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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
29/186

クラン

「今日はハヤトさんのサラマンダーを売りにいくだけなので一緒に行きましょう。その後で、クランに案内しますね。」

「・・・あぁ、頼む。」


俺なんか連れてっても楽しくないだろうが、スゴく喜んでる感じがするのは気のせいだろうか?

寝床が見つかるのは非常に嬉しい事なのだが、倫理観的なところで大丈夫なのかが問題だ。

ルカは男だが、線の細い体格と中性的な顔立ちで、おそらく熱烈なファンが多いだろう。

付いて行って相部屋になったら、俺は刺されないだろうか?


「では、ギルドに行きましょう。サラマンダーであの服屋の代金くらいまかなえるでしょう。」

「そうだな」


ギルドへ行き、特に問題もなくサラマンダーを換金することができた。

そして、ルカのクランの本拠地へと向かっていく。


「ところで、ルカの部屋に泊まって大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ、ハヤトさんならリリィさんの信頼もありますし、リーダーの許可も貰えるはずです。なぜか僕の部屋は2人部屋なのに誰も入ってきてくれないんです。」


少し肩を落とすルカ、違うきっとそうじゃない。

やっぱり宿泊の許可がとれたところで、俺は刺されるんじやないだろうか?


「ルカは嫌われてない。理由は何となくわかる。ただ、俺も泊まれないかも。」

「えぇ!?そうなんですか?」

「たぶん」

「一度お願いしてみますね。あ、あそこです。」


ルカが指さした方を見ると、豪邸が建っていた。


「ずいぶん豪華なお屋敷だな。」

「昔、とり潰しになった貴族の屋敷をリフォームしたらしいです。」


門には、クランのシンボルマークの描かれた旗が掛かっており、結構入りにくい。

ルカはスイスイと進んでいく。俺は敵地に単身乗り込む気分で、敷地へと足を踏み入れる。


「ただいま戻りました。」

「お邪魔します。」


玄関をくぐった先は、ロビーになっていて、2グループほど会話に花を咲かせていた。


「ルカくんおかえり!後ろの人は?」

「この間、一緒に討伐遠征に行ったハヤトさんです。」


俺の名前を聞いた瞬間、ロビーに居た全員が少し嫌悪感のある視線を向けた後、ヒソヒソと話をしている。

いきなり嫌われるようなことしたか?思い当たる節が全く無いんだが。

よくよく耳を澄ましてみると、雑魚狩りやら腰巾着やら、最近付いたらしいあだ名を口にしていた。


「すみません、ハヤトさん。」

「言いたい奴には言わせておけば良い。行こうか。」

「はい。」


テンションの下がったルカの屋敷の奥へと進んでいく。

一番奥の少し豪華な扉の前で立ち止まり、ノックをする。

返事があり、扉を開けて中へと入っていく。


「「失礼します。」」

「おかえり、ルカくん。後ろの彼は誰かな?」


中に居たリーダーが問いかけてくる。

リーダーは20中盤ほどの年だろうか?銀髪のイケメンだった。


「こちらは、先日一緒に討伐遠征に行ったハヤトさんです。」

「隼人だ、よろしく。」

「僕は、パトリックだ。クラン・竜の息吹のリーダーをしている。やっぱり世間の噂は当てにならないな。歓迎するよ、ハヤトくん。」


机を挟んで、握手を求められる。こちらも右手を差し出し応答する。

力強いな、握手じゃなくて手を握り潰しにきてるだろ。最近こんなんばっかりか。


「今日は、お願いがあってきたんだが。」

「何かな?」

「あ。ハヤトさん、僕が説明しますね。」

「・・・あぁ、頼む。」


ルカが、割って入ってきて、パトリックに現状の説明してくれる。


「なるほど、事情はわかった。僕一人では判断できないね。ルカくん、リリィくんを呼んできてくれないか?おそらく訓練場にいるだろう。」

「わかりました。」


早足で出ていくルカ。

部屋には、俺とパトリックが残された。


「さて、キミはルカくんと付き合ってるのかな?」

「・・・はぁ?付き合ってねぇよ。」


確かにルカはかわいい方だが男だし、恋愛対象ではないだろ。


「そうか、キミもまだか。実は、僕はルカくんの事がが好きなんだ。」


・・・とんだ変態じゃねーか。何でいきなりそんなことカミングアウトしてきたんだ?

そういうことにオープンな人間なのか?

だとするとよくこんな人数の人が付いてくるな。こんなんじゃ、まったく人望無くなるだろ。


「・・・ルカを変な道に引きずり込むなよ。」

「すごい独占欲だね。しかし、ルカくんはまだ、誰のものでもない。正々堂々と戦おうじゃないか。」

「ちょっと待て、俺はノーマルだぞ。」


とんだ誤解じゃねぇか!ソッチ系の人だと思われてんの?


「隠さなくても良いじゃないか!同族は匂いでわかるものだよ。キミもルカくんに、かわいらしい服を着せて恥じらう顔を愛でたいんだろう?」


・・・レベルたけぇな、ドン引きだよ。


「お前の嗅覚は腐ってるから、今すぐ鼻をちぎって捨てたほうがいい。」

「まだ隠すと言うのかい?なかなか強情だね。」

「・・・・・・」


ルカ、頼むから早く戻ってきてくれ。

コイツの暴走を止められない。

願いが届いたのか、ちょうど扉がノックされる。


「どうぞ。」


ルカとリリィさんが入ってくる。助かった。


「リーダー、リリィさんを連れてきました。」

「失礼します。パトリック殿、何かご用ですか?」


入ってきたリリィさんと目が合う。


「お邪魔してるよ、リリィさん。」

「ハヤト殿、とうとうクランに入ってくれる気になったか?」

「違うよ、リリィくん。ハヤトくんは、宿が無くなってしまったそうだ。しばらく泊めてほしいそうなのだが、僕では判断しきれなくてね。リリィくんに、信頼できるかを聞きたかったんだ。」


パトリックは、二重人格なのか?急にまじめな感じになったぞ。

さっきのふざけたパトリックはどこ行ったんだ?戻ってきてほしくはないけど。


「そうでしたか。でしたら問題ないと言っておきます。」


どうやら、リリィさんは、味方に付いてくれたようだ。これなら泊まれる方に進んでいく気がする。


「そうかわかった。では宿泊を許可しよう。ただし条件がある。」

「何だ?」


条件か、無理難題じゃなければいいか。ルカ関連かもしれないな。


「最近、冒険者パーティーの壊滅が数件確認されている。森に強い魔物が住み着いた可能性がある。うちのクランにも、調査要請が来て、1パーティーが調査に出ている現状だ。よって、初級から中級クラスまでの、戦力向上を計り、訓練場で強化講習をしている。キミには講師として若者を指導してほしい。と言うのと、ルカ君との相部屋は無しだ。」

「なるほど、良いよ。訓練メニューを作っておくよ。明日からでいいのか?」

「構わないよ。よろしく頼む。」


女神人気のほとぼりが冷めるまで、クラン・竜の息吹で、教官をしながら寝泊まりさせてもらえる事となった。


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