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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
6/186

模擬戦

「武器は要らんのか?」

「あぁ、基本無手なんだ。」

「そうか、異世界の格闘術を見たい、徒手格闘戦と行こうか。」


そう言って、木剣を放り投げようとするガイアスを、俺は止める。


「木剣は持ったままでいい。俺も異世界の剣技を見てみたい。」

「がっはっはっは・・・そうか、では見せてやろう!」


豪快に笑って木剣を構えるガイアス。凄く嬉しそうだ。


「お手柔らかに」


こちらもファイティングポーズを取る。


「レイラ!合図を頼む!」

「はい。それでは・・・・・・始め!」



「はあああぁぁぁぁ!!」


先に動いたのはガイアスだった。

合図と同時に雄叫びをあげながら走り出し、木剣を上段から一直線に振り下ろす。

走りも振り下ろしもかなり速い速度だが、召喚で強化されているのか、何とか目で追うことができた。

左にずれながら、半身になるように足を動かし、ぎりぎりで避ける。

そのまま右ストレートを顔面に叩き込もうとしたところで、ガイアスが振り下ろした木剣を返し、逆袈裟に振り上げる。


「・・・ッ」


カウンターをやめ、足を上げ脛と右腕で木剣を受ける。

受ける事が出来たのは良いが、ガイアスがマッチョなだけあって力負けし、そのまま数メートル吹っ飛ばされる。


「ギルド長!やり過ぎです。ヒーラーを呼んできます。」

「まて、派手に飛んだが、力負けすると理解して衝撃をいなすように自分で後方に跳んでいる。そこまでダメージはないはずだ。そうだろ?」

「その通りだ。授業で剣道はやった事あったが、こういう動きはしないから読めなくてビビった。」


受けが間に合ったのもそうだが、あれだけ吹っ飛ばされても全然痛くない。



「初撃を躱した時点で合格だが、まだやるか?」

「続けようか、まだ俺の技を見せていない。」


俺がファイティングポーズを取ると、ガイアスはにやりと笑い木剣を構える。


「次は俺から行こう」


走り出す俺に対して、落ち着いた様子で構えているガイアス、木剣の間合いに入った瞬間そのまま喉元に向けて突きを放ってきた。

膝ごと曲げて上半身をそらして突きを躱しつつ、合掌をするように木剣を取り、そのまま身体を右へとねじり、体勢を崩させる。

それと同時に、反撃をする。上半身を反らす勢いと、右へのねじりの勢いを利用して、空いたガイアスの右わき腹へと左廻し蹴りを叩き込む。


「ぐっっ」


蹴りがクリーンヒットしガイアスから苦悶の声が漏れる。

そのまま畳み掛けようと距離を詰めるが、体術を組み合わせた剣技で距離を取られてすぐに近づけなくなる。


何度かの攻防の後、お互い攻めきれずに距離を取ったままにらみ合いとなる。


「はあああぁぁぁぁ!!」


しびれを切らしたガイアスが、初手と同じように突進と上段からの振り下ろしを仕掛けてくる。

速度に目が慣れた俺は、左足を右へ持っていき、背を向けるように右へ躱す。

すぐに正面を向くように左足を元に戻し、振り下ろされた木剣を踏みつける。

その勢いで木剣の上に乗り、右足でガイアスの顔面へと廻し蹴りをする。

ガイアスは上半身を反らし、すれすれで蹴りを躱す。

俺は戻ってくる頭に対して、木剣を踏み台にして左の跳び後ろ蹴りを放つ。

しかし、ここに来てガイアスが一度も離さなかった木剣を離し腕をクロスさせてブロックしてきた。

蹴りの勢いで腕を弾かれながら、ガイアスは蹴りを受けきった事ににやりと笑う。

だが、俺の蹴りはまだ終わっていない。

身体を横に倒しながらもう半回転させて空中でもう一発縦回転の廻し蹴りを放つ。


「っっあぁ!」


二発目でブロックを崩され、受けきったと勘違いしてできた一瞬の隙に、本命の三発目がヒットする。

もつれるように倒れ込み、お互いにすぐに起き上がって構えを取るが、ガイアスは苦笑いして拳を下した。


「ここまでだな。」


俺も構えを解き、話しかける


「そうか?まだ行けるぞ?」

「このまま行けば俺は、魔術を使わなきゃいけなくなる。お前はまだ使えんのだろ?覚えた時にまたやろうや!」

「気が向いたらな」


「お疲れ様でした。素晴らしい試合でした。」


模擬戦が終わりレイラさんも合流してきた。


「しかし、最後の蹴りはなんだ?三発も飛んでくるとは思わんかったから油断しちまった。」

「だろうな。あんたが笑った瞬間に[取った]と思ったよ。」

