オーク討伐3
「・・・・の・・・・・ハヤト殿」
なんか、名前を呼ばれてる気がする。
「お休みのところ、すみませんな。」
目を開けると村長と男が二人が目の前に立っていた。
「あぁ、わるい。寝てたみたいだ。」
想像以上に疲れてるみたいだ。身体強化だけで勝てるのに、鎧通しやら、崩拳やらを連発したせいだな。
「お疲れのようでしたら、洞窟の確認は明日にしますかな?」
「いや、今日やってしまおう。面倒事を明日にまわしたくない。」
今日出来るなら今日やってしまう。そうすれば明日休めるんだ。
これで明日は、王都に帰るだけになる。
「ワシらは準備できましたので、いつでも行けますぞ。」
「じゃあ今から行こうか。」
立ちあがり、村長達と洞窟へ向かって歩き出す。
「まさかオークジェネラルを素手で倒されるとは思いませんでしたな。」
「手甲が壊れて、新調出来ていないんだ。仕方ない。」
「普通は代用品でも装備するもんですがな。」
「金がないんだよ。それに、あの程度なら素手で問題ない。」
「普通のCランク冒険者なら、完全装備での上、パーティーで挑む魔物ですな。」
村長と普通について話しながら洞窟の前まで到着する。
そこら辺に転がるオークの死体を見て、驚愕する三人。
「ほ・・・本当に全部、お一人で倒されたのですかな?」
「俺以外にいるように見えるか?」
「いえ、確かに村での戦いっぷりを見て、お強い事はわかっておりましたが、これだけの数のオークに囲まれて無傷で勝たれるとは、驚きですな。」
「オークは遠距離攻撃出来ないし、囲まれないように気をつければ大したことないよ。」
「普通の人には無理ですな。」
そのまま洞窟の中へと進んでいく。
最奥まで着き、頭のひしゃげたオークジェネラルや大した外傷がないのに死んでいるオーククイーンを見て、信じられないものを見たという顔をしていた。
そのまま、その顔で俺のことも見てくる三人。
おいこら、俺は化け物じゃないぞ。
「む・・・村のモノと合わせ通常のオークが32匹とジェネラルが4匹、クイーンが1匹ですな。オークジェネラルが生まれる確率は、10匹に1匹程度ですので、今まで村で倒したオークと今日倒したオークを合わせるとオークの集団は全滅か残っても1匹2匹程度ですな。」
「その程度であれば村でもなんとかなりそうですね。」
「このオークはどうしましょうか?」
「ハヤト殿の判断次第ですな。」
判断をこちらに求めて見つめてくる三人。
普通どうするんだ?
食えるらしいが、さすがに30匹以上を運ぶのは無理だろう。
「とりあえず、魔石だけ回収したから村で好きにしていいよ。もって帰る用意していないし。」
その発言に、またも驚く三人。
「それでは、ワシらが儲かり過ぎてしまいますな。」
「こんなに持って帰れないし」
「でしたら、村の馬車で運びましょう。運んだ賃金だけ貰えれば大丈夫ですな。」
悪くない提案だな、壊れた村の事もあるし色を付けたいところだが、あまり渡し過ぎてもかえって嫌味か?
「半々でどうだ?村の修理もあるだろ。」
「そう言っていただけると、ありがたいですな。」
「決定だ。今日は休んで、明日やろう。」
「そうですな。では村に戻りますかな。」
もしかしたら、討ち漏らしがいるかもしれないという事なので、帰り道は周囲を捜索しながら進んでいく。
特に魔物が見つかることもなく村へと到着した。
「村長、どうでしたか?」
「まだ、見つかっていないのがいるかもしれないが、ひとまずオークの集団は壊滅しましたな。」
「「「「おぉ!」」」」
「今日はケガ人も出てしまったが、オークの脅威は去った。みんなで勝利の喜びを分かち合うとしますかな。」
「「「「おぉ!」」」」
そうして、村を上げてのオークのバーベキューパーティーが始まった。
ケガをした人や、家が壊れてしまった人もいたが、先ほどのオーク売却の取り分の話をしたら、皆喜んでくれた。
パーティーが始まってから、皆俺の所に来ては、口々にお礼を述べていく。
なれないことをされると、どうも背中がむず痒くなってくる。
「ハヤト殿、よかったのですかな?」
気恥ずかしくなって、一人になると、村長が話しかけてくる。
「何の話だ?」
「村で倒したオークを全部村のモノにしていただいたことですな」
「あれはもともと村の人達の獲物だろう。俺が美味しい所をかっさらってしまっただけだ。俺に所有権なんて無いよ。」
そう、村に来たオーク共は、ジェネラルを含めて全部、今日のバーベキュ―になった。
各家庭から、酒や料理も運ばれてきて、大盛り上がりで幕を閉じた。
翌日、朝から男性陣を集めて、オークを馬車に積み込み、王都へと出発した。
特に面白い事件が起きることもなく、王都の冒険者ギルドへと到着し、レイラさんにクエストの報告をする。
「オークジェネラル4匹にオーククイーン1匹ですか・・・ハヤト様、あまり無茶をしてはいけませんよ。調査だけでよかったんですから。」
レイラさんは、額に手を当てて険しい顔をしてしまった。
「無茶はしてない、やれそうだったからやっただけだ。」
「そうですか。私が怒る事でもないのでここまでにしておきます。ただ、心配はしておりますので、本当に無茶だけはしないでくださいね。持ってきていただいたオークは隣の施設へ運び入れてください。魔石は売っていただける分だけこちらで買取いたします。」
とりあえず、今回手に入れたものは全部売却することにした。
通常のオークが27匹と魔石が32個、オークジェネラルが3匹と魔石が4個、斧が4本、オーククイーンが1匹魔石が1個かなりの量である。
「査定してまいりますので少々お待ちください。」
オークを運び入れてから、運んでくれた村の人達とコーヒーを飲みながら待つことにした。
雑談しながら待っていると、査定が終わったようで、声がかかる。
「こちらが、今回の報酬です。金額の内訳は中に紙を入れておきましたのでご確認ください。」
レイラさんから金貨の入った袋を受け取り、報酬の内訳を確認する。
クエスト報酬と魔石の金額はすべて俺が貰い、約束通りオークの肉と斧の金額を半々に分ける。
結構な額となり、村の人は喜んで帰って行った。
これで、マリエルさんから借りたお金は返す事が出来るだろう。
お金にも少し余裕が出来たので、本格的にリリィさんが戻ってくるまでやることが無くなってしまった。
修行でもしながら時間をつぶそうか。




