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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
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襲撃

「・・・勇者って暇なのか?」

「そんなわけないでしょ!むしろあなたの監視よ。」


雫からすぐさまツッコミが入る。


・・・マジかよ。


「つまり暇じゃん。」

「何度も言わせないで。」

「今回は人との戦いだからね。魔物との命のやり取りは大丈夫だったけど、人間相手はそうはいかないだろう。経験出来るときにやっておくべきだと思ったんだ。君もそうだろ?」

「俺は・・・ガイアス、ハゲたちはどうなった?」

「リーダー以外は死んだよ。今回の作戦が終わったらランクアップさせるからな。」


返答は予想していた通りだった。ランクアップも言われてた通りだな。

頭に血が上って、やり過ぎると思ったので、なけなしの理性で身体強化を使わなかったのだが、召喚時の強化や加護による強化で地力が上がりすぎていた。

ベーシックの身体能力を検証する必要がありそうだ。


「そうか・・・悪いな光輝、俺はついさっき経験したらしい。ちょっとキレる事があってね。」

「そうか。なんともなかったのかい?」


確かに、人を殺害しておいてこの落ち着きようは、日本人としておかしいだろう。


「あぁ、おそらくスキルのせいだと思う。」

「スキルか。そればっかりはどうしようもないね。」


殺人の話を一旦区切り、話を人さらいに戻す。


「尋問の結果、取引場所と時間がわかりました。時間に余裕がないので、このメンバーで向かいます。詳しい説明は、移動中に致します。」


マルスさんが指揮を取り、勇者メンバーとマルスさん、アリスさんの7人は、取引場所に向かう。


「少し狭いですが、これで行きましょう。第三騎士団の馬車です。」


ギルドの外にはこのメンバーなら全員乗っていけるサイズの馬車が用意されていてた。


「用意が良いな。」

「勇者メンバーが周りから見られないように引っ張ってきたモノなのですけどね。」


ガイアスとレイラさんは残るようで、2人に見送られて町を出る。


「取引場所は荒地方面の岩場で、大岩に亀裂が入っている場所です。人が休憩できる程度のスペースがあります。」

「そこに潜伏している訳だね。」

「尋問した限りではその通りです。ただ、相手の戦力の規模がわかりませんので、慎重に戦いましょう。」


馬車に揺られながら、ふと思い出した事を言っておく。


「光輝、1つ頼みがあるんだが、良いか?」

「珍しいね、何だい?」

「勇者コウキの名前を借りたい時が来るかもしれない。その時使ってもいいか?ただ。その後めちゃくちゃ迷惑かけると思うんだが。」

「・・・構わないよ。貸し1で使ってくれ。」

「雫にも先に謝っとく。」

「そんなに大事なのかしら?」

「あぁ、その時が来たらな。」

「・・・覚悟しておくわ。ただし、自分でも消火活動はしなさいよ。あと私にも貸し1ね。」

「・・・わかった」

「隼人~私と杏華ちゃんは~?」

「しりぬぐいしてくれるのか?」

「しないよ~」

「じゃあダメ。」

「え~隼人のケチ~」


その後も雑談をしながら特に何事もなく進んでいく。


「そろそろ現場に着きます。それでは、役割分担を致しましょう。私とコウキ殿はメインの襲撃で制圧担当、シズク殿は援護、ハヤト殿は遊撃、ユイ殿はバックアップ、キョウカ殿とアリスで警備をお願いします。」

