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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
33/186

勇者チーム2

勉強と訓練をする日々が始まって数日、冒険者ギルドという所から手紙が届いたようで、アリアと勇者一行4人が国王の書斎へと呼び出される。

国王の隣で、重臣が手紙の内容を読み上げる。

内容を聞き、4人は同じことを思った。

((((もうやったか))))

アリアは静かに、ワナワナと震えて怒っていた。


「うちのバカがすみませんでした。」


率先して雫が謝罪する。


「手紙には返済すると書いてあるし、待つことにする。ただ、彼がどんな人間なのか聞いておきたくてね。今後もこんなことが続く様であれば、対応を考えなければいけない。」

「お父様。少し優し過ぎるのではないでしょうか?あのような人にはもっとキツく釘を刺さなければ行けません。」

「問題ないよ、アリア姫。彼は出来ないことを出来るとは絶対に言わない。そうだろ、結依。」

「そ~だね~、普段やらないだけで、自分から言ったことはやるよ~」

「そこだけは信用しても良いわね。」

「そうですわね。その発言だけは、信頼できますわ。」


信頼できるという情報を得られたが、強調するように一点しかフォローしない4人に困惑する国王達。


「と・・・とりあえず、今回の件に関しては信頼できるという事がわかった。礼を言うよ。引き続き訓練に励んでくれ。」

「はい、では失礼します。」


書斎を出て訓練に戻る時、雫が話しかける。


「光輝、隼人の話を聞いたとき何でニヤけてたの?」

「僕はそんな表情をしてたかい?」

「オモチャを見つけた子供みたいな顔してたわよ。」

「そうか・・・雫は本気で魔術を使って訓練場を破壊出来るかい?」

「何よ唐突に、やったこと無いけど出来ないんじゃないかしら?」

「でも、アイツはやった。冒険者ギルドの訓練場の強度はわからないけど、荒っぽい人が居そうな場所だ、似たような頑丈さだろう。」


その発言に雫も気が付く。


「つまり、隼人はもうやる気になってるってことね。」

「おそらくね、何で戻ってこないかはわからないけど、すでにかなり強くなってる。」

「なるほど、良かったんじゃない?再戦したいんでしょ。」

「あぁ、受けてくれないだろうけどね。」


その日から、光輝の訓練に対する熱の入りようが格段に上がった。



それから数日後、訓練で魔物との戦闘をする事となり、王都の外に出る。

草原地帯を進み、森の手前で車から降りる。

ゴブリンの集団を見つけて戦闘になるはずだったのだが、ゴブリンに気づかれる前に雫が矢を数本放ち、脳天に的中、光輝も初級魔術ライトボールで攻撃し殲滅してしまった。

杏華も魔術の詠唱をしていたが、発動に失敗。テンパっている間に初戦闘が終了してしまった。


「終わっちゃったね~」

「わたくし、何もできていませんわ。」


ヒーラーの結依はまだしも、魔術師である杏華はだいぶ落ち込んでしまった。


「まあ、初戦闘だし仕方ないんじゃない?」

「的に対しても、5回に1回しか成功しないのに、魔物相手だとできる気がしませんわ。」

「大丈夫だよ~そのうち出来るようになるから~」

「そうさ。称号があるんだからすぐに出来るようになるはずさ。」

「そう、ですわね。」


励まされて、少し前向きになる杏華。

それからも、光輝は剣や魔術で、雫も弓や魔術で魔物を倒して行ったが、杏華は魔術が発動しなかったり、出来てもあらぬ方向へ飛んで行ったりと失敗しつづけ、結局魔物を倒す事が出来なかった。

結依は、誰も怪我しなかったので、応援するだけで魔物討伐の実戦訓練は幕を閉じた。



実戦訓練も終わり、また騎士団での訓練の日々が戻ってたある日、城全体があわただしくなる。


「アリア姫、何かあったのかい?」


国王から呼び出しを受けて、戻ってきたアリアに対して光輝が質問を投げかける。


「はい、一大事です。たった今教会から衝撃的な連絡を受けました。なんと、豊穣の女神様が降臨なされたそうです。」


神様降臨に驚く4人。


「女神様は普通降りて来ないんじゃなかったのかい?」

「そうよ」

「そうですわ」

「神様に会えるのか~」

「だからこそ、一大事なのです。今回御降臨されたのは、勇者様関係だと思いますので、お見えになっているうちに、勇者様のお披露目の式典と社交界を開こうと思います。もっと後に予定していましたが、今を逃す訳にはいきませんので、式典まで作法とダンスの練習に力を入れていきます。」

「えぇ~」


きっぱりと言い切るアリアに、ダンスに不安のある結依がガックリと肩を落とす。


「結依さん、せめて基本ステップだけでも一曲出来るようになってくださいね。」

「はい~」


その日から、王宮は式典の準備、パーティーの招待とあわただしさを増し、ありとあらゆる手段で地方の貴族当主と連絡を取り合っていた。

女神本人にも式典への参加をしてもらう為、教会に手紙を送り女神様との謁見をとりつけ、国王自ら動いて、参加の承諾を得る。

何もかもが、上手く進んでいたのだが、忘れ去られていた存在が、行方不明になっていた。


「メンバーの1人、ハヤトくんと連絡が取れないそうだ。」


国王の書斎に呼び出され、突然の発言に戸惑いを隠せない4人。


「すまない。言い方が悪かったか。危険なものではなく、面倒くさいと言って姿をくらましたらしい。」

「うちのバカがすみませんでした。」


またも率先して謝罪する雫。


「隼人こういうの嫌がるよね~」

「笑い事ではありません!あの人は何をやっているのですか!」


勇者組はやれやれといった態度だが、アリアは全くそうではなく、完全にキレていた。


「アリア姫、落ち着いてくれ。こうなったらアイツは式典が終わるまで出てこないだろう。時間が無いのであれば、もう居ない者として扱った方が良い。」

「そうですか。」

「仕方ない、今から合流できたとしても、作法やダンスの練習を終えるのは厳しいだろう。式典は4人で出てもらう事とする。」


この瞬間に隼人抜きで式典をすることが決定した。


「隼人さんはさすがですわね。」

「そ~だね~」

「異世界でもブレなさすぎよ、アリア様は怒るし気が気じゃないわ。」

「予想できた未来ではあるけどね。異世界で1人にしてしまったのがそもそもの原因だろう。」


そんな意外にも呑気な勇者一行も式典が近づくに連れて、忙しくなっていく。

式典・パーティーの服や、勇者一行としての装備を全て仕立て、式典のセリフの練習、動きのリハーサルなど、やる事は盛りだくさんだった。

そんな日々があっという間に過ぎ、結局隼人は見つからないまま、式典の当日を迎える。


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