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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
25/186

討伐完了

面倒な事になった。

後を気にしつつ戦うとか結構大変だぞ。

まぁ、やるしか無いんだけど・・・

この際だからポジティブに考えよう。

俺が取ってこなければいけないサラマンダーは2匹、もし取り分が等分されるならこのパーティーで12匹倒さなければ俺にノルマ分回ってこない。

今、3匹目を狩っているところなので、残り9匹だ。

俺の目の前には2匹いて、リリィさんの方にも2匹来ていた。まだ5匹足りていない。

探して倒しにいく気でいないとダメだな。

取らぬサラマンダーの皮算用をして、やる気を出していると、背後のアレンとリンカさんの方から火柱が上がる。


「熱っ!」

「ッチ、糞が!!」


後をチラッと見ると、サラマンダーの背中の炎が激しく燃え上がり、口からは火炎放射の様に火を吹いていた。

マジか、サラマンダーって火吹くの?身体の色も若干赤くなり、第二形態といった風貌になっている。

リンカさんが水の壁を出して防いでいるが、だいぶキツそうだ。

リリィさんに目配せをすると、まだ大丈夫といった視線が返ってくる。


前に向き直ると俺担当のサラマンダーが2匹共こちらに向けて走り出していた。

後ろのサラマンダーにファイヤーボールを放ち、顎の下辺りで爆発させて爆風でひっくり返す。

もう1匹のサラマンダーの突進、噛み付きを前宙するように跳んでかわす。ついでに拳を振り下ろして、鎧通しで攻撃をしてみるも、首を振って回避される。

そのまま一回転して着地、サラマンダーも止まってこちらに振り向こうと体を動かすが、その前にしっぽを掴み取り、背負い投げの要領で投げ飛ばした。

サラマンダーはそのまま背中から岩に激突した。

爆風で飛ばしたサラマンダーが狙いを俺から変えないようにファイヤーボールを近くの岩や地面にぶつけて弾けた礫で攻撃しながら、投げたサラマンダーへと一気に詰め寄る。

リリィさんがやったように腹側の喉元めがけて左手の貫手で一突き。

強化と纏でを併用し、音速を超えずケガしない程度に強化した炎の突きは、サラマンダーの喉元を貫通し、後ろの岩まで突き刺さった。

倒してすぐにもう1匹の方へ向き直ると怒った様子でこちらに走ってきていた。


「第二形態になってんじゃん。」


射程に入ったのかサラマンダーは火を吹いてきた。


「プロミネンス」


火属性・上級魔術・プロミネンス

こちらも火炎放射のような魔術を使う。

プロミネンスと火炎放射では威力が段違いだったみたいで、プロミネンスはサラマンダーの本体ごと火炎放射を呑みこんだ。


「上級魔術強すぎだろ。魔力ごっそり持ってかれたけど。」


1人で呟きながら自分でやった炎を遠い目で見る。

少しして火が消えた後、燃え盛ってた中心部で虫の息になってるサラマンダーを発見。

さすが火属性Bランクの魔物、あの業火で全身火傷で済んでいるみたいだ。

剥ぎ取り用のナイフを持ってサラマンダーに近づき、止めをさす。


リリィさんの方を見ると、1匹目を倒したようで、2匹目と対峙していた。こちらはフォローは要らないだろう。

アレン、リンカさんペアを見ると、戦い方が変わっていて、リンカさんの水の魔術でサラマンダーの背中の炎を消火して、動きの鈍った所を、アレンが攻撃するという方向にシフトしていた。

サラマンダーもおそらく変温動物で、体温維持の為に燃えていないとダメなのだろう。消火されると途端に動きが鈍くなっていた。

これがサラマンダーとの戦いの正攻法なのだろうか?

安定してダメージを与えていた。

とりあえずは大丈夫だと思った時、ふと視線を感じた気がした。

辺りをキョロキョロと見回してみると少し登った岩場に一瞬、黒いしっぽのようなものが見えた。

この山にサラマンダー以外であんな強そうなやついるのか。


「ハヤト殿、どうかしたか?」


考えに耽ていると戦い終わったリリィさんから声がかかる。


「この山に、黒い魔物はいるか?それもかなり強いやつ」

「黒い魔物はいないな。強いとなると、火竜が山頂に降りてくる位だな、最近は近くにいる報告もないから安心だろう。」

「黒いしっぱが見えたんだが、サラマンダーに上位種っているのか?」

「・・・いるぞ、カオスサラマンダーという黒いサラマンダーの上位種が。」

「そいつかもな。」


カオスサラマンダーだと?そんな仰々しい名前に進化するのか。

アレンとリンカさんのチームもサラマンダーを1匹倒し終わったようで、こちらに合流してくるが、2人とも激闘だったようで、肩で息をしている。

おそらく今回のサラマンダー討伐はここで終了となるだろう。

個人的なノルマを達成していないので、上位種を狩りに行けないだろうか?


「リリィさん、ちょっと様子見て来て良いか?」

「戦う気なのか?」


リリィさんから訝しむような視線を向かられる。

俺はリリィさんから戦闘狂だと思われていないだろうか?

確かにリリィさんの前で好戦的な態度ばかり取っている気もするが、まったくの誤解である。


「勝てそうならやるつもりでいる。負けそうなら様子だけ見て帰ってくる。」


できれば討伐しておきたい。上位種ともなれば、装備も一気に充実するだろうし、借金生活ともおさらば出来るかもしれない。


「わかった。先に馬車に戻っている。」

「悪いな。」


山を登って行こうとして、皆から背を向けるとアレンから声がかかる。


「オイ!テメェはなんで息が切れてねぇんだ?」

「リリィさんもそうだろう。鍛え方が違うんだよ。」


リリィさんは汗を搔いているものの、息はほとんど乱れていない。


「ッチ!」


今度こそ山を登って行き、岩陰からそっと覗いてみると、黒いサラマンダーが1匹いた。

普通のサラマンダーより大きく、全長5メートルほどはありそうな巨体だ。突起もよりごつごつしていてなんだか見た目も強そうな雰囲気である。

どうやら1匹だけで、取り巻きは居なさそうである。先ほどの援軍が取り巻きだったのだろうか?

