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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
45/186

捜索

翌朝、起きて日課を済ませたあと、ギルドに向かう。

ループスの名前を正式に登録しなければならない。


「レイラさん居る?」


受付のカウンターにレイラさんの姿がなかったので、一番近くにいた受付嬢に声をかける。


「その・・・副長はまだ来ていないのです。」

「遅番なのか?」

「いえ、いつも通りのはずですが、定時になってもまだ来ておりません。」

「寝坊か、やらなさそうだけど仕方ないな。」

「ありえません。今まで1度も遅刻をしたことがないのです。今日は忙しくならないはずなので、探しに出ている次第です。」

「そうか、何か事件に巻き込まれてて、手を借りたいことがあったら何でも言ってくれ。」

「かしこまりました。」

「今日はこの子の名前を登録しに来たんだ。後は名前だけになってるから、書きかけの書類を持ってきてほしい。」


ループスを抱き上げて、カウンターの上に乗せる。


「探して参りますので、少々お待ちください。」


受付嬢は一礼して下がってき、少しして書類を持って戻ってくる。


「お、お待たせしました。」


戻ってきたが、恐る恐る近づいてくる。


「どうかしたか?」

「そ、その子の種族が・・・フ、フェンリルというのは本当なのでしょうか?」

「かわいいだろ。」

「Sランクの魔物は全部、逢う時は死ぬ時と言われてるほど強いんですよ。」


けっこうな気迫で説明してくる受付嬢。

そんなに前のめりにならなくても良い気がするんだけど・・・


「そうなのか、なんでもいいや。早く名前を登録してくれ。ループスだ。」

「失礼しました。では、ループスで登録させていただきます。」


冷静さを取り戻し、普通の対応に戻り、事務的に登録を済ませてくれる。

やることも終わり、町をふらついて帰ろうかとしたところで、ギルドに職員が入ってきた。


「宿舎にも居ませんでした。」

「そうですか、やはり事件なのでしょうか?ギルド長に報告をお願いします。」


おそらくレイラさんの話だろう。


「探すの手伝うよ。ついでにガイアスに俺が手伝うって報告してきてくれ。」

「あなたは?」


後から来たギルド職員が聞き返してくる。


「隼人だ、普段レイラさんが担当してくれている。」

「わかりました。すぐに伝えてきます。」


職員は駆け足で奥へ向かう。

ループスとじゃれながら戻ってくるのを待つ。

しばらくして、職員はガイアスを連れて戻ってきた。


「ハヤトが手伝ってくれるのか?」

「あぁ、邪魔か?」

「まだ何か起きてるって決まったわけじゃないんだが、直感スキルも訴えて来てるし仕方ないか。ハヤトに指名依頼だ、レイラを見つけてくれ。」

「そんなのは要らん。レイラさんには世話になってるし、依頼なんかなくても勝手にやる。」

「策はあるのか?」


ガイアスの問いに、楽勝といった表情で答えてやる。


「ルー、昨日首輪をくれたお姉さんを覚えてるか?」

「ガゥ!」


頼られてやる気満々な声をあげるルー。


「その人の匂いを追える?」

「クゥゥン。」


あれ?何かショボくれたんですけど・・・

出来ないっぽいな。


「ハヤト、フェンリルを犬扱いするなよ。」


ガイアスからツッコミが入る。


「ダメだったか。望み薄な第二案をやる事にするよ。先による所があるから行ってくる。何かあれば連絡するから宜しく。」


ルーを肩に乗せてギルドを飛び出し、教会に向かう。

教会の礼拝堂まで来て、使えそうな魔術を教えてもらうためにフィーレに祈る。

視界が真っ白な空間に切り替わり、フィーレが姿を見せる。


「おはよう、フィーレ。」

「・・・・・・ん・・・どうしたの?」

「人を探す魔術があったら教えてほしいんだ。実は----」


今までの流れを説明し、使えるものがあるかを聞いてみる。


「・・・・・・これ」


フィーレが手を伸ばし、手のひらを上に向けて開くと、一冊の本が現れる。

本に書いてある魔術の名前は捜索。ご都合主義も良いところだな。


