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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
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運だけの男

一回のディナーで1日の収入を使い倒したため、何度かダンジョンに潜り、小遣いを稼いだ。

ムスペリオスはダンジョンで取れるもの以外は輸入に依存するため以外と高い。

その代わり、ダンジョンの希少素材や鉱物は出回りやすい。

希少素材はかなりの高額で売れるため、ゲットの夢を見てダンジョンに潜るらしい。

俺も希少素材を狙ってダンジョンに潜ったのだが、そう簡単には出てこなかった。

ムスペリオスドリームを掴んだ人達や貴族用に超高級店があり、ルカの話では、上級貴族や王室御用達の店も存在するらしい。

ディアへの献上品はその辺りで買いたいところだ。


そして、拳闘大会予選を迎える。

闘技場の控え室には500人位だろうか?かなりの人数がいる。

仲間に激を飛ばす者や集中して目を閉じている者、思い思いの方法で集中している。

誰もが真剣で、空気がピリピリしていて息が詰まりそうだ。嫌いな空気ではないが、今は遠慮したいので、控え室を出ていこうとする。


「ハヤト殿。」


知った声に呼び止められる。


「リリィさん。士気を高めなくて良いのか?」

「私はそういう事をすると、かえって良い結果が出なくてな。ハヤト殿はどのブロックになったんだ?」


リリィさんに言われて、受付で貰った紙を見てみる。


「Bブロックだな。」

「そうか、残念ながら違った。私はDブロックた。本戦に勝ち上がってきてくれ。」

「期待しないで待っててくれ。」


予選ブロックは16ブロックで、十数人のバトルロイヤル。

残った二人が本戦出場で、予選免除の前回大会優勝者をシードに加えて本戦トーナメントが始まる。十数人を蹴落とさなければならない。

リリィさんとの会話で時間を潰し、Bブロック予選の時間を迎える。


「おい、貴様。」

「何だ?」


闘技場に向かう際、いきなり騎士のような人に話しかけられる。


「やけにリリィさんと親しくしてたが、何者だ?」

「ただの知り合いだよ。」

「そうか、貴様とリリィさんでは全く釣り合いが取れない。二度と関わるな。」


・・・なんでだよ。


「他人に人間関係を指図されたくないな、リリィさんのファンならファンらしく見守ってればいいだろ。」

「ふん、僕は貴様のような思い上がりが嫌いなんだ。この戦いで成敗してやる。」

「・・・まぁ頑張れ。」

「早々に脱落しないように足掻くんだな!」


そう吐き捨てて、足早に去って行ってしまった。なんだったんだ?

闘技場は円形のフィールドの真ん中に10m程度の正方形のステージが設置されていた。


「・・・ここで戦うのか。」


他の人達に続いてステージに登る。

周りを見渡すと、予選ではあるが観客が大勢いた。

この大会の本戦では、国主催で賭けも行われる。純粋に観戦したい人と、賭けの為に本戦に残る人を見に来る人で溢れているのだろう。

もしかしたら、オルコット卿も居るかもしれない。立場が立場だけにいない確率の方が高そうだが・・・


「それでは、Bブロック予選を開始する。」


一定の距離を保ちつつ全員が構える。緊張が走り、固唾を飲んで開始のゴングを待つ。


「始め!!」


皆が一斉に走り始め、魔術を放ち、剣を振るう。開始の合図に、少し遅れて周りからも歓声が上がる。

俺はゆっくりとした動きで振り返り、過度の一角を陣取り座禅を組んでひっそりと気配を消す。

目を閉じて視覚以外の感覚を鋭敏に研ぎ澄ませる。


「オラッ!」

「ウォーターランス!」

「斬鉄剣!」


様々な技が飛び交う。魔術が爆ぜる音、剣と剣がぶつかる音、悲鳴、罵声が飛び交い、様々なものが激しい音を打ち鳴らす。


「貰ったぁぁ!!」

「甘い!」

「っがはぁ!」


隼人の方に流れ弾が飛んで来ることもなく、1人、また1人と脱落していき、完全に気配の消えた隼人に、誰も気づくことなく試合は後半戦へと入って行く。

隼人の作戦は単純だった。ギルドの手前やるからにはやらなければいけないし性格上サボるようなことはしない。しかし、ここで目立ってしまっては面倒ごとに巻き込まれるだろう。

であれば、全力を出したと言える状況で負ければいい。

出た答えは、全力で運に振る事で、避けない・受けないといった縛りで、本気で気配を消し、見つかって攻撃されればアウト、流れ弾が当たればアウトといった具合である。

これなら敗退した時の言い訳もできるはずだ。


「はぁ!」

「まだまだぁ!」


人が減るにつれて、範囲技よりも一撃の威力が高い技の応酬になって行く。

遂に隼人を含めて残り4人になる。

1人は満身創痍でギリギリな様子ゆっくりと立ち上がろうともがく。

2人の魔力が高まり、纏いだろうか、一点に集中した魔力同士が激突して爆ぜる。クロスカウンター。

防御を貫き、お互いの攻撃がヒットし弾け飛ぶ。完全な相打ちで、上位であったであろう2人が脱落してしまった。


「試合終了!!」


終わるタイミングで隼人は目を開き、消していた気配を元に戻しゆっくりと立ち上がる。


「何で勝てちゃうかな?」


どうやら勝ち上がったのは、俺と絡んできた騎士のようだ。騎士はかろうじて立ち上がり、剣を杖のようにしながらステージを後にする。

隼人も、特にこの後の試合を見るつもりは無かったので、本戦出場の案内をされた後宿に戻って行った。

その際に、復活した騎士に逃げ回った屑だと絡まれたのは言うまでもない。

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魔王

魔王の発生は、2種類存在する。

ダンジョンで王として進化するものと、突然変異でなるものである。

ダンジョンでの発生は予兆があるため、国やギルドが大規模な討伐依頼を出す事によって阻止する事が出来る。誰にも気づかれず発生することもあるが、基本的にこのタイプはダンジョンから出てこないので、監視しつつ討伐隊を編成して戦う。

突然変異は、予測できない為対処不能。周りの魔物を、ダンジョンの魔物の様に強化したり、使役したりするうえ、動き回るので最悪の災害になる。

今回は、世界各地で魔物の強化が囁かれている為、後者が発生している可能性がある。


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