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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
32/186

勇者チーム

隼人と別れてから王宮に戻り休憩中に雑談する4人

「隼人大丈夫かな~」

「大丈夫でしょ。怠惰だけど、わりとしっかりしているわ。」

「僕も、雫の言う通りだと思うよ。アイツはしぶとく生き残るタイプだ。」

「そうですわね。そのうちふらふらと帰ってきますわ。」

「だといいけどな~」


四人は、王宮へ戻ってからこの世界についての勉強となった。

この世界の常識、礼儀作法、これから各国をまわるにあたって必要となるであろう、その国の特徴を学ぶ。


座学はそんなところで、パーティーの為のダンスの練習や戦闘訓練もやっていくらしい。


今日は午前中が教会の祝福でつぶれてしまったので、さわりだけ教えてもらって解散となった。


部屋にて


「ダンスとかできるかな~雫ちゃん」


貴族のパーティーでダンスがあると聞いて、運動神経があまりよくない結依は、不安とやりたくなさで、ベッドに突っ伏す。


「光輝と杏華は大丈夫そうだけど、結依は頑張らないとダメかもね。」


「僕たちは社交会でダンスをやるから、基本は出来てるはずだけど、もしこの世界のダンスが別物なら、一から覚え直さないといけないね。」

「そうですわね。基本ステップくらいならお付き合いしますわよ、結依さん。」

「杏華ちゃんありがと~。雫ちゃんも頑張ろうね~」


こうして、午前中に座学、午後から実技といった形で四人の異世界生活がスタートする。


礼儀作法は、4人ともそつなくこなした。

日本と違う所は多々あったが、相手に敬意を払うという心は4人とも持っていたし、作法の起源や理由を聞けば、ある程度はすぐに形になった。

各国の特徴は、普通に地理や世界史の授業のようで、決して不出来ではないメンバーなので、こちらもそつなくこなし、どんどんと覚えていった。


座学は、4人全員が特に詰まることは無さそうである。

午後からは、実際に体を動かす事となる。

社交ダンスの練習がスタートして、全員に1人づつ先生が付いた。

ダンスでの基本のステップは、元の世界とほとんど変わらないみたいで、光輝と杏華はたった1回でほぼ完璧に出来るようになってしまった。

アリア王女がスゴくキラキラした目で、一緒に踊りたそうに光輝を見ていた。

雫も何度か練習するうちに、コツが掴めてきたようで、つたないながらも上達していく。

結依は、皆の予想通りで、リードの先生の足を踏み、つまづき、転倒していた。

先生達に何度も励まされながらステップの練習をするが、今日の練習時間をいっぱいに使ってもほとんど上達することはなかった。


「できないよ~。雫ちゃ~ん。」

「よしよし、苦手分野は誰にだってあるわ、基本のステップが出来れば格好はつくから、一緒に練習しよ?」

「うん」


ダンスの時間が終わり、休憩に入ったとたん結依が半泣きになりながら雫に抱きつく。

雫もこうなるだろうと予想はしてたので、結依を受け止めて慰める。


「皆手伝いますし、大丈夫ですわ。」

「そうだよ、リードはある程度出来るから、パートナー役は僕に任せると良い。」

「ありがと~。杏華ちゃん、光輝くん。」


波乱のダンスは終わり、魔術の時間が始まる。


魔術の基礎をアルカディア王国の魔術顧問レオンに教わる。


「魔術は四元素を元にした、火・水・風・土の4つの基本属性。光・闇・時間・空間の4つの特殊属性。そして、どこにも分類されない属性を持たない無属性があるのじゃ。」

「無属性というのはどんな魔術なんだ?」

「無属性は、魔道具のオンオフや服をキレイにするクリーンといった属性を持たない魔術の事じゃよ。勇者殿。」

「なるほど。」

「魔術の発動は基本的に詠唱が必要じゃが、詠唱の言霊は皆同じではなく、テンプレートを自分なりにアレンジするのが普通じゃ。頭の中で、そのプロセスを再現出来れば無詠唱で発動出来るようになるのじゃ。まずは、初級魔術の詠唱を教えますので、的に向かって放ってみて欲しいのじゃ。」


詠唱を教わり、光輝と雫と杏華は手を的に向けて詠唱をする。

結依はレオンがナイフで自分の指を少し切り治癒魔術で治す練習をする。

光輝・雫・結依は数回詠唱してコツを掴んだのか、すぐに初級魔術は使えるようになった。

しかし、杏華は何度やっても一向に魔術を発動出来なかった。


「なぜ、わたくしだけ魔術が使えないのでしょうか?」

「お三方が、物覚えが良すぎるのじゃよ、杏華殿。普通は、何週間も練習してコツを掴むものなのじゃよ。」


すかさず杏華へとフォローを入れるレオン。


「そうですわ。皆さん優秀すぎますわ。特に結衣さんはもっと苦戦しても良いでわありませんか。」

「ちょっと~、ひどいよ杏華ちゃ~ん。」

「わたくしだけ出来ないのは納得いきませんわ。今日中に成功させますわよ。」


そう意気込む杏華であったが、この日に魔術が成功する事は無かった。


翌日からは、ダンスの時間が減り、皆分かれて、それぞれのスキルのある武術も教わり始める。

杏華と結衣は、苦手な魔術とダンスに時間を使うことになったが、光輝と雫は騎士団に混ざって剣や弓の訓練が開始された。

元々、日本でやってきた事で、こちらの世界に召喚された際、さらに強化されているので、訓練を始めてすぐに騎士団の中に交じっていても遜色のないところまで強くなってしまった。

数日でこの状況なので、飛び抜けて強くなる日もそう遠くないだろうと、色々なところで囁かれ始める。


午後の実技が終わって、夕食を食べた後、皆で集まって会議をするのが日課になっていた。

会議と言っても、その実態はただの雑談メインのおしゃべり会なのだが。


「まったく出来ませんわ。魔術を発動しようとしても、何も起きませんわ。」

「そ~だよ~。いまだに先生の足踏んじゃうも~ん。」


出来ない組2人が愚痴を漏らす。


「杏華は力が入り過ぎてるんじゃないかい?」

「タイムラグが在るのですわ、頭の中では出来ていて発射しているのに、実際はまだ魔術が完成していないと言いますか、その2つのタイミングがバラバラで、魔術が発射される前に消滅してしまいますの。」


数日間の訓練で魔術がうまく使えない理由まではたどり着く事が出来たのだが、問題はこれを、まったく矯正出来ない事だった。


「気持ちが前に出過ぎちゃってるのかもしれないわね。もっとゆっくり構えて詠唱してみたらどうかしら?」

「そうですわね。明日は焦らずゆっくり詠唱してみようと思いますわ。ありがとうございます、雫さん。」

「結衣はまず足を踏まないようにステップをしないといけないわね。付き合ってあげるから一緒に頑張るわよ」

「そうだね。僕も前に言った通り、いつでも練習に付き合うから、遠慮なく言ってくれよ。」

「ありがと~結衣ちゃん、光輝くん。」


2人とも非常にゆっくりなペースで徐々に徐々に上達していく。

光輝と雫は夜な夜な根気よく何度も2人にレクチャーする日々が始まったのであった。


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