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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
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会議

会議室に入ると、主要パーティーの代表はみんな集まっていたようで、何グループかに分かれて情報交換や雑談をしていた。

ギルド長のガイアスも入ってきた事により、皆がこちらを向く。

俺を見て、一部の人達がなぜ居るのかとヒソヒソ小声で話すのがわかる。

俺の二つ名の事だろうな。まぁどうでもいいんだが。

部屋の隅まで進み、壁にもたれてガイアス達の方を向く。

そのタイミングでガイアスが話始める。


「今日はよく集まってくれた。皆も知っての通り、今王都に向けて魔物の大群が押し寄せていている。今回は、騎士と合同での防衛戦となる。騎士は居ないが、作戦手順とチーム分けをしたいと思う。」


騎士と合同と言ったところで、少しざわつく。


「で、美味しい所は、騎士連中と勇者が持って行くんだろ?」


集まったうちの1人が声を上げ、その発言に対して、同意の声が上がり始める。


「静かに!言いたい事は解る。今回は勇者の名声の為に利用されるだろう。しかし、国を挙げた大規模な作戦である事に変わりはない。我々は依頼を完遂するだけだ。」


ざわついた空気をガイアスが一蹴する。


「だが、冒険者の手柄はどうなるんだ?勇者のお守りをして、周りの処理をさせられて引き立て役にしかならないんだろ?」

「確かに作戦としては、そうなる可能性が高い。しかし、今回はそれもかねて王宮からも特別報酬が出る。大物をとれなくても報酬の心配はしなくていいだろう。」

「報酬の話じゃない。手柄や名声の話をしてるんだ。」

「それに関しては、終わってみんとわからん。ハヤトはどう思う?」


ガイアスの言葉に、全員がこちらを向く。なんでその話を俺に振るんだよ。


「ガイアスが言った通りだ。やる事をやってから言うしかないだろ。ここにいる全員は強いらしいから、1個くらい武勇を持って行かれても良いだろ。それに、俺たち冒険者で大半を片付けてしまえば、どれだけ美味しい所を持って行かれようがお膳立てされた勇者にしかなれない。国がどれだけ手柄を持って行こうが、その事実は変わらないんだ。俺たちがやればやるほど勇者はお飾りになる。勇者のプライドをへし折るチャンスだな。」

「ハヤト、良い演説だ。お前ら!勇者なんて必要無いと教えてやるいい機会だ!冒険者で全部狩りつくすぞ!」

「「「「「「おぉ!!」」」」」」


ガイアスが気合を入れて士気を高める。

その調子のまま作戦の説明に入る。

作戦と言っても、騎士と冒険者はおろか、冒険者同士でさえ連携は難しい。

作戦は明日の早朝、騎士とともに草原に向かい魔物が来るのを待つ。

中央を騎士、両サイドを冒険者で陣形を組み、森を視認出来る草原で待機、開幕の一撃を大規模魔術で攻撃し、その後はパーティー単位での迎撃となる。

自分たちの持ち場をいち早く片付け、助け合いの名目で騎士から手柄を奪っていくのが作戦だ。

最後のおまけは今決まった事である。

右翼か左翼どちらに着くかを決め、今日は休むようにと言われて解散となった。

右翼のほとんどは、クラン”竜の息吹”が受け持ち、残りがバランスが良くなるように分かれた形だ。

ちなみに俺は左翼側になってしまったので、パトリックやリリィさんとは一緒には戦えなさそうだ。


「パトリックとケイトとハヤトは残ってくれ。」


会議も終わり、外へ出ていくと思ったらガイアスに引き留められた。


「3人には、開幕の一撃を頼みたい。」


どうやら大規模魔術を使える人物を集めたようだ。


「僕は構わないよ。それと確認なんだけど、その一撃は僕のクランで担当するという解釈でいいのかな?」

「あぁ、それで構わん。」

「俺も面倒だが、やれと言われたことをやるだけだ。」

「私も構わないわ。だけど、そこのハヤトとは一度打ち合せをしないといけないわね。」

「・・・そうだな。魔術同士が打ち消しあったら意味がない。」

「それは、作戦開始までに決めてくれ。出来るだけ多くを倒せる技で頼む。俺は事務仕事があるから行くぞ。」


そう言ってガイアスも出て行った。


「僕も失礼するよ。ハヤトくんとは同じ側に立ちたかったんだけど、またの機会を楽しみにしているよ。」

「そんな機会が無い事を願っている。」

「相変わらずつれないね。」


会議室に2人取り残される。


「私たちも行こうか。ハヤトはソロだったかしら?」

「あぁ。団体行動が苦手でね。」

「そう、私のパーティーを紹介するわ。付いてきて。」

「わかった。」


ケイトさんに連れられて酒場の方へ行く。

案内された先には3人の人が待っていた。おっさんと若い男女。親子くらいの年齢差がありそうなメンツである。


「お!やっと戻ってきたか。誰を連れてきたんだ?」

「今回、一緒に戦うことになったハヤトよ。」

「ほう。」


おっさんが感嘆を漏らす。品定めされているようで微妙に居心地が悪い。


「改めて自己紹介するわ。私はケイトAランクの風の魔術師よ。こっちが旦那のマックス、Aランクの剣士で息子のジャック、Cランクの剣士最後に娘のミラ、Cランクの水の魔術師よ。この4人で”安らぎの風”ねよろしく」

「俺は隼人、Cランクの火の魔術師だ。よろしく。」

「噂はあてにならんな。お前本当に魔術師か?」

「武道家でもある。近距離から遠距離まで何でもできるぞ。」

「そいつは良いな。で、なんで連れてきたんだ?パーティーに入れるのか?」

「違うわ。彼も開幕の一撃を担当することになったの。その打ち合わせよ。」

「なんでCランクのそいつがそんな大役任されるんだよ!大体そいつは”雑魚狩り”だろ。Cランクてのも---いてっ!!」


言葉の途中でジャックがマックスから拳骨を食らった。


「バカ息子がすまんな。」

「構わん。準備もあるだろうし手短に済ませよう。」

「そうね。ジャックには後できつくしかっておくわ。貴方はどれくらいの魔術が使えるのかしら?」

「大規模な魔術はプロミネンスとエクスプロージョンだな。干渉しない距離に撃つつもりなのか?」

「その予定だったけれど、何か良い方法があるのかしら?」

「竜巻みたいな魔術を使えるか?ちょっとやってみたいことがあるんだ。」

「ストームカッターを使えるわ。もしかして魔術をシンクロさせるつもりなの?」

「そんな凄いものじゃない。出来るなら俺の炎を消す気で撃ってくれれば良い。」

「信じていいのね?」

「出来なかったら魔力切れになるまでエクスプロージョンを連発するよ。」

「わかったわ。あなたを信じましょう。」

「そうか。明日楽しみにしている。」

「さっきもそうだけど、ずいぶん自信満々なのね。」

「そうだぞ!あんまり強そうな発言をするんじゃねーよ”雑魚が----イッテッ!何すんだよオヤジ!」

「すまんな。後できつく言っておく。」

「他人の評価に興味が無いんだ。どうだっていい。それと、明日は15000程度の雑魚が来るらしい。雑魚狩りの出番だろ。」


ジャックにそう吐き捨てて酒場を後にした。


特にやる事も無くなってしまったので、町をフラフラと見て回って、夜はクランの方へは行かず、冒険者ギルドで雑魚寝した。

きっと竜の息吹もあわただしくしていて、部外者を招く余裕など無いだろう。

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