「「「「「「はい」」」」」」


無事、岩場に到着し、陰に隠れて現場をのぞく。

馬車が2台と見張りが8人、位置的に人さらいのチームだろうか?3人パーティーが1チームと縛られた女性がいた。


「取引場所は中でしょう。何人いるのかは不明ですが、そこそこ大きい取引の様ですね。」

「マルス、僕たちは中に突入でいいんだね?」

「はい、ハヤト殿と、シズク殿で援護をお願いします。その後、ハヤト殿は出入口の封鎖と状況に合わせて中と外の援護をお願いします。」

「「わかった」わ」

「残りのメンバーは、馬車と周囲の警戒をお願いします。」

「「「わかりました」わ」~」

「それでは、作戦を開始します。」

光輝とマルスさんが岩の陰に隠れて近づいていく。


「雫、大丈夫か?」

「大丈夫よ・・・」


まったく大丈夫ではなさそうだ。この土壇場で血の気の引いた真っ青な顔をしている。

警備の連中は、出来るだけ声を出させないように無力化する必要がある。雫もわかっているだろう。殺してしまった方が楽なのだ。

しかし、今までの生活でそんな事を考えることなど無かった。どうすべきか本気で悩んでいるのだろう。


「無理なら今言え、俺がやる。」

「・・・いいえ、やるわ。」

「そうか。頭に水の玉でもかぶせて一番左の1人を窒息させればいい、俺が6人やる。光輝達が定位置に着いた。やるぞ。」

「・・・わかったわ。」


襲撃部隊にサインを送り、攻撃を開始する。


「ファイヤーバレット」

「ウォーターボール」


6つの炎の弾丸が高速で打ち出され、次々と頭を貫通していく。頭を撃ち抜かれ、6人が倒れる。

何事かとあたりをキョロキョロする残り1人に、一瞬遅れてウォーターボールが当たり、指示通り頭を包み込んで停止した。

逃れようともがくが、水に対して意味など無く。焦って息を吐いたためか、わりとすぐに窒息した。

同時に、走り出していた光輝とマルスさんは、人を避け中へと入って行く。


「雫、大丈夫か?」

「・・・大丈夫よ・・・」


先ほどと同じやりとりだが、雫は口元を手で押さえ、必死に吐き気を我慢していた。


「雫、後はやっておくから休め。」

「・・・わかったわ。」


雫をアリスさんの方に運び、出入口の封鎖をする。

出入口で、何事かと頭をかがめて震えている女性に声をかける。


「味方だから安心しろ。俺たちは人さらいを制圧しに来たんだ。終わったらほどいてやるから待ってろ。」


女性は泣きながら首を縦に振る。

周囲を警戒しつつ中をのぞき込むと、人が走ってくる。


「クソが!なんでばれたんだ!?」


・・・取り逃してんじゃん。

走って出てきたところで、横から足を引っかけ、転ばせる。


「アガッ!」


転んだところで頭を踏みつけて黙らせる。


しばらく待っていると光輝達が出てくる。光輝は若干顔色が悪そうだが、いつも通りの表情で歩いてきた。


「申し訳ない、しりぬぐいをしてもらって。」


マルスさんが謝罪をしてくる。相変わらず腰が低い人だ。


「そういう役割だからな。終わったのか?」

「はい、縛るのに時間がかかってしまいました。自殺もできないようにしておきましたので、もう大丈夫でしょう。皆を呼んで来てもらってもよろしいですか?」

「わかった。じゃあその人の拘束を解いてやってくれ。」

「僕がやろう。」


俺の依頼に光輝が反応して女性の方へ近づいていく。俺は皆のいる馬車の方へ走り出す。


皆が集まり、後片付けをする。

俺が戻ってくる来る前に、マルスさんが死人を人さらいの馬車の一台にまとめて放り込んでくれていたので、皆ある程度は大丈夫そうだった。


「中も死体は回収しておきました。罪人と被害者が残っておりますので、馬車に乗せて町へ戻りましょう。」


人さらいの馬車は2台あったので、死体を入れた方に罪人、もう1つに被害者を乗せて出発する。

御者は、マルスさんとアリスさん、捕まっていた貴族令嬢の執事がやってくれた。

どうやら貴族令嬢も執事ごと人さらいに遭ったらしい。

帰り道も何事もなく、急ぎはしたが、日が落ちる頃には町へ戻る事が出来た。

気分が悪いメンバーがほとんどだったので、口数は少なかった。


「ハヤト殿、この度はありがとうございました。王宮からもお礼が出ると思いますので、ギルド経由で受け取ってください。」

「わかった。何かあったら言ってくれ。」

「その時はまたお願いします。では。」


捕まっていた被害者は、一旦王宮で保護されて、事情聴取の後、丁重に家族のもとに送ってくれるそうだ。手厚い保護である。

手を振って馬車を見送り、今日もまた、竜の息吹の屋敷へ帰って行く。

そろそろ本当に宿を見つけないと・・・

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