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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
183/186

2家族会議

先生の仲裁があった後、喧嘩をしたとして一通り怒られてから家で家族?会議が行われる。

メンバーは隼人・結衣2人の母親の計4人だ。


「絶対に謝らないから。」


隼人の第一声はそんな言葉から始まった。

先生に怒られたのが気に食わなかったのか、話を聞こうとする母親から面倒臭そうに顔を背ける。


「そればっかりじゃお母さんも何があったのかわからないのよ。何で喧嘩なんてしたの?」


隼人の母親は、出来るだけ優しい声で隼人に問いかけるも、断固として応えようとはしなかった。


「あ、あのね~はやとくんは~わたしを助けてくれたの~」


しびれを切らした結衣が、恐る恐る口を開く。


「あら、そうなの?」

「・・・うん」


結衣は不安そうな表情を浮かべながら頷いた。


「何があったの?」

「あのね~男の子にわたしのカバンとられちゃって~泣いてたら取り返そうとしてくれたの~」


先生にはケンカ両成敗でこってり怒られたが、結衣にとって隼人は助けてくれた人であり責められるのはおかしな事だと思っていた。

その為、自分ではなかなか言い出しにくい内容の話であっても、結衣は所々詰まりながら泣きそうな声で語っていく。


「それで男の子たちとケンカになっちゃったんだね。」

「・・・うん」

「だったらそうやって言えばいいのに。別に怒るような内容じゃないじゃない。」


隼人の母親は元から怒る気はなかったのか、呆れたようにため息をつく。


「じゃあ、隼人くんは結衣を助けてくれたんだ。」

「うん!」


対する結衣の母親は、娘を助けてもらったと聞いて途端に上機嫌になる。


「ありがとね、隼人くん。」

「ただムカついてやっただけだから。」


隼人は、ものすごくニコニコしている結衣の母親とは全く目を合わせず淡々と答える。


「隼人、そんな言い方はないでしょ。」


そんな隼人の態度に隼人の母親が注意するも、結衣の母親はさほども意に介した様子はない。


「別にいいわよ。それにしても、うちの結衣は愛されてるわね~」

「そ~なの?」

「・・・別に。」


隼人としては愛なんてまだ良く解らない、ただずっと一緒に育ってきた幼馴染を助けた。それだけの事なのだが、周りから見たら普段自分から行動する事の無い隼人が率先して面倒事に突っ込んでいった事に本人も気づいていない大きな感情があると勘ぐってしまえた。


