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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
23/186

荒地

「ここから魔物も徐々に強くなっていくから気を抜かないように。」

「「「「「はい」」」」」


リリィさんの激励と共に出発する。

魔物に襲われる事も無く順調に進み、ついに森を抜けた。

森から出ると、一気に視界が開け、目の前には乾いた土と岩、所々に灌木が生える荒地が一面に広がっていた。

魔物の気配は多少あるが、隠れているのか。擬態しているのかわからないが、姿は全く見えない。


「荒地を抜けて、奥の山まで行くぞ。」

「「「「「はい」」」」」


荒地を進み始め、魔物に何度か襲われたが、アレンはちゃんと後ろを見るようになったし、リンカさんもアレンを信じて、魔術の精度が上がってきた気がする。

肝心の俺はと言うと、アレンとリンカさんでの、2人がほとんどの魔物を殲滅してしまい。出る幕が全く来なかった。

2人のフォローは最初こそ必要だったが、後半は動いてすらいなかった。

出てくる魔物は、変な色のゴブリンや、アーマジロとかいう1メートル程度の岩に擬態したアルマジロみたいなもの、ロックバードというバレーボール程度の石のつぶてのように急降下で突撃してくる外皮が石の鳥など、顔ぶれがほぼ一新された気がする。

魔物単体の力は強くなっているのだが、出てきても数匹で、団体様は来ないうえ、擬態も奇襲も事前に気づいてしまうので、トータルすると強さは森と対して変わらなかった。

戦闘はアレンとリンカに任せっぱなしで、俺とリリィさんとシアちゃんとルカは会話に花を咲かせていた。

その中で、リリィさんにはルカに技を教えるという事は伝えておいた。

教えるのは護身程度までと言うのと、技の概要で納得してくれた。

是非クランの皆に教えてくれと言われたが、断っておいた。さすがに教室を開くのは面倒くさい。


魔物を倒し、ルカが空間魔術で死体をしまっていると、イライラしたアレンとリンカが、俺の方にやって来る。


「テメェ!喋ってないで戦え!」

「そうよ!なにサボってるのよ!」


・・・ですよね。

ついに怒られてしまった。これは言い訳できないな。


「わるい、代わるよ」

「ッチ、さっさとやれ!」

「わたしは休憩するわ。後はお願いね。」


2人共、たいそうご立腹のようである。

イライラしながら馬車に乗り込み、ドサッと腰を下ろす。


「ハヤトさんでも、この辺りの魔物を1人で倒すのは難しいんじゃないですか?」

「そ・・・そう・・・です・・・ふ・・・2人共ひどい・・・です」

「ひどいのは、ハヤトでしょう。」


ルカとシアちゃんの擁護に対して、リンカさんが反論する。

2人で戦って1人休憩で良い気もするんだけど、今回は俺がサボってたのが悪いし、この程度の魔物なら楽勝だからよっぽど大丈夫だろう。

「2人共ありがとう、この辺りの魔物なら大丈夫だ。それにそろそろ荒地も終わって山に入るだろう。」

ルカとシアちゃんは少し心配そうな顔をしていたが、本人が大丈夫と言うならと言って引き下がってくれた。

この辺りでいつもならアレンが噛み付いて来るはずなんだが、おかしいと思いアレンを見る。


「・・・ひどい・・・・・・ひどい・・・」


テンションがた落ちで、壊れたラジオの様にひどいを繰り返し呟いていた。

シアちゃんの一言でダメージ受けすぎだろ。

真っ白に燃え尽き、いっこうに現実世界へ戻ってこないアレンを眺めていたら、ロックバードが現れてしまった。

やると言ってしまった手前、1人で対処するとしよう。

馬車から飛び降り、俺を狙ってもらうように、目立つ動きをする。

ロックバードは2匹いて、上空からこちらの様子をうかがっている。

なかなか攻撃して来てくれないので、わざと隙を見せて突撃して来てもらう。

突進して来てくれた1匹目をいなす様にキャッチして捕まえ、2匹目の方へ同じくらいの速度でぶん投げる。

近づいて来ていた2匹目は投げられたロックバードを避ける事が出来ずに正面衝突し、きりもみしながら墜落した。おそらく死んでいるだろう。

落ちたところまで走っていき、死体を回収して馬車へと乗り込む。

馬車ではルカが目を輝かせて待っていた。


「ハヤトさん、飛んで来るロックバードを捕まえるなんてすごいですね。」

