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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
35/186

式典

「すごい人の数ですね。ハヤトさん。」


王宮の前の広場はかなりの人でごった返し、ものすごい熱気に包まれていた。


「・・・そうだな。しかしお前ら、いい加減にしろよ・・・俺を一人にさせる気ないのか。」

「まぁまぁ、みんなでわいわいしてる方が楽しいじゃないですか。」

「ハヤト、テメェまさか孤高の戦士でも気取ってんのか?」

「そうよ、いつもぐちぐち言って根暗っぽいわね。」

「覚えてろよ、アレンにリンカさん。次回の訓練は地獄になる。」

「ま・・・まて、悪かった。調子に乗った。」

「えぇ、謝罪するわ。」

「ダメだ、決定事項だ。」


急にキョドリ出す2人、こうなる事は大体わかるだろうに。まぁ、わからないから言うんだろうけど・・・


「その辺にしておいてくれ、ハヤト殿。」

「そうだね、緊急出動もあるんだ。ほどほどにしておいてくれよ。」

「・・・あ・・・あんまりイジメちゃダメ・・・です・・・よ」

「わかってるよ、死なない程度にはセーブしておいてやる。」

「わかってねぇだろ!」

「ところで、この式典いつ始まるんだ?」


アイツらの晴れ舞台が見たいからこんな人ごみの中に来ているわけだが、開始予定時刻を過ぎても一向に姿を現す気配が無い。


「ハヤトさん聞いて無かったんですか?式典自体はすでに王宮の中で始まっていますよ。上位貴族の当主くらいしか入る事は出来ません。その後、このステージで演説、夜は社交パーティーです。一般人が勇者様に会えるのは演説だけですね。」

「なんだ、じゃあまだここに来る必要も無かったわけか。」

「場所取りは重要ですよ。見えなかったら意味ないですから。」


かなり気合の入ったルカのテンションに全くついていく事が出来ない俺。

それもそうだろう王族とかどうでもいいし、勇者は同郷のよしみ、もしかしたら会えるかもしれない女神様とは、何度かお茶会をしている。

ただ勇者一行の晴れ姿を見て、今度会った時にからかいたいだけなんだから、ニヤニヤは出来てもワクワクは出来ないのも当たり前だろう。


「皆は何目的でここに来たんだ?」


暇なので、時間つぶしにとりあえず聞いてみる。


「僕は勇者様ですね。きっととてつもなく強いんでしょう。人柄にも興味がありますので、演説が楽しみなんですよ。」

「私も勇者殿だな。同じ戦場に立つかもしれないから、人となりは把握しておきたい。」

「僕もだね」

「俺もだ」

「私もね」

「おいおい、皆勇者目当てかよ。」


ディアの信仰が疑わしくなってくるな。大丈夫か?


「わ・・・私は・・・女神、様・・・です・・・でも、え・・・演説には顔を出されない、かも・・・しれません。」


あぁ、そういう事か・・・

見つかった時の感じから式典でさえ、面倒臭そうにしてたから、出てこない可能性の方が高いな。

確実に顔を出す勇者の方が期待できるのもうなずける。


「女神様に会えるといいな。」

「・・・はい」


1時間くらい待っただろうか、雑談していたので、そんなに待った気はなかったが、始まるようだ。

騎士や大臣がステージに上がり、国王・王妃・王子・王女も顔を出す。

その瞬間、歓声と拍手で騒がしくなる。

あまり気にしてなかったが、国王達は人気なのだろうか?現状支持は高そうに感じる。

そんなことを考えていると、国王の演説が始まる。


「私は、アルカディア王国国王オスカー・アルカディアである。皆も知っているとは思うが。近年、魔物の増加と凶暴化によって、魔王クラスの魔物の出現がうわさされている。不安に思う者も多いことだろう。しかし、女神様の神託により、我が国が勇者召喚をするという大役を賜った。そして、無事に勇者殿を召喚する事ができ、勇者殿も此度の戦いに参加してくれる事となった。」


広場に集まった人々はまた大きな歓声を上げる。


「勇者殿は強く、皆の希望になってくれるだろう。では紹介しよう。勇者コウキ殿とパーティーの皆である。」


紹介され、大手を振って登場する光輝と雫・結衣・杏華の4人。

広場はすごい熱気に包まれる。


拍手、歓声は鳴りやまず、かっこいいだの、美しいだの口々に囁かれている。


「ハヤトさん、勇者様はイケメンですね。」

「・・・そうだな」


ルカは目を輝かせて語ってくる。


「ハヤトくん、これはライバル出現の予感がするね。」

「お前だけだ。引っ込んでろ。」

「つれないな」


やれやれといった様子で、肩をすくめるパトリック。

歓声もだんだんと弱くなり、光輝の演説が始まる。


「紹介にあずかりました、勇者の光輝です。今回召喚されたメンバーは5人、1人は諸事情があって、このステージには立っていませんが、大切な仲間の1人です。----」


1人来ていない事に会場がざわつく。

あの野郎、余計なことを言わなくても良いだろうに。


「僕たちはこの世界の人々の為に力を貸すことに決めました。勇者としてみんなの不安を消せるように、良い報告をどんどんと届けていきたいと思います。----」


この世界の人々の為、希望になるような言葉を紡いでいく光輝。

広場に集まった人も安心した様子で光輝の演説に耳を傾ける。


「----僕たちだけでは出来ない事も多々あるだろう。なので生まれや種族など関係なく、皆で一丸となって魔物と戦っていこう。」


光輝らしい演説。人々の士気を上げ、協力を仰いでいくのは得意分野と言っても過言では無いだろう。

光輝の演説も終わり、終了したかに思えた瞬間、ステージがまばゆい光に包まれる。

周囲の人々が何事かと慌てるが、光が収まりステージを見て静まり返る。

そこには神々しい光を纏ったディアが立っていた。

法衣を着て、後光が差す絶世の美女を見て、誰もが息をのみ、言葉を発する事が出来ない様子だった。

少しの静寂の後、思い出したかのように歓声に包まれる。

ステージの面々は知っていたようで、そのまま進行していく。

ステージの全員女神様に跪き、頭を下げる。


「勇者コウキ、貴方がたに私の加護を授けます。この世界を救う為、役に立てて下さい。」

「ありがたく頂戴します。必ず世界を救ってみせます。」


割れんばかりの拍手とともにまばゆい光がステージを包み込み、女神様は神界へと帰って行った。

演説はここで終わり、国王や勇者たちは、また王宮に戻り、社交パーティーとなる。


「ハヤトさん、すごかったですね。」

「・・・あぁ、そうだな。シアちゃんも、女神様が見れてよかったな」

「・・・はい」


一般人は、熱気が冷めやまぬまま、お祭り騒ぎになり、そこら中で夜が明けるまで宴会が開かれていった。


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