「次は俺も油断なくいかせてもらう。そんでもってお前のランクだが、Cランクでどうだ?実力的にはBでも良いんだが」

「ギルド長よろしいのですか?」

「問題無い、強化された身体能力にも慣れたみたいだしな。」

「ガイアス、あんたがペースを作ってくれたおかげだろ。」


想像以上の身体能力で自分の力に振り回されてた俺に対して、ガイアスは徐々にパワーとスピードを上げていってくれた。

後半は全力に近い動きをしていたと思う。


「ずっと食らい付いてくるから俺も面白くてな!最後は身体強化までしてたんだがな!まさかそこまで付いてくるとは思わなかった。」

「マジか・・・俺もやってたの?」

「あぁ!いくら身体能力が高くても身体強化で魔力を、活性させなきゃ地面は割れん」


そう言ってさっきの激突の場所を指差す。

指差された方に目をやるとちょこちょこ地面がひび割れてた。

マジか・・・殺人キックじゃねーか。


「ってなわけで実力は問題ないんだが、Bランクに上がるためには、ある条件をクリアしてほしい。」

「・・・殺人か?」

「察しがいいな、その通りだ。人を殺せる殺せないで動きが変わってくる」

「頃合いを見て依頼を受けることにするよ。」

「そうしてくれ。レイラ!ハヤトのギルドカードを作ってきてくれ!」

「わかりました。少々お待ち下さい。」


レイラさんは一礼して下がっていった


「ハヤト、今身体強化出来るか?」


突然ガイアスが変なことをいい始めた。

そういえばさっき知らずに使ってたみたいだな。

身体を強化するイメージで意識を集中させる。

何となく成功した気がする。


「こんな感じか?」

「やっぱりスゲェな。普通は修得にもっと時間が掛かるもんだが、今出来るならいつでも出来るはずだ。」

「そうか。」


戦闘時、火事場の馬鹿力で出来た訳じゃないことを確認したかったのか?


「もっと上の話をしようか。[出来る]と[使える]は似てるようで全くちげぇ。精度を上げて使えるようにならんと宝の持ち腐れだ。意味はわかるか?」

「あぁ、使うには毎日鍛練して実戦で回数をこなさないと無理だな。日課が増えた。」


ようは数学と同じだ、公式を覚えたところで理解してないとテストで使えない。


「がっはっはっは!日課と来たか、お前は相当な武人だな!」

「そうか?極められないものとか面白いだろ。」


単純だからこそ精度を上げ続けられる。

極められない類いのものだ。

極めたという人は、勘違いか個人の限界を感じただけだ。


「そこまで解ってるか。普通お前ぐらいの年なら出来ただけで使えるとか極めたとか言い出すだろ。」

「その段階はずっと前に通り過ぎた。」



「ところで、この後はどうするんだ?」

「今日は簡単なクエストを受ける予定だったが、昼から半日で出来るクエストなんてあるのか?」


ギルド長ならクエストについても詳しいだろう。


「スライム、ゴブリン、コボルト辺りなら王都を出てすぐにでも見つかるだろう。駆除対象だから倒すだけで稼げるぞ」

「なるほど、午後から行ってくるよ。」


討伐証明に必要なパーツを教えてもらっていると、カードを持ったレイラさんが戻ってきた。


「お待たせしました。こちらが、勇者ハヤト様のギルドカードです。無くさないよう大切に保管してください。再発行にはお金がかかります。」

「ありがとう。」


ギルドカードを受け取り、ポケットにしまう。

無くさないようにしよう。


「そうだ!レイラ!ハヤトに対して勇者は付けなくていい。」

「なぜですか?」


レイラさんはその言葉に眉をひそめ、不快感をあらわにする。


「まぁ怒るな、ハヤトはあまり目立ちたくないらしい。そうだろ?」

「俺の事はハヤトと呼んでくれ。勇者だと面倒な事に巻き込まれそうだから、ただの冒険者でいたい。」

「わかりました。ではハヤト様と呼ばせていただきます。それと、受付では私の所に来てください。事情を知っている人の方が騒がれる事も無いでしょう。」

「そいつはいいな!ここではレイラを窓口にしよう。困ったことでも何でもレイラに聞け。」

「わかった。これからよろしくレイラさん。」


握手を求めて右手を差し出す。

レイラさんは握手に応じながら、改めて名乗ってくれた。


「冒険者ギルド・アルカディア王国本部・副ギルド長のレイラです。こちらこそ宜しくお願いします、ハヤト様。」


想像以上に出来る人だった。

心強い味方が付いたな。


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