王宮へ報告?
翌日、朝からルーの散歩がてら王宮へと向かう。
少し離れたところで足を止め王宮の正面ゲートを遠目に見ながら一人呟く。
「どうやって入るんだ?入場するアイテムとか貰ってないぞ。ルーどうしようか?」
「ガゥ?」
いきなり話を振られて戸惑うルー。
しかし、すぐに姿勢を正して俺の周りを歩き始めた。
「・・・それは無理だろ。」
「クゥゥン」
さっきまで胸を張っていたが、すぐに頭を垂れて尻尾も地面に擦るほど下がってしまう。
「でも、今のところそれしかないか・・・やってみるか。」
「ガゥ!」
「威厳たっぷりに行くぞ。」
「ガゥガゥ!」
胸を張って王宮のゲートへと歩いていく。
真ん中の一番大きな門は基本的に使わないので、脇にある小さいゲートを通る。
「お勤めご苦労様。」
「ガゥ」
門番の肩を叩き、威厳たっぷりに通り過ぎる。
「はっ!・・・はぁ?・・・ま、待て!」
門番は、一度敬礼した後、正気を取り戻して呼び止めてくる。
「何か?」
「何か?ではない!怪しいヤツめ!何をしに来た!?」
俺を奥に進ませないために回り込み、剣を構える門番。
「中に居る人に用事があるんだ、入るぞ。」
「良い分けないだろう!」
「やっぱり?」
「当たり前だ!」
仕方無い、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥か、素直に聞いてみよう。
「国王陛下と勇者に急ぎの話があるんだが、どうすればいい?」
「冒険者風情が会えるわけがないだろう!」
・・・駄目か。
騒ぎを起こして上の人を呼ぶのが早いんだが、俺の事がわかる人が来てくれるか怪しいし、かといって捕まると今日中に釈放は無理だろうな。
いいこと思い付いたぞ。なにも直接会う必要はない、伝言で良いんだ。
「門番さん、所属は?」
「何だいきなり、第三騎士団だ。」
「いいね!団長のマルスさんに伝言を頼む。[ハヤトは依頼でしばらく王都を空ける]と伝えてくれ。」
マルスさんならわかってくれるだろう。俺の事も知ってるみたいだったし。
そのまま、光輝か国王に話が行けば終りだ。
「何故私がそんな事をしなければならない。」
「重要な事なんだよ。俺を通すか伝言を頼まれるかどっちかにしろ。でないと不味い事になるぞ、主に俺が。」
「勝手になればいいだろう。」
「門番さん、名前は?」
「どうしたんだ急に?」
「罪をなすりつける時に、門番としか言えなかったらカッコつかないから、個人まで特定させないといけないだろ。」
「あんたがちゃんと報告すれば良いんだ。」
「解ったよ。変なガキが来たと報告しておく。不法に王宮に足を踏み入れたんだ。指名手配されても恨むなよ。」
「・・・だったら今捕まえてみろよ。じゃあ、報告頼んだ。帰るぞ、ルー。」
「ガゥ!」
門番に手を振って堂々と王宮を退場する。
面会までの待ち時間や雫やアリア王女の説教込みで最低半日は覚悟していたのだが、まさか出鼻をくじかれるとは思わなかった。
どう伝わるかはわからんが伝言を頼めたし、報告は問題ないだろう。
変な伝わり形したら雫に怒られるだろうけど、俺に入場方法を提示しておかない王国側の不備にしておこう。
予定を繰り上げて、破れたミスリルのインナーを直す為にミレディの店に行く。
「いらっしゃぁい」
マジックバッグからインナーを取り出してミレディに渡す。
「約束通り、こいつを直してくれ。」
「いいわよぉん。」
「後、これでこの子のアクセサリーを作れるか?」
マジックバッグからフェンリルの素材を取り出す。
今朝、フェンリルの素材をルカから受け取りマジックバッグに収納した。
あきらかに収納量が増えてる気がする。何も言わなかったが、きっとフィーレがやってくれたんだろう。今度お礼をしなければいけないな。
「その子のゆかりの物かしらぁん?」
さすがミレディ、話が分かるやつだ。
「親だ。形見だから身に付けられるものにしてやりたい。」
「いいわよぉん。最近のトレンドだと、従魔の首輪に装飾するのが来てるわねぇん。この素材だと、装飾品としても魔術道具としても一級品が出来そうねぇん。」
「刻印魔術まで出来るのか?」
「そこは本職に頼むわよぉん。だから時間がかかるわねぇん。」
「構わん、最高の物に仕上げてくれ。それと、インナーは急いでくれ。依頼でしばらく空ける事になるから、出る前に受け取りたい。」
「じゃあ2日で仕上げてあ・げ・る。」
「頼んだ。」
ミレディに細かい注文を出して、衣類を買い込み店を出る。
まだ時間に余裕があったので、商店街を見て回る。ふと見つけたボールやフリスビーをループスのオモチャとして買い、昼食をとる。
午後からは町の外の草原まで来て、ループスと遊んで時間を潰す。ボールやフリスビーを投げては取ってきて褒めるを繰り返し、最終的には割と本気でフリスビーを投げてもキャッチして来るようになってしまった。
どうやらループスは褒められて伸びるタイプのようである。
小腹が空いた頃に切り上げて、買い食いしながらギルドへと向かった。
設定
宗教
数多の神々が存在する世界なので、基本的に宗派は一つ。
商人は商業神に、農家は豊穣神に、といった形で各々自分の信仰する神は違えど、どの神が一番だと争う事は無い。
教会も一種類しかなく、教会によってどの神に力を入れているかはまちまちだが、この神しかダメといったルールは無いので、どの神に祈っても構わない。
アルカディア王国王都の教会では、国を挙げて信仰しているため、ディアーナの石像が入り口にあるが、ディアーナ以外の教徒も同様に歓迎される。




