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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
36/186

回避

「・・・頭いてぇ。飲ませ過ぎだろアイツら」


クランに戻ると飲み会が始まり、一晩中飲み明かした。


昼過ぎに起きて動き始める。

どんちゃん騒ぎしていたホールには、片付けられていない食器や屍の様にぐったりしているクランのメンバーが散乱していた。

マジでこのクラン大丈夫か?

キャラは豊富だわ酒の席はハチャメチャだわで運営できてるのは奇跡的だろ。

そんなことを思いつつも用意されていた二日酔い用の薬を飲み、顔を洗って目を覚まさせ、身なりを整える。

一応、教会に顔を出しておこう。

ディアとマリエルさんに怒られに行かなければいけない。

空いてたらで良いんだが、空いてたらで。

混んでたら時期をずらそう。ほとぼりが冷めるまで。

軽いものをつまみ、出ていこうとすると後ろから声がかかる。


「ハヤトさん、どこか出かけるんですか?」

「あぁ、教会まで行ってくる。」

「付いていっても良いですか?」

「・・・悪い、教会はダメだ。混んでたらすぐ帰ってくる」

「そうですか・・・」


残念そうに肩を落とすルカ。

・・・普段は悪態をついてはいるが、キッパリと拒絶したのは初めてだったな。


「事情があるんだ、ごめんな。」

「いえ、こちらこそすみませんでした。行ってらっしゃい。」

「行ってくる。」


クランの拠点を出て、真っ直ぐに教会へ向かう。

王都全体がお祭り騒ぎだったので、飲み明かした後のゴミが町中に散らばっていた。


「どこでも騒いだ後はこんなもんか。」


教会に着くと、予想外にもスッと中に入れる程度には空いていた。

とは言っても普段よりも人は多いのだが。

いつも通り礼拝堂でディアに祈る。


(逃亡勇者が来ましたね。)

(開口一番それですか?)

(マリエルを迎えに行かせますので、今すぐこちらに来るのですよ。)

(・・・はい)


・・・あれ?神界に帰ったんじゃなかったのか?


マリエルさんがいそぎ足で迎えに来て奥へと連れていかれる。


「来ましたね、ハヤト様。私は怒っているのですよ。」


ディアはプンプンといった感じで腰に手を当てて頬を膨らませる。

少しあざといが、ディアがやると非常に可愛らしい。


「可愛いなんて思ってもダメですよ。」


心を読むなよ。


こっちには、この時のために買ってきた物があるんだ。


「ディア、実は露店で他国のお茶菓子を買ってきたんだ。」


綺麗にラッピングされたジャムクッキーの箱を1つ取り出し、テーブルに置く。


「むむ。気持ちはありがたいのですが、それとこれとは別なのですよ。」


次は腕を組んでプイッとそっぽを向く。

しかし、箱が気になるのかチラチラと机の上を見ている。


「そうだな、しかしディアにも迷惑をかけたから謝罪の意味を込めて買ってきたんだ。中身はユグドフレア王国の果実を使ったジャムクッキーだ是非受け取ってほしい。」

「そういう意味なら、ありがたくちょうだいするのですよ。それにユグドフレア王国はアルカディア王国に次いで2番目に私を熱心に信仰する国ですし、お咎めは少しにしてお茶にしましょう。」

「あぁ、それとディアの好みがわからなかったから、色々な味のものを買ってきたんだ。」


トドメと言わんばかりに残りのジャムクッキーを全部出す。

伊達に全種類買っていない。


「むむむ。ハヤト様、今回だけですからね。次は怒るのですよ。」

「わかってるよ。迷惑かけた分、ディアの為に頑張るよ。」

「ハヤト様も反省しているようですし、心を落ち着けてお茶にしましょうか。お茶菓子が多いので、フィーレも誘います。マリエル、紅茶を4つ持ってくるのですよ。」


ディアは神界へと転移して光の中に消える。


「私は紅茶の用意をしてくるのでございます。」

「あぁ、騒がしくして悪いな。」

「いえ、私は女神様に仕える身でございますので。」


マリエルさんも退室し、1人部屋に残される。


「ハヤト様、丸め込むのが上手すぎるのでございます。」


一連の流れを見ていたマリエルさんは、部屋を出てから誰にも聞こえない声で1人呟く。

部屋の一角が光り、ディアとフィーレが姿を現す。


「連れてきたのですよ。」

「おかえり。それとこんにちは、フィーレ」

「・・・・・・ん・・・これ」


フィーレが俺の方に近づいて来て、1冊の本を差し出してきたので、受け取る。


「くれるのか?」

「・・・・・・貸す」


首を振って否定される。返却しなければいけないらしい。

本の表紙をチラッと見ると、魔力コントロールに関する魔術書の様だ。


「ありがとうフィーレ。大切に読ませてもらうよ。」

「・・・・・・ん・・・頑張って」


ひと段落した、丁度いいタイミングでマリエルさんが戻ってくる。


「お待たせしたのでございます。」


ティーカップを並べて。ジャムクッキーを皿に盛りつけ、お茶会が始まる。

ジャムクッキーは非常においしく、かなり話が盛り上がった。

2セット買わなきゃいけなかったか・・・


結局、ディアからお披露目会のありがたい小言をいただいた。

こちらからも、忙しいと言っていた割りに、出番が雑だったと言ったら怒られた。確かに女神様が出てきて、加護をくれただけで演出としては最高のモノだろう。

ちなみに、ディアは出演する条件として、降臨した際に過度な反応・干渉をしないと言う交渉をしたらしい。

だからこの現状が平穏なのである。国としても教会としても、飲みたくない条件だっただろう。女神様相手だと返答はハイかイエスしか無かったのではなかろうか。交渉は頭を悩ませたことだろう。

お茶会も終わり、クランの拠点へと帰ってきた。

自分の部屋へは行かず、そのままパトリックの所へ行く。


「入るぞ」


ノックして中へ入り話しかける。


「数日外に出る。訓練はメニューを作っておくからそれをやらせる形でいいか?」

「構わないけど、どこへ行くんだ?」

「自分の修行だ。魔術書が手に入った。その練習と、機動力の訓練をしたい。訓練場じゃ狭すぎるから荒野辺りまで行ってくる。」


そう。貰った魔術書が面白そうなので、早く試したくてうずうずしている。

身体強化・ロケットエンジンを強化できそうなので、やるしかないだろう。


「そうか、わかった----」


ばんっ

騒がしい足音とともに、人が入ってくる。


「リーダー、大変だ。」

「何かわかったのか?」

「はい、最近の魔物の発生は、大進行の前触れだったんだ。森の中心地辺りに大量の魔物が集まっている。ゴブリン・オーク・オーガ・ジャイアントスパイダー・フォレストウルフの混成隊だ。上位種も多数確認できている。総数は把握しきれないが、一万に近い数だと思われる。」

「わかった。ギルドへの報告は?」

「別の者が行っている。」


森に調査しに行っていたチームだろうか?一万は多いな。


「ハヤトくん。君はどうする?」

「すぐに動くわけじゃないんだろ?なら修行が先だな。決めた事からやらないと調子が悪い。ある程度形になったら帰ってくる。」

「面倒な性格だな。」

「そうだな。修行は明日の早朝から始める。まぁ、丁度よかったと思うけどな。強くなったクランメンバーで何とかしておいてくれ。」

「わかったよ。君も習得したらすぐ戻ってくるように。」

「あぁ。」


荷物をまとめ。夜明けとともに修行に出発した。

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