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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
54/186

約束

料理を待っていてふと思い出す。

あれ?この世界の上流階級のマナー知らない。

そもそも、元の世界でのマナーも知らないのだが。


「レイラさん、この世界のマナーとかよく知らないし、ナイフとフォークは外から使う程度しか知らんけど大丈夫か?」

「基本的にはそれでは大丈夫ですよ。もちろんそういった格式張った食べ方もできますが、一応庶民的な店なので、マナーにとらわれなくてもいいお店です。個室なので周りの目もありませんし。」


「ならよかった。」


ドアをノックされて、店員が入ってくる。


「失礼します。食前酒のシャンパンとアミューズをお持ちしました。それと、お食事中のお飲み物はいかがいたしましょうか?」


店員が優雅にグラスを並べて、たずねてくる。


「ハヤト様はどうされますか?」


レイラさんに聞かれるも、この場合はワインでいいのだろうか?

アミューズと言っているので、おそらくフランス料理のコースのような物だろう。


「・・・じゃあ、料理に合わせて赤と白を頼む。銘柄はよくわからないから、オススメで。」

「私は料理にあうソフトドリンクをお願いします。」

「あれ?レイラさんは、呑まないのか?」

「先日、ご迷惑をおかけしてしまったので、食前酒だけにしておきます。」


先日って送ってった時の話か。迷惑ってほどでもなかったんだが。


「堅いな。それにあれくらい可愛いもんだろ。」

「どうでしょうか。あまり他人にお見せするようなすがたではなかったきがしますが。」

「ひどい酔っぱらいがいるからな。今日も送ってくくらいなら喜んでやらせてもらうよ、嫌じゃなければ一緒に飲まないか?」


酔っぱらいは主にこの前の結依の話だけど。


「ありがとうございます。お言葉に甘えて、ご一緒させていただきます。店員さん、私も同じものをお願いします。」

「かしこまりました。ではお持ちしますので、ごゆっくりとお楽しみください。」


一礼して出て行く店員さん。

酒場とか飯屋とか、基本的にガヤガヤした場所ばかりだったのに対して、この静かでゆったりした空間はすごく新鮮だ。


「気を使わせてしまってすみません。」


レイラさんから謝罪される。


「自分勝手なだけだ。2人で呑んだ方が楽しいだろ。」

「フフッ。そうですね、そういうことにしておきます。それでは、乾杯しましょうか。」

「そうだな。」


レイラさんがグラスをかかげる。


「ハヤト様が私を助けてくれたお礼に。」

「レイラさんが無事に帰ってきて、いつも通り仕事していることに。」


俺もグラスをかかげて言い返す。


「もぅ!からかわないでください。」


レイラさんは、顔を赤くして可愛らしく怒る。


「はっはっは。ごめんごめん。」


「「乾杯」」


チンッと軽くグラスを合わせる。

縦に長いグラスの中で、きめ細かい泡を立ち上らせるそれを一口飲むと、木の風味とブドウのフレッシュな味わいが複雑に絡み合い、口いっぱいに広がっていく。


「美味いな。」

「そうですね。」


アミューズを食べ、シャンパンを飲み干したところで、オードブルが提供された。

そのまま、コースは進み会話を弾ませながら食べ進めていく。

メインの魚も肉も、出された時に色々と説明してくれて、良いモノだと解るのだが、全く知らないモノなので、驚きようが無かった。熱心に説明してくれた店員さんに申し訳ない。

