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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
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ムスぺリオス王国

乗車して早々にループスをエリーゼさんに取られ、馬車は順調に進んでいった。


「オルコット卿、質問があるんだが。」

「何かな?」

「こっちのインフラも整備されているんだが、隣国の道まで整備したなんて事はないよな?」

「私でもそれはできないよ。造ったのは国境の川を渡る為の橋くらいだね。」


・・・ヤっちゃってんじゃねーか。


「さすがに独断じゃないよな。」

「キミは知らなかったね。エリーゼは実はムスペリオスの姫様なんだ。」

「・・・え?」

「フフフッ。現王は私の兄ですが、今はオルコット伯爵夫人ですよ。」


・・・なん・・・だと


「キミも思っただろう?なぜ隣国の大使が伯爵なのかと。実は私だからこそ呼ばれていてね。これを機にエリーゼの里帰りをしてるんだ。そんな状況だから少しはムスペリオスに融通が利いて橋を架けたわけだよ。」

「そうだったのか。」


・・・貴族同士のしがらみだとか派閥だとかの話は良くわからんが隣国の伯爵と政略結婚とかあるのか?普通は王族同士とかじゃないのだろうか?


「私たちは恋愛結婚だよ。」


顔にでも出ていたのだろうか?オルコット卿から答えが返ってくる。

それでも出会う事はほとんど無さそうな地位だと思うのだが・・・。

深くは考えないでおこう。きっと身分違いの大恋愛があったのだろう。



インフラ整備をしているせいで出る魔物もまばらで張り合いがないどころか出番がない。

何もすることなく橋に差し掛かる。

装飾はあまり無いが、堅牢で馬車が余裕ですれ違うことのできる幅の橋が架かっており、安心して渡れそうなイメージをいだかせる。

もっとも、魔術で見た目以上に頑丈に造れてしまうのだが。

橋を渡って国境を越え、ムスペリオスに入る。

本来ならムスペリオスの辺境伯のところへ挨拶に行くみたいだが、今回は時間の都合でパスして直接ムスペリオス王都へ向かっていく。

伯爵領程ではないが、そこそこに整備された道を進んでいき、ムスペリオス王都に到着する。


「助かったよハヤトくん。」

「助かったと言われても、ほとんど何もしていないんだが。」

「構わないよ。有意義な時間だった。」

「そう言ってもらえると助かる。」


アルカディア王国の様に森林があるわけでもなく、視界良好で起伏もほとんどない平坦な道。まばらに出る魔物は兵士が倒してしまうので、出番など無く雑談の旅となってしまった。

オルコット卿がそれでいいなら、こっちからは文句なんて言わないんだけど。


「王宮に早馬を出しているから、私たちはこのまま王宮まで行くけど、ハヤトくんも来るかい?」

「遠慮しておく。」

「わかったよ。今回は往復だから証明書は無しだけど、この証明書があればこっちでも依頼を受ける事は出来るから、持って行くと良い。」

「ありがたくいただいておくよ。」


オルコット卿と別れ、ギルドに向かう。

ムスぺリオスの町並みは、アルカディア王国ほどの統一感は無く、少し雑多なイメージの町並みだ。完全に好き放題している訳ではなく、雰囲気壊さない程度にそれぞれの家が個性を出していて、見ていて飽きない。

町並みを見物しながらギルドに到着し、門をくぐる。


「・・・閑古鳥が鳴くどころか職員すら居ないじゃないか。」


中に入いって愕然とする。ギルドは人っ子一人おらず、静かだった。


「廃業したか?」


ギルドの中をフラフラと歩き回っていると、奥からかすかに物音が聞こえてきた。行って良いのかもわからなかったが、聞く人もいないので音のする方へと進んでいく。

奥の扉を開け、訓練場のような所に出ると、大人数で戦いをしているようだった。おそらく全員がここに集まっているのだろう。それにしても不用心だが。

訓練場は戦場と化し、周りの観客は大盛り上がり。汚い言葉と金属のぶつかり合う音が飛び交う。

そして、俺の前に1枚の紙がヒラヒラと飛んで来た。何かと思い拾い上げる。


「なになに、ゆう----」


拾い上げた瞬間、静寂に包まれる


「「「「「「うおおぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!!!」」」」」」

「・・・はぁ!?」


訓練場で戦っていた全員が一斉にこっちを向き、雄たけびをあげながら走り始めた。


「何でだよ!?」


突撃してくる冒険者の群れを、近い者から順番に蹴り飛ばし、殴り飛ばしてノックアウトさせていく。

どれくらい経っただろうか?伸びた人達の山が高く積み上がり、後半は強者だけが残った。

急な運動で息が切れ、残りを睨みつけるように見回すと、残りのメンバー達は両手を上げて降参だという意思表示をしてくる。


「決まったな。」


急に観客席にいたおっさんが出て来てそう宣言した。


「何の話だよ?」

「知らずに参加してたのか?武闘大会のギルド枠を賭けたバトルロイヤルだ。お前に決まった。」

「・・・なん・・・だと」


武闘大会って、オルコット卿が観戦するって言ってたやつだろ?ギルド枠なんてあるんだ。ってか何で今やってんだよ。もっと早くやれよ。


「その紙が参加チケットだ。」

「いやいや、出ないよ。」

「決まりは決まりだ。つべこべ言ってないで参加しろ。」


こうして、隼人の武闘大会参戦が決定した。

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纏い

攻撃魔術の一種に分類される。

魔術を武器に付加することによって、武器の威力を跳ね上げる技術。

近接戦闘をする人々は、纒いと身体強化を使う。

攻撃魔術であるため、自分自身には付加出来ない。付加すればダメージを負う。



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