「でも~はやとくんかっこよかったよ~」

「そんなことないよ。」


追い打ちの様に襲い掛かる結衣の純粋でストレートな物言いに、隼人は横を向いていた顔をさらにそむける。


「何々?照れてるの?」

「違う。」


ここぞとばかりにイジりに来る母親の攻撃に間髪入れずに即答する。



「まぁその話は置いといて、隼人がケンカした理由はわかったけどやり方が良くなかったわ。」

「何で?」


美談で終わろうとしていた所から一気に真面目な話に戻した母親に、隼人は少し苛立ちながら聞き返す。


「隼人は勇気を出して結衣ちゃんを助けたけど、結局先生に怒られちゃったでしょ。」

「うん。」

「先生に怒られる事をしたらダメなのよ。」

「でも----」


隼人は怒られたという事実を突きつけられ、反論しようとするも上手く言葉として表現できない。


「先生を呼んでくるとか、怒られないような他の解決策を見つけるのが正解。暴力で解決するのは、あくまで最終手段よ。」


もちろん隼人の母親もいきなりそんな事が出来るだなんて思ってはいないのだが、普段から面倒事を避ける隼人ならばもしかしたら、と思っていた。


「あまり難しい話をしてもわからないわよ。隼人くんが結衣を守ってくれただけで私は嬉しいわ~」


上機嫌な結衣の母親は、まだ早いとそんな事を気にする事無く隼人の味方に入り、頭を撫でる。


「でも、勝てなかった。」


結衣の母親に、わしゃわしゃと撫でられて髪の毛をボサボサにしながら隼人は悔しがる。


「隼人くんが3人を相手に引き分けたのは凄いことよ。」


対して力量差の無い子供達が、人数差があるのにもかかわらず引き分けるのは異常事態である。

それこそ、強い思いでも無ければ食らいつく事なんて出来ないだろう。


「よし決めたわ、格闘技を習いましょう。」

「え?」


少し黙りこくって何かを考えていた隼人の母親が、ポンっと手を叩いて突拍子もない事を言い始める。

隼人は意味も解らず、素っ頓狂な声を上げる。


「悔しいなら強くなればいいのよ。それに、格闘技を習えば力の使い所を教えて貰えるわ。暴力だけが解決策じゃないことも勉強しなさい。」

「・・・うん」


母親の勢いに呑まれて、隼人はただ頷くしかなかった。


「決まりね。」

「良いわね。隼人くんが強くなったら結衣の事を守ってくれる?」


テンションを上げる隼人の母親に、結衣の母親も乗っかる。


「ちょっと、うちの隼人を結衣ちゃんのボディーガードにしようとしないでよ。」

「良いじゃない、減るもんでもないし。」

「・・・頑張る。」


母親同士がワーワー言っている中で、結衣を助けるのは当たり前だと思ている隼人は控えめにも意気込みを語る。


「ほら、隼人くんもこう言ってるし。」

「仕方無いわね。今度、近くの道場に入門しましょう。」

「うん。」


ほとんどの事に興味を持たなかった隼人だが、この話に関してかなりやる気を出しており、隼人の母親は安堵を覚える。


「それで、結衣ちゃんは何をくれるのかな?」

「何でうちから持ってこうとするのよ。」

「ボディーガードをしてあげるんだから良いでしょ?」

「あげるモノなんてないわよ。」


母親同士の言い合いはますますヒートアップしていき、当人を差し置いてくれくれ合戦を始める。

そんな話をよそに、結衣は隼人の袖を引っ張って決定的な言葉を告げる。


「あのね~わたしは~はやとくんのおよめさんになってあげる~」

「「「・・・」」」


その衝撃の発言に、全員が固まる。


「ダメ~?」


結衣は何かおかしな事を言ったのか?といった表情で、可愛らしく首をかしげる。


「あらあらあら、ダメなわけ無いじゃない。結衣ちゃんなら大歓迎よ。直ぐに婚約しましょう!」


いち早くフリーズから溶けた隼人の母親が、結衣の発言を全面肯定する。


「結衣はそれでいいの?」

「うん!」


結衣の母親も動き出し、結衣に真意を問うと、結衣は元気いっぱいに頷いた。


「・・・隼人くんなら良いか。そうと決まれば、結衣も修行よ。」


結衣の母親は少し考えた後、その瞳に炎を灯す。


「何するの~?」

「まずはお料理ね。それから、男を逃がさない人心掌握術を教えてあげる。」

「やった~」


結衣の母親は料理が上手い。

美味しいご飯やおやつを作ってくれる母親を見て、結衣は料理に興味を持っていた。教えてくれるという言葉に、諸手を挙げて喜んだ。


「料理は良いけど後ろのは要らないわ。結衣ちゃんをどうする気よ。」

「ただの英才教育よ。」

「絶対に違うわ。」

「まぁ、親戚同士仲良くしましょう。」

「気が早いわね。」


隼人の母親は、ふざけていても流石に自分の娘を変な方向に教育しないだろうと思い若干呆れながら笑う。


「はやとくんよろしくね~」

「うん」

「そんな他人行儀はやめて、名前を呼び捨てにしたら?」


結衣の母親は暴走状態が収まらず、2人の距離をもっと近づけようと提案する。


「う~んと、よろしくね~はやと。」

「わかったよ、ゆい。」


微妙な空気で始まった2家族会議は、テンションの高い母親達と子供達の笑顔で幕を閉じた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 先生に怒られることをしたらダメ、という言い回しにどうにも違和感が...。親が子供に教える言葉として正しいのか疑問に思える。私だけかもしれませんが...。
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