何を食っているのか解らなかったが、この世界に来て食べた中で一番美味かったのは確かだ。

食事も終わり、店を出る。

食事の余韻が残り、何が一番美味しかっただの、会話が途切れる事は無かった。


「まだまだ、話したいこともありますが、お店も締り始める時間帯ですし、今日はこの辺りでお開きにしましょうか。」

「・・・レイラさんは時間的にはまだ大丈夫なのか?もう一個行きたい所があるんだけど。」

「大丈夫ですが、すぐにラストオーダーが来てしまいますよ?」

「少し急いだ方が良いな。こんな良い食事をご馳走してくれたお礼に、この間の約束を果たそうと思うんだけど。」

「約束ですか?」

「あぁ。夜景を見に行こうか。」

「宜しいのですか?お礼にお礼をされても、もう返すモノが無いのですが。」

「もちろんだ。返さなくていいし、レイラさんさえ良ければだが、町明かりが消える前に空を飛ぼうか。」

「では、よろしくお願いします。」

「わかった。じゃあ行こうか。」


レイラさんの手を取り、町の外側へ向かって歩き出す。

少し急ぎ目に歩き、町の外へ続く門の前まで来た。


「風があるのと、少し冷えるからこれでも着てて。」


マジックバッグから外套を取り出してレイラさんに渡す。


「分かりました。」


レイラさんは、外套を受け取り、素直に羽織る。


「じゃあ抱きかかえるから、しっかりつかまっててね。」

「・・・わ、わかりました。」


レイラさんを横抱きに抱えて空を飛ぶ。


「レイラさん。目をつむってて。」

「なぜですか?」

「最初から見てたら面白くないだろ。良い高さに着いたら目を開けてみると感動するよ。」

「分かりました。変なことはしないでくださいね。」

「わかってるよ。」


急に上って、ジェットコースター気分にならないように、ゆっくりと上昇していく。


「重くないですか?」

「重いわけないだろ。むしろ軽すぎるくらいだ。」

「そうですか。良かった。」


1分程経っただろうか?300mくらい上昇したところで止まる。


「レイラさん、目を開けてみて。」

「・・・すごい。本当にきれいですね。」

「でしょ。王宮は警備のためにずっとライトアップされてるし、区画もきれいで街灯が整備されてるから、道がしっかり見える。ここまで登ってこないと見れない景色だけど。」

「そうですね。光の海にいるみたいで幻想的です。」

「やっぱりそうだよね。我ながら良いモノを見つけたよ。」


ゆっくりと水平移動しながら色々な角度から町を見渡す。そのたびにライラさんは感嘆の声を上げる。


「ハヤト様が見せたがった意味が解りました。助けて頂いたことも含めて、本当にありがとうございます。」

「俺が勝手にやってるだけだよ。」

「ハヤト様。」


レイラさんが、俺の首に回している手の力を強める。


「・・・ん?どうし----」


ふにゅ


頬に柔らかく湿っぽい感触が伝わる。

一瞬呆けた後、レイラさんの方を見ると真っ赤な顔をしたレイラさんがいた。


「あ、あまり見ないで下さい。ギルドの子に、これが一番のお礼だと聞いたんです。」


本気で照れているのか、そっぽを向いて目を合わせようとしてくれないのだが、風が吹くたびに髪が揺れ、真っ赤になった耳がチラチラと顔を出す。


「これでは俺が貰い過ぎだ。何かしてほしいこととかあるか?」

「で、ではもう少しだけ飛んでいてほしいです。」

「わかった。」

「ハヤト様、ドキドキしてますね。」

「そりゃあ、こんなプレゼント貰ったらしょうがないだろ。」


しばらく飛び回り、王宮をゆっくり一周してそのままレイラさんの家の方へ飛んでいく。

言葉数は少なくなってしまったが、気まずいわけではなく、お互いに心地よい心臓の鼓動を聞きながら別れた。

ボツネタ


注文


店員「食前酒はどうされますか?」

ハヤト(食前酒?何だそれは。[とりあえず生]か?いや、コース料理で生ビールは無いだろう。思い出せ、マンガでそんなモノを読んだはずだ。シェリー酒か?[食前酒はシェリーだ]と聞いた気がするぞ。・・・待てよ、シェリー酒はアルコール度数が高く近年では好まれないとも聞いた気がする。せっかくのコース料理だ酔って味がわからないなんて真似はしたくない。オシャレにシャンパンはどうだろうか?・・・いや、シャンパンがこの世界に存在するもわからない。サンドイッチ伯爵が居るっぽいから、シャンパーニュ地方も存在するのか?ここは一旦保留だな。飲みやすく甘めのカクテルはどうだろうか?・・・しかし、カクテルの名前を知らない。酒のベースにジュースを混ぜる事は何となく解っているが、酒の名前も完成品の名前もわからんぞ。どうするのが正解なんだ?)

ここでカッコ悪く失敗できないと思い、ハヤトの頬に冷や汗が伝う。

レイラ「アルコール度数が高くなく、オシャレなカクテルはありますか?」

店員「ミモザはいかがでしょうか?シャンパンベースのカクテルで、オレンジで割ったものです。」

ハヤト(!?全てを兼ね備えている・・・だと!)

レイラ「それでお願いします。ハヤト様はどすされますか?」

ハヤト「同じものを。」

即答した。


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