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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
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ギルドの休憩室の雑魚寝はギリギリ寝っ転がれる程度のスペースしかないほど、ぎゅうぎゅう詰めで、結局一睡もできなかった。

だって、周りは修学旅行の夜よりも騒いでるし、酒くさいし、寝相悪いし、寝言・歯ぎしりはうるさいしで、踏んだり蹴ったりどころの騒ぎではなかった。

仕方なく、俺も、酒を飲みながら一夜を明かし、日課を済ませてから、朝一で教会に行く。

どうやら、昨日の夕方ほどは混んでいないみたいだ。それでもいつもとは比べられないほどの人が押しかけていた。

礼拝堂へとたどり着き、ディアに祈る。

今は地上に降りてきてるみたいだし、届かないかもしれないが、連絡手段が無いしな。

まさか、こんな展開になるとは誰が予想しただろうか。

というか何で見つかったんだろうか?

ディアのおっちょこちょいか?


(そんなわけないのよ。)


うぉ!ビックリした。

突然聞こえたディアの声に周囲を確認してしまう。


(テレパシーですよ。)

(そんなこと出来たんだ。今は降りてきてるんだよな?)

(そうですよ。マリエルとお茶を楽しんでいたら教会の司教が入ってきてしまったのですよ。乙女の部屋に入るなんて教育がなってないのですよ。)


プンプンと怒るディア。

そんな理由で見つかったんだ・・・。

タイミングが悪かったんだな。


(今はマリエルさんと一緒にいるのか?)

(えぇ、いますよ。)

(勇者のお披露目式の話って来てるか聞いてもらって良いか?)

(私は便利屋では無いですよ。)

(お願いします女神様。昨日、教会からつまみ出されてるんだ。マリエルさんの部屋とか絶対に辿り着けない。)

(仕方ないですね。特別ですよ。)


今度、落ち着いたらお茶菓子買って行こう。

お披露目式の話が来ていたら王宮に出向いて練習が必要だろう。

皆に勇者だってばれるのも非常に面倒くさい。

出来れば参加しない方向で話を進めたいんだが、どうなる事か。


(ハヤト様、王宮から教会の方にお披露目式の話は来ていないそうですよ。)

(そうか、ありがとう。)


よっしゃ!来ていないか!

確実に面倒くさそうなイベントをパスできたぞ。

先日のギルド破壊の事もあって、ついにハブられたか。


(すごく喜んでいますね。私は式典の準備があって忙しいのですよ。)

(ガンバレ、当日は見に行くよ。俺はお披露目式の連絡を受け取らないように、当日まで身を隠すから宜しく。マリエルさんにも言っておいて。)

(ズルいですよ。)

(ディアも断ればいいだろ。誰も文句言えないだろうし。)

(女神としてそんなことは出来ないのですよ。)

(女神様ってのも大変だな。当日、ディアの活躍を楽しみにしてる。ジャマしちゃ悪いからもう行くよ。)

(落ち着いたらありがたいお言葉をあげますので、覚悟しているのですよ。)


非常に嫌なセリフを残してテレパシーは切断された。

持っていくお茶菓子は最高級のモノにしておこう。

せっかく教会にいるので、フィーレにも挨拶して行こう。

教えてもらった上位魔術も役に立ったことだし、お礼だけでもしておかないとな。

フィーレは神界にいるので、真っ白な空間へと視界が切り替わる。


「こんにちは、フィーレ」

「・・・・・・こんにちは」


読んでいた本から目を離し、こちらに向き直って挨拶してくれるフィーレ。


「この前教えてもらったプロミネンスすごかったよ。助かった。」

「・・・・・・ん・・・魔術、上手になった。」


そうなのか?あんまり実感がないな。魔力コントロールの練習はしてるけど、コントロールばっかりで魔術自体の上手さってのがいまいちピンとこないな。

だけど、魔術の女神様が言ってるんだから、上達しているんだろう。


「フィーレに褒められると調子に乗りそうだな。」

「・・・・・・ダメ」

「わかってるよ。練習は怠らないから。」

「・・・・・・ん」

「色々教えてもらったし、何かお礼でもしたいんだけど、欲しい物とかあるか?」

「・・・・・・お茶菓子」


フィーレもお茶菓子が良いのか。

女神様はみんなお菓子好きなのだろうか?


「美味しい物を探しておくよ。」

「・・・・・・ん」

「そういえばこの間、魔族って言葉を聞いたんだけど、どんな種族なんだ?」

「・・・・・・・魔族の本・・・ある」


歴史の本のような物を持ってきてくれるフィーレ、かなり分厚いけどこれ読まなきゃいけないのか?


「・・・・・・ここ」


本を開き、魔族の事が書いてある部分を指差してくれる。

魔族とは、この世界にいる種族の1つで、その容姿や強さから悪者扱いされていて、迫害されていた。

そして、大昔に非常に強い魔王が現れた時、魔王側に着いたことによって完全に敵認定されてしまい、そのほとんどが倒され魔王討伐後も残党として殺されていった。

今も細々と生きているようだが、今でも見つかれば魔族と言うだけで、討伐対象として攻撃されてしまう種族である。

ざっくりこんな感じの事が書いてあった。


「酷いな。」

「・・・・・・ん」

「大体わかったよ。」

「・・・・・・助けてあげて。」

「もちろんだ。」


結局、最初に迫害していた人達が悪者だろう。

シアちゃんのような人たちばっかりだったら、今の魔族は悪くないだろう。


フィーレとも別れて昼食をとった後、本当に泊まる所が無いのかと、宿屋を探し王都を歩き回る。


「ハヤトさん。」


後ろから女の子のようなソプラノボイスで俺を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、ルカが笑顔でこっちに駆け寄ってきていた。


「ルカ、どうしたこんなところで。」

「買い物ですよ。今回の旅で使ってしまったものの補充です。ハヤトさんこそどうしたんですか?」

「俺は、宿探しだな。泊まる所が無くなっちまって。」

「そうだったんですか・・・。良い所がありますよ。泊まれるかはわかりませんが、部屋は空いてます。」

「本当か?紹介してもらえると助かる。」

「はい。クランにある僕の部屋です。」


・・・・・・はい?


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