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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
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新技

雫はループスの居る方に走って行き、レイラさんと子爵家を守る様に立って戦況を見守り、結衣は俺のそばまで駆け寄ってきてケガに状況を確認してくる。


「隼人はゲガしてるね~」

「かすり傷みたいなもんだ。」

「すぐ治すね~」


俺のケガの状況を確認し終えた結衣は頑張るぞ~といった様子で拳を握って気合を入れる。

視線を戦場に戻すと、光輝と侯爵の戦いが始まっている。

侯爵は魔術を連続で放ちながら亜音速で光輝と近接格闘までこなしている。

対する光輝は侯爵の年季の入った魔術と体術の連携に翻弄されながらも何とか凌いでいるといった状況だ。


「光輝の加勢に入るから急ぎで頼む。」

「任せて~」


結衣が俺の方へ手をかざすと、暖かな光は俺を包み込んで鬱血や刺し傷などが逆再生の様に治りはじめる。何度見てもおかしな光景だ。


「ゆっくりで良いわよ。光輝は私がフォローするから。」


俺が結衣をせかしているのが遠くから見て分かったのか、雫から休めの号令がかかる。

雫は矢を番えて弓を引き絞り、タイミングを見て放つ。一瞬矢じりが光って見えたのは気のせいだろうか?

侯爵の動きに合わせた一射は、狙い通りに侯爵に当たって爆発する。


「おいおいマジかよ。エルフの秘術とやらの情報管理は適当なのか?」

「勇者パーティーだから~特別に教えてくれたんだよ~」

「勇者の名前があればやりたい放題かよ。」

「習得するのは大変だったみたいだよ~」


結衣が俺の呟きに律儀に答えてくれる。


「だろうな。」


爆炎の中からほぼ無傷の侯爵が現れる。そして侯爵のターゲットが雫に移り変わり、雫を睨みつける。

雫に向かって走り出そうとしたその時、遠くから真っ赤な線が侯爵の胸に突き刺さる。レーザーのような赤い線は一秒ほど侯爵の胸を焦がして消える。


「あの光は?」

「あれは杏華ちゃんの新技だね~」


どうやら術者は杏華らしい。


「杏華の属性は火と土だろ。何で光線銃みたいになってんだよ。」

「熱線なんだって~火の魔術から熱エネルギーを強化して撃ってるんだって~」

「・・・なるほど。」


とんでもない技が出てきたな。熱線が見える長さがバラバラなので、恐らく引き金を引いている間は攻撃しっぱなしになるのだろう。

攻撃しながら銃を振り回せば切断武器として機能するんじゃないだろうか。



「よ~し。治ったよ~」


熱線について色々と考えていたら結衣の治療が終わってしまった。それなりの怪我をしていたはずだが全て治っている。相変わらず驚異のスピードだ。


「悪いな。ちょっと加勢してくる。」

「頑張ってね~」


そう言って結衣は安全なループスと雫の居るところまで走っていく。

加勢するとは言ったものの遊撃は要らないだろうし、やってもタンク役くらいか。

光輝にはメインアタッカーになってもらおう。

そうと決まれば戦いに割って入るタイミングを計る。

公爵の攻撃を光輝は剣で弾き、反す刃で公爵を切り裂く。

しかし、公爵が飛び下がったことと、強化された外皮によって浅い切り傷を付けただけにとどまる。



俺は公爵の着地に合わせて一気に踏み込み、こめかみに振り下ろすようなフックを叩き込む。

拳が公爵に触れる瞬間、風の魔力がねっとりと絡みついて減速する。


「ぐっ!」


侯爵は苦悶の声を漏らして吹っ飛ぶが、威力の落ちたパンチでは致命傷には至らなかった。


「ファイヤーバレット×64」


クロスレンジから離れた侯爵に向けて炎の魔術を連射して追撃をかける。しかし、貫通力を高めたはずの魔術も打撃程度の攻撃にしかならない。

光輝の剣でも斬れず、魔術も火傷程度にしかならない程の防御力は反則だろ。


「・・・」


俺は魔術を放ったままの状態で光輝に視線を送り、打開策を考える。

侯爵の防御は、リリィさんと戦ったときのような風の鎧に邪魔される感覚に近いが、風で反らされるというよりも包み込んで絡めとるといった感じがする。

全ての攻撃が直前で減衰させられて思ったほどの威力を発揮できないでいる。

振動波よりも純粋な威力で持って行くのが正解だろうな。ゴリ押しでイケなくもない気がするが、メインアタッカーは光輝に任せるので最悪ダメージが無くても隙を作れれば問題ないはずだ。



「この研究が完成すれば魔王との戦いも楽になるというのになぜ解らない。」


距離を取った侯爵が俺達に問いかける。


「なんだ、まだ理性が残ってるのか。」

「そんな危険なモノを使うくらいなら僕達を頼ってくれた方が嬉しいね。それに、貴方が近くに置いていたインカという人物は魔王側だと思うんだけど。」


結衣が遠くにいるため俺の呟きはスルーされて侯爵と光輝の話が始まる。


「用が済んだら切っていたよ。それまでは働いて貰い予定だったんがね。」

「完成品が安全でも、完成までにどれだけの被害を出すつもりなのかな?それに、倒すためとはいえ一度でも魔王側に付く事は容認できないね。」


本当の意味で勝つために手段を択ばない侯爵と、あくまでも勇者として手を尽くそうとする光輝の違いがぶつかる。


「進歩には犠牲がつきものであり、新薬が本当の意味で完成すれば散っていった者達もうかばれるだろう。」

「それが貴方の正義だというのなら僕はこの研究を止めさせてもらうよ。」


