのかい?」

「もちろん守る為の結界魔術はありますが、攻撃用の物は他国を威圧しないように積んではダメなのですよ。」

「なるほど。確かに、戦争しに行くわけじゃないのにそんなモノ持って行くわけにはいかないな。」


それから、何度か鳥の魔物と遭遇しては、光のビームで光輝が一瞬にして返り討ちにしてしまった。

戦闘要員としてこの飛行船に乗り込んだ魔術師は、光輝の迅速な対応に仕事を失い、せめて夜間だけは役に立とうと意気込むのであった。

それからも5人は、上空からの景色を存分に楽しみつつ、快適な空の旅を進めて行った。


「それで、どこに向かってるんだっけ~」

「えっ今さら?ちゃんと覚えておきなさいよ。隣の国、ムスぺリオスよ。」

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