「目で追えれば意外と出来るもんだぞ。そういえば、ルカの収納の中に使い捨てられる投げナイフって入ってるか?」

「入ってますよ?どれくらい欲しいですか?」

「1本で良い。いくらだ?」

「タダで良いですよ。収納を圧迫するんで、減らしたいくらいなんです。」


そう言って、何もない空間に手を突っ込み、ナイフを1本取り出してこちらに渡してくれる。


「じゃあ、ありがたく貰ってくよ。」


ナイフを受け取り、お礼を言う。


「シアちゃんは、どれくらいの傷なら治せるんだ?」

「・・・わ・・・私は・・・な・・・無くなったものは・・・戻せません・・・ち・・・千切れても・・・す・・・すぐなら・・・繋げられ・・・ます・・・」


欠損以外大丈夫って事か・・・シアちゃんは、相当優秀なんじゃないのか?


「すごいな、たぶん全力でやるとケガする技を使うから、その時はよろしく頼む。」

「・・・そ・・・そんな技が・・・あ・・・あるんです・・・か」

「あぁ。こういう時に、どこまで被害が出るのかを調べておきたいから、全力でやってみるよ。」

「ッハン、自分の技でダメージ受けてたらせわなねーな。」

「そうね、技として中途半端じゃないのかしら?」


ここぞとばかりに、攻めてくる2人。


「そうだな。今後、威力を調整するにあたって必要なんだよ。」

「どーだか、うちのシアをそんな事で働かせるなよ。」

「わ・・・私は大丈夫・・・です」


またも、ダメージを受けるアレン。なんかだんだん哀れになってきた。でもまぁ、面白いからそのままでいいか。

丁度よく、アーマジロを2匹見つけたので、攻撃して見る事にする。


「リリィさん、あれも使うから見てるといい。」

「遂にか。」

「あぁ、サラマンダーに使うための練習みたいなもんだ。」


言い終わってすぐ、アーマジロに向けて走り出す。

とりあえず1匹目の背中、一番防御の厚い所へと鎧通しを使い、内臓へと衝撃波で攻撃してみる。

しかし、岩の鎧は想像以上に硬いみたいで、ほとんど効いていなかった。

アーマジロは擬態を解き、こちらを威嚇してくる。威嚇のポーズは頭が見えていたので、一瞬で近づき、脳天へと鎧通しをお見舞いした。今度は効いたようで、そのまま崩れ落ちた。

2匹かと思っていたら、本物の岩に隠れてもう1匹見つけた。どうやら3匹いたみたいだ。

それであれば、更に丁度いい。崩拳も試してみよう。

2匹目・3匹目も動き出していたので、近い方の背中にに崩拳を打ち込んでみる。

崩拳は相性がいいみたいで、背中の鎧がはじけ飛び、外殻から背骨まで砕き動けなくなった。

3匹目がこちらへと突進をして来ていたので、ジャンプして躱し、馬車の方へ戻る。

アーマジロは向きを変えて俺の方にまた突進をしてくる。

先ほどルカから貰った投げナイフを手に取り投げる構えをする。


「これが、ルカに教える技の全力だ。よく見ておけよ。」


そう言って身体強化を全力で使う。ただし、部分的な強化を、である。

身体強化は、全身全てを強化する技だが、熟練者は腕だけや、脚だけなど部分的に強化する事が出来る。これは魔力コントロールで可能になる応用技である。

俺は更に細かく、必要な筋肉だけを強化していく。

やる理由は簡単、全てを強化してしまえば、ストッパーとして使っている筋肉も強化することになってしまうからだ。

筋肉単位で強化できれば、自分の限界を軽く突破できるのである。

投擲に必要となる部分を足から背中、肩、腕と順に強化していき、フルスイングでナイフを投げた。


パンッ


乾いた炸裂音とともに、俺の腕、そして投げられたナイフは、音の壁を突破した。

投げる瞬間に纏いも使ったので、ナイフは炎の線を空中に描きながら、一直線にアーマジロへと飛んでいき、アーマジロの体内をスピードを落とすことなく縦断し、やがて燃え尽きて消えた。


「まさか音速を超えるとは・・・」


投げた本人が驚いているのだから、見ていた人はさぞ驚いたことだろう。

そして右手が痛い、千切れて飛んでいかなかっただけましだろう。

そう思い恐る恐る見てみると、いたるところが内出血してパンパンに腫れて、出血までしていた。

投げる瞬間に右腕からプチプチ聞こえてたもんな。毛細血管が切れまくってるんだろう。

シアちゃんに治してもらえるだろうか?

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