どちらにせよ好機なので、奇襲で仕留める事とする。


息を殺し、気配を消す。ゆっくり動き、炎のブースターの準備をする。

機を見計らい一気にカオスサラマンダーへと肉薄する。

火傷を恐れず、ブースターを使い鎧通しで頭に一撃で終わる予定だったのだが、カオスサラマンダーは俺の攻撃を知っていたかのように、首をひねって躱す。

奇襲で仕留められず、対峙してしまう事となった。

カオスサラマンダーの背中に蒼い火が灯り、一気に燃え上がる。

上位種は火の色まで変わってくるのか。


第二形態となったカオスサラマンダーとにらみ合いが続き、お互いほぼ同時に走り出す。

カオスサラマンダーは、牽制球のように蒼いファイヤーボールを何発も放ち迫ってくる。

こちらも半歩遅れてカオスサラマンダーのファイヤーボールに、ファイヤーボールをぶつけて相殺していく。

クロスレンジまで近づき、乱打戦が始まる。

カオスサラマンダーの噛み付き、ひっかき、しっぽ攻撃をかいくぐり、こちらも踏みつけ、ローキック、突き下しで攻撃する。

カオスサラマンダーの歯と爪はよく見ると、纏いを使っているように見える。食らうと大変なので躱す事を意識しよう。

乱打が続き、カオスサラマンダーの動きにも慣れてきたので、しっぽ攻撃のタイミングに合わせて、しっぽをつかみ取る。

カオスサラマンダーを振り回し、地面に叩きつける。何度か叩きつけたところで、しっぽがちぎれ、本体が飛んでいく。

おそらく自分で切り離したのだろう。さすがトカゲである。

カオスサラマンダーは地面に着地すると直ぐにこちらに走り出す。

今度は蒼い火炎放射を出しながら進んでくる。

先ほどと同じように、プロミネンスで焼き尽くそうとするが、さすが上位種、多少焦げただけで、ほとんどダメージがない様子だった。

尚も火炎放射で攻撃してくるカオスサラマンダーに一直線に突っ込む。

左手を前に突き出し、纏いと身体強化で火炎放射をガードしつつ、インファイトの間合いまで近づき、右のフックを放つ。

拳ではなく、人差し指だけを立てた一本貫手でカオスサラマンダーの左目を抉る。

カオスサラマンダーは痛みにのたうち回り、背中の炎が火力を増す。

近くに立っているだけで火傷しそうな業火の中とどめの左スマッシュ、こちらは普通の貫手で、首の頸動脈をめがけて炎をまとった亜音速の一撃。


「っつあ!!」


斜め下から救い上げるような一撃は、カオスサラマンダーの喉元に深々と刺さり、カオスサラマンダーは力なく倒れた。

戦いも終わり、カオスサラマンダーから左手を抜き取る瞬間、

パキンッ

纏いに耐えきれず、左の手甲も寿命を迎えた。


皆と合流して、帰る事となった。

急に全身火傷して帰ってきた俺に対して、シアちゃんは少しオロオロしながら治してくれた。


「まさかハヤト殿が本当に1人で倒して来るとは思わなかったよ。」

「あんなに強いとは思わなかった。」


帰りはカオスサラマンダーと俺の話題で持ちきりだった。

リリィさんは戦いで見せた鎧通しの実戦。前回、概要は説明していたのだが、今回見たことによってだいぶ出来るようになってしまった。おかしいだろ。

アレンは実力を認めてくれたようで、過度な噛み付きは無くなった。しかし模擬戦を挑まれそうな勢いだ。おそらく色々と気に入らない所が有るからだろう。主にシアちゃん関係で。

リンカさんも魔術についてめちゃくちゃ聞いてきた。最後は上級魔術使ってたし、魔術師として聞きたいことは山ほどあるんだろう。

シアちゃんはオロオロしながら話を聞いていた。すごく安定してる。

ルカは修行の事で頭がいっぱいのようで、今後の事を聞いてきた。すごくワクワクしていたが、護身程度の技しか教えないよ。

帰りは皆と仲良くなれたようで、楽しい旅になった。

リリィさん的には大満足の結果だろう。

そんなこんなで、特にハプニングもなく王都へと戻ってきた。

王都に入る際、心なしかいつもよりも厳重にチェックされた気がする。

王都へ入っても、街中が浮足立ってるように思える。何か催し物でもあるのだろうか?

ギルドへと向かい報告がてら聞いて見る事にしよう。


「レイラさんただいま。」

「おかえりなさいませ。ハヤト様、リリィさん、アレンさん、リンカさん、シアさん、ルカさん。」

「サラマンダーの買取をお願いしたい。結構量がある。」

「では隣の倉庫の方へお願いします。」

「それと、街中が浮足立ってるんだが、何かあるのか?」

「はい、皆様が出ている間に王宮からおふれがありまして、勇者様のお披露目会があるそうなのです。当日はお祭り騒ぎになります。」

「・・・マジ?」


俺、聞いてないんだけど・・・


「元々そちらはもっと後にやるように計画されていたそうなのですが、急遽やる事が決まったのには、理由がありまして・・・。」

「もったいぶるね」

「そ・・・その、豊穣の女神様が降臨なされたそうです。それに合わせて、お披露目会の日取りを前倒したそうです。」

「・・・・・・・・・・・・は?」


たっぷり1分は固まった。

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