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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
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謝罪

フェンリルの首輪を作ってもらうために、一旦レイラさんに預けてから、雫を探すために部屋を出る。

すぐに見つかったのだが、雫は男女関係なく多くの人に囲まれていた。

あいかわらずカリスマ性バツグンである。

光輝の時は、必要に駆られていたので、余裕で割っては入れたのだが、今回は十中八九説教を食らうだろう。


「足が進まんな。」


誰にも聞こえない声でボソッと呟き、本命のストレートの前にジャブを貰うことにする。

2人とも少し特殊な感じに人垣が出来ていたのですぐに見つかった。


「わたくしの視界から消えてくださるかしら?」

「「「「はい!」」」」


腕を組んで、這いつくばった男を冷たい視線で見下す杏華。

・・・見てはいけない異世界を見てしまった気がする。

確かに杏華は気が強い人だけど・・・マジか・・・


「あら隼人さん、良いところにいらっしゃいましたわ。この人達を追い払ってくださるかしら?」


・・・え?この中に放り込まれるの?

気が引けるが、ご命令とあれば仕方ない、気合い入れてやるか。


「んんっ!」


出来るだけダンディーな声でいこう。

少しだけ殺気を放ちながら杏華の隣に立ち、指をポキポキと鳴らしながら男達に言い放つ。


「杏華様のご命令だ。今すぐ尻尾巻いて消え失せろ。」

「「「「は・・・はい!」」」」


取り囲んでいた男達は、だらしなく弛んでいた顔を引き吊らせて、転びそうになりながら脱兎のごとく走り去っていった。


「助かりましたわ。で・す・が、助け方が少しおかしいですわ!」


・・・あれ?

もしかしてマジなやつだったのか?そういうやつだと思ってた。


「ごめん、勘違いしてた。」

「どんな勘違いなのか教えて下さるかしら?」

「いや、ほんとすいません。すいません。」


杏華に詰め寄られて、後退りしながら謝罪し、次を探す。

こちらも男に囲まれて、色々な人に飲み物を注がれていた。

おっさんが多いのは気のせいだろうか?

椅子に座りながら、ひらりひらりと器用におっさん達のさりげないボディタッチをかわしながら、笑顔で会話している。

どうやら幼なじみは、異世界に来て逞しく成長したようだ。

しばらく眺めていると、視線に気づいたのか、こちらを向き、ふわふわした足取りで駆け寄ってきた。


「隼人だぁ~ど~したのぉ~?」


いつもよりもゆったりした口調で話しかけてくる。

おっさん達は残念そうにこっちを睨みつけているが、スルーして結依の方に向き直る。

こころなしか、顔も赤い。酔ってるな。


「元気そうで何よりだが、飲みすぎるなよ。」

「飲んでないよぉ~皆が~ミックスジュースをたくさんくれるのぉ~」


手に持ったグラスを俺に見せてくる。

完全にアルコールのカクテルである。


「アルコールもミックスされてんだよ。」

「そ~なのぉ~?お酒って~美味しいねぇ~。なんだかぁ~ふわふわするぅ~」

「とにかく、あのおっさん達は危険だからあんまり近寄るなよ。連れ去られるぞ。」

「大丈夫だよぉ~ほらぁ~」


結依は先ほどのボディータッチを躱していたような動きをしてみせる。


「この動きが出来て、ダンスが出来ないのが不思議ですわ。」


華麗な動きを見てつぶやく杏華。

・・・ダンス?


「隼人ぉ~気持ち悪くなってきたぁ~」


おい待て、結依の顔が青ざめて来てる。いつの間にかさっきのグラス空いてるし。


「だから言っただろ。歩けるか?杏華、水貰ってきて。」

「わかりましたわ。」

「目がチカチカするぅ~」


結依を担いで揺らさないようにトイレへと駆ける。

そして何とか間に合った。

油断とはこの事だろうか?洗面器によりかからせて、安心してしまったのがいけなかった。

礼を言おうと結依がこちらを見上げようとした瞬間催した。俺の右手に。


「・・・おい!」


食らっていないほうの手で、結依の背中をさする。


「手つきがやらしぃ~隼人のエッチィ~」

「介抱してる人間に対してそれは無いだろ。」


そんな会話をしていると、杏華が急いで水を貰ってきてくれた。


「貰ってきましたわ。あら、隼人さんももらいましたの?」

「最悪の一撃だな。」


水を飲ませて結依は退場していった。杏華が付いて見てくれるようなので任せる事にした。

手を洗い、トイレを出て本命の雫を探そうと思ったら、向こうから来てくれた。


「災難だったわね。」

「まったくだ。まさか吐かれるとは思わなかった。」

「それはそうと隼人。正座」

「は?」

「正座しなさい。」

「・・・はい」


非常に怖い笑顔で正座をうながされた。きっとこれが、目が笑っていないというやつなのだろう。

ここは大人しく従うしかない。


「なぜあなたは戻ってこないのかしら?」

「色々あってもどれなくなった。今後も一緒に行動は出来ないと思う。」

「理由は?」

「今は言えない。いつか教える。」

「わかったわ。ただ、なぜその決断を1人でしたのかしら?あなたはいつもそうなのよ。5人でこの世界に飛ばされて、みんな不安なのに何で1人でフラフラするのかしら?何で私たちに相談しないのかしら?そんなに周りが信用出来ないの?」

「返す言葉もございません。」

「そもそも、あなたのステータスに変なモノが付いてなければこんな事になってないのよ!日頃の行いが悪いのがいけないわ!必要に駆られた時かやる気が出た時しか行動しない性格がダメなのよ!今回もやる気を出したら出したで、ギルドの訓練所を半壊させて支払いを王宮にツケる非常識な行為!アリア王女の怒りを鎮めるのがどれだけ大変だったと思ってるの?しかもこの前は式典までフケる暴挙、王宮全体が右往左往してたわよ!教会もギルドも必死で探したのに見つからないし!こっちに来てからの行動が自由過ぎるのよ!

ーー中略ーー

確かにあなたは根暗に片足突っ込んでる無気力な人間だけど、元居た世界でも高校生で、こちらの世界ならお酒も飲める立派な成人よ!大人として報連相くらいは出来ても良いじゃない!」


・・・長い。


後半ただの罵倒になってるし、止める人がいないとこんなに長いのか・・・帰ってきてくれ結衣。


「すみませんでした。」

「はぁ、少しすっきりしたわ。」


溜め込みすぎだろ。


「それは良かった。足崩しても良いですか?」

「喋りすぎて喉が渇いたわ。何か飲みましょう。」

「何か貰ってくるよ。」


雫は席を探しに行き、俺は飲み物を取りに行く。


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