「今にぴったりな魔術だ。」

「・・・物を探す魔術・・・人には・・・むかない」

「そうか、でも使える事は使えるんだろ?」

「・・・・・・ん・・・でも・・・期待しない方が・・・いい」

「可能性があるならやってみるよ。」

「・・・・・・わかった」


捜索を使うコツを教えてもらいながら少し練習する。

フィーレは親身に魔術を教えてくれるのだが、スゴく無防備に密着してくるので、色々と危険である。

最も魔術の神様に直接教えてもらいにくる人はおそらく1人しかいないのだが。

ある程度形になり、時間もないので練習を切り上げる。


「ありがとう、助かった。」

「・・・・・・構わない」

「今度、何かお礼をさせてくれ。」

「・・・・・・じゃあ・・・お茶菓子・・・また・・・欲しい」

「わかった。美味しいもの見つけたら持ってくる。」


女神様ってのは皆、お茶するのが好きなのか?


「・・・・・・ん」

「じゃあ、行ってくる。」

「・・・・・・ん・・・頑張って」

「あぁ。」


光に包まれて、教会にもどってくる。

隣にいるルーを連れてそとに出て、早速捜索を使ってみる。


「捜索」


わかる範囲でヒットした人物は10人。

王宮に居る人と町の外に居る人を一旦後回しにして、町中の反応に集中する。


「虱潰しに行くしかないか。」


独り呟き動き始める。

近くまで行って捜索、近くまで行って捜索を繰り返して5人目、家の中で窓からも見れない場所に居る人に当たる。


「・・・本当に使いづらいな。」


ここも一旦保留にしようとした時、ルーが反応する。


「ここに居るのか?」

「クゥゥン」


ループスが肯定するように鳴く。


「ルー、ギルドに行って職員を連れてきてくれ。」

「ガゥ!」


ルーは自信満々に吠えてギルドの方へと駆けていく。

取りあえず人の出入りを見ようと、玄関を見張れる場所を探していると、後ろから声がかかる。


「あらぁん。ハヤトじゃなぁい。」


ミレディがクネクネしながらこっちに駆け寄ってくる。

キモい


「こんな所でなにしてんだ?」

「買い物の帰りよぉん。良い生地でしょぉん。」

「そうか、布の事は良く解らん。俺は忙しいからまた今度な。」

「そぉねぇ、お店で待ってるわぁん。たっぷり愛を込めてその服を直してあ・げ・る。」

「込めるのは技術だけにしろ。愛なんかいらん。」

「ハヤトのい・け・ず。忙しそうだからあてぃしは行くわねぇん。お仕事頑張ってねぇん。」


鈍い音がしそうなウインクをして去っていくミレディ。

思わず身構えて、回避行動をとってしまった。

ウインクの直線上に居たらダメージを受けそうな気がしたんだ。

不可抗力だ、仕方ない。

気を取り直し、出入口が見えて身を隠せる所に移動し、張り込みをする。

しばらくして、男が2人が中に入っていく。

1人は見たことがあった。ハゲの取り巻きに居たはずだ。もう一人は見た事がない。


「これは本格的に事件か?」


完全に事件の匂いが漂ってきて、真面目な顔つきになる。

気配を消し、魔力を抑えて、ゆっくりと扉に近づき、中の音を聴こうと耳を近づけて、聴覚を強化する。


「すぐそばに人はいないな。」


思いきってドアノブを捻る。鍵はかかっておらず、扉はすんなり開いた。


「不用心だな。」


ゆっくりと警戒しつつ中に踏み入れた。入ってすぐの部屋には誰もおらず、奥の部屋からかすかに声が聞こえる。

そちらの扉に近づき、また耳を近づけて聴覚を強化し中の音を聞く。


「・・・・つ、サブリーダーだろ。」

「今まで、鬱陶しくてな。邪魔だからついでに売り飛ばそう。」

「ハーフエルフだ、高く売れるだろ」

「そおっすよ。変態貴族の慰みものとして上玉っす。」

「・・・・・・・」


レイラさんの話だろうか?ハーフエルフ?

話の所々に引っ掛かる部分があるが、人身売買の話で間違いないだろう。

最近の奴らの羽振りの良さはこれが原因だな。どこかで人身売買の取引先を見つけたのだろう。

ギルド職員の応援を待つ事もなく、扉を開けて中に入っていく。



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