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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
40/186

第一ラウンド

騎士の号令でケイトさんが詠唱を始める。

俺はそんな恥ずかしいものは必要ないので、無詠唱で魔術を発動する。


「プロミネンス」


魔物に直撃させるわけではなく、地面を這う様に広く拡散させる。

蒼い炎が地面を放射状に広がり、大地ごと魔物を焼く。

足元を焼かれた魔物は焦げるどころか、足先から炭化し、焼け落ちていく。

足を失い、バランスを取れなくなった魔物達は走る勢いのまま前のめりに倒れ、地獄の業火に身を投じていく。

目の前で起きる事態に、周囲がざわつく。

あるものは蒼い炎に、あるものは上級魔術の無詠唱に、あるものはその火力の高さに、驚きを隠せずにいた。

ケイトさん達も例外ではなく、特にジャックが何か言いたそうな感じではあったが戦場なのと魔術を使い続けている俺を見て言葉を飲み込んだ。


「ケイトさん俺の魔術の真ん中より奥に頼む」

「わかった。ストームカッター。」


ケイトさんの詠唱も完了して、魔術を放つ。

依頼通り、遠くに風の刃を内包した竜巻が起きる。

俺は、魔術をさらにコントロールして、ケイトさんの竜巻に乗せる様に動かす。

竜巻が炎を巻き込み、中心に細い蒼炎の柱ができる。

その瞬間、コントロールが異常に難しくなった。

ケイトさんも同じなようで、かなり険しい表情をしていた。


「ハヤト、コントロールがキツイ。何が起きてる?」

「俺も滅茶苦茶抑えてるんだけど、勝手に強くなるな。」


炎の竜巻は、風が炎を強くし、炎が風を呼ぶという循環ができ、抑えても勝手に強くなり続ける。

直径20mはありそうなサイズになり、高さはよく見えなくなってしまった。

遠目に出して良かったと思う。

受け持った左側の魔物の3割ほど竜巻で吸い上げ、炎を纏った風の刃に切り裂き、3~4000度の炎に焼かれて燃えながら外に弾き出す。

弾き出された魔物は隕石のように高速で飛んでいき、遠くにいる魔物にも被害を及ぼした。

提案した本人もドン引きの成果である。

熱波だけはこちらに来ないように操作出来るが、飛んでくる魔物はどうしようもないな。

その光景を見た魔術師達は、呆けていたのを一気に切り替え、ウォール系の防御壁を作り出す。


「ハヤト、そろそろ限界だ。止めれるか?」

「わかった、温度を下げる。」


火を消すように一気に温度を下げていく。

火が弱まり、ケイトさんもコントロールがしやすくなったのか竜巻も小さくなって消えた。


「ハヤト、やり過ぎだ。お隣さんにまで迷惑をかけたぞ。」


魔力回復のポーションを飲みながらケイトさんが愚痴を言う。

確かに、騎士達はキレイな陣形で多種多様な中規模魔術を展開し、絨毯爆撃を仕掛けて魔物を殲滅していた。

魔物が騎士側まで飛んでいき、防御壁を張らざるをえなくなっていた。


「確かに、謝ってくるか。」


終わった後グチグチ言われるくらいなら、今この忙しいタイミングで雑な許しを貰っておこう。

光輝ならそれなりに権力もあり、謝罪を受け入れてくれるだろう。謝罪を受け入れてくれるはずだ。


「まて、今から行くのか?」

「あぁ、すぐに戻ってくる。」

「そういう問題ではない----」


ケイトさんの制止を振り切り、騎士の方へと突撃していく。


「何者だ、止まれ!」


騎士の一人に止められるが、無視して飛び越え、光輝の横に着地する。


「久しぶりだな。」

「そうだね、君も手伝ってくれるのかい?」


突然の来訪に驚きつつも、いつも通りの口調で答えてくる。


「今は、冒険者として左側で戦ってるんだ。ちょっとやり過ぎたから謝罪に来た。」


俺は手甲に蒼い炎を纏い、何の謝罪かを伝える。


「なるほど。問題無いよ。右側も似たようなものだし。」


言われて右の戦場を見てみると、あたり一面が樹氷のように魔物が凍り付き、真っ白な世界が出来上がっていた。


「マジか・・・」

「君の魔術も凄かったけど、向こうも負けず劣らずの大規模魔術を使ってるね。確か、クラン竜の息吹のリーダーの魔術らしいよ。」


・・・え?あの変態そんな強かったの?


「あれをパトリックがやったのか。」

「知り合いなのかい?」

「最近ちょっとな。こんな凄いヤツだとは思わなかった。」

「ぜひ会ってみたいね。それと、話を戻すけど、謝罪を受け入れる条件として、頼みごとを聞いてくれるかい?」

「何だ?珍しいな。」

「僕の直感が、森からやばい気配を感じとっている。この戦場に来られるのは嬉しくないから、森に行ってきてほしい。僕が行きたいところだけど、あいにくとここを離れるわけにはいかなくてね。」


そう言って森の中のおおよその方を指さし教えてくれる。


「わかった。引き受ける。」

「頼んだよ、隼人。」

「あぁ、タイミングを見て行ってくる。」


光輝に背を向け、ケイトさん達のいる、左側へと戻っていく。


元居た位置に戻ってきたその時、空から細い光が無数落ちてきた。

おそらく光輝の魔術だろう。細い光が何本も魔物を貫通し、辺り一帯の魔物ををハチの巣にしていく。


「これは、勇者か?」


ケイトさんが感嘆の声を上げる。


「だろうな。勇者は負けず嫌いと見た。」


白々しくケイトさんの言葉に反応する。


光の雨がやみ、開幕と同じファイヤーボールが打ち上がる。

大規模魔術も止み、総力戦へと切り替わる合図だ。

既に竜巻は消え失せ、温度も常温に戻っているのだが、誰も踏み出そうとしない。

確かにさっきまで地面は溶けてどろどろの溶岩と化していたのだが、今は冷えて固まり、歩けるようになっている。


「もう歩ける温度になってるけど誰も行かないのか?」


向かってくる生き残りの脳天にファイヤーバレットを叩き込み、先陣を切る。

それを見たマックスが吠える。


「続けぇぇえぇぇぇ!!」

「「「「「「おおぉぉおぉぉぉ!!」」」」」」


さすが、Aランク良い仕事をしてくれる。

冒険者パーティー全員が動き出し、乱戦が始まる。

光輝の依頼を果たすため戦場を縦横無尽に駆け回りながら、森へ向かっていく。

ゴブリン・ジャイアントスパイダー・フォレストウルフの奇襲を避けてはファイヤーバレットを撃ち、オークのこん棒・オーガの巨腕をかいくぐってはすれ違いざまに崩拳を叩き込む。

森ではさらに奇襲が多くなってくるので、気を引き締めて突入していく。

森に入り、他人から見えにくくなったところで、身体強化で脚力の強化の割合を上げ、一気に加速する。

敵に見つかる前にファイヤーバレットで仕留め、森を駆け抜けていく。

言われていた場所に近づくに連れて、魔物と遭遇しなくなっていく。


「これは、光輝にしてやられたな。」


少し開けた場所があり、洞窟が見える。絶対ここがその場所だ。

その洞窟の前に巨大で真っ黒な狼が牙をむき出しにした状態で立っていた。


「こんなのがいたら、魔物も寄り付かんよな。」


向こうも戦闘態勢なので、仕方なく拳を構える。

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