帰還
ひとまず、ディアの事はおいておこう。
先に、今回の報酬の配分をしなければ旅も終われない。
オークの時にも行った倉庫に向かう。
すでにルカが今回討伐した魔物を出して待っていた。
数日の旅だったので、結構な量の魔物が並べられていた。
「この状態で、取り分だけでも決めようか。ハヤト殿はサラマンダーの素材が欲しいのだろう?」
リリィさんが率先して仕切ってくれる。こういうのは先に決めておかなければいけなかったのだろうが、完全に忘れていた。思い出したのはサラマンダーを狩り始めた時なので、時すでに遅し状態だった。
「あぁ、サラマンダーと、上位種、装備をそろえる金さえあれば今のところは問題無い。」
「欲が無いな。倒した分は持って行っていいぞ。」
「そんなに貰っていいのか?」
「構わん。」
俺の取り分が、サラマンダー3匹にカオスサラマンダー1匹・その他有象無象が多数といった具合の量になってしまうのだが、確実に貰い過ぎだろう。
「サラマンダーと上位種だけで良い。今回の旅は、至れり尽くせりでだいぶ楽をさせてもらった。足りるかわからんが、メイン以外の俺が狩った魔物は全部やる。ルカとシアちゃんにでも分けてくれ。」
「そうか、ではハヤト殿が倒したサラマンダー3匹とカオスサラマンダー1匹を持って行ってくれ。残りはここで売ることにする。」
取り分が決定し、俺のモノ以外は換金されることとなった。
金額の計算が終わるのを待っていると、入り口からずかずかとハゲが入ってきた。
久しぶりに見たな。どっか行ったかと思って少し喜んでいたんだけど。
「大物が大量だぜぇ!!」
テンション高いな、そんな儲かったのか?
まぁ、イライラしていないので、絡まれなさそうだから良しとしよう。
しかし、何があるかわからんから、気配を消して、置物のように、置物のように・・・
「おいクソガキ、ここで何やってんだ?」
置物のように・・・置物のように・・・
「おい!無視してんじゃねーぞ!!」
置物のように・・・ん?このハゲ俺に言ってんのか?
「テメェ!ふざけてんのか!?あぁ!?」
「騒がしいな、どうかしたのか?」
「クソガキが調子に乗ってんじゃねーぞ!!ここはお前みたいなのが、ゴブリンの魔石を持ってくるところじゃねーんだよ!!」
「そうか、もうすぐ俺たちの査定が終わるから、待っててくれ。」
「魔石だけならカウンターで済むだろうが。ここは俺たちみたいな、大物を仕留めたモンが来る所なんだよ。」
自分のバッグをポンポンと叩き、得意げな顔をするハゲ。
あのバッグは、マジックバッグか?こいつらがどれだけ金を貯めてたか知らんが、実力的にすぐに買える額を貯めるのは、不可能だろう。
しかし、このハゲ共は、俺がどんな目的でここに回されてるのかわかってないみたいだ。
面倒くさいし、いつもみたいに誰か来てこいつらを追い払ってくれないかな?
「ハヤトさんお待たせしました。もうちょっとで査定が終わるみたいですよ。」
ルカ登場。
・・・ダメださらに絡まれる気しかしない。今日は運が悪いな。
「そうか、ゆっくり待つか。」
「おいおい!何だその男か女かわからんようなヤツは!!」
「・・・おいハゲ、俺の事は何と言おうと気にしないが、友人を悪く言うなら俺も怒るぞ。」
「わっはっは!腰抜けが怒るとどうなるんだ?二人でお似合いコンビじゃないか。」
「ハヤトさんはーーーー」
ルカが怒ってくれるが、手で制する。
こんな雑魚とケンカしたところで、利点が全く無い。
「ルカ、席を変えよう。ここは騒がしい。」
席を立ち、ハゲどもに背を向けて部屋の隅の方へと歩き出す。
「ハヤトさん・・・」
ルカが何か言いたげだが、面倒くさくなりそうだから飲み込んで貰おう。
「悪いな、ルカ。」
「いえ・・・」
隅の方まで来たところで後ろから声がかかる。
「無能同士、雑魚でも狩って小銭集めてろよ。」
ルカを悪く言うなと言ったはずなんだが・・・
ほんの一瞬、1秒にもみたない時間、ハゲ一味に本気で殺気を放つ。
濃密な殺気にさらされて、冷汗をかきながらも歯を食いしばって正気を保つハゲ。
愉快な仲間たちは、苦しい表情で胸のあたりで服を握っていたり、口元をおさえて吐き気をこらえたりしていた。
ハゲ達は、殺気を放った人物がわからず、あたりをキョロキョロしていた。
「どうかしたか?」
俺ではないような言いぐさで、白々しく声をかける。
「な・・・なんでもねぇよ。お前ら行くぞ。」
焦った様子で退散するハゲ一同。
丁度そこへリリィさん達が合流する。
「トラブルか?ハヤト殿」
「いや、何でもない。また絡まれてただけだ。」
「そうか、大丈夫だとは思うが気を付けろよ。鍛冶師の紹介は今日済ませるか?」
「そうだな。早く装備をそろえたいし、可能であれば今日行きたいところだ。」
「わかった。ではそのまま行こうか。帰りたい者は解散で良いぞ。」
リリィさんがそう言ったが、結局全員でいくこととなった。
閑話
その夜、討伐した魔物を換金し、今日も酒場で打ち上げをするハゲ一味。
最近羽振りが良く、装備も一新され、討伐する魔物も1ランク上がって絶好調のパーティーである。
「冒険者は最高だな!胡散臭いやつだったが、儲かってしょうがねぇ!」
「アニキ、あんまり大声で言っちゃダメっすよ!」
「あぁ!あまり聞かれるのは良くない。」
「いいたくなるのも分かるけどな。」
「あぁ!」
「わりぃな!ところで、結局あの腰抜けは、リリィさんとクエストに行ってたって事か?」
「そうじゃないっすか?」
「装備と言ってたから、討伐を手伝ってもらってたんだろう。金で雇ったとかだろう。」
「クソが!どっかの貴族のボンボンかなんかか?」
「かもしれないっすね。」
「腰抜けで、雑魚ばっか狩ってるお坊ちゃまの寄生虫か。飛んだお笑いものだな。わっはっは!」
「そおっすね!」
大声で盛り上がりながら悪口に花を咲かせるハゲ一味。
その会話を聞いていた人たちによって、ハヤトのあだ名がまた2つ増える事となった。
寄生虫・お坊ちゃま
借金まみれのお坊ちゃま誕生である。
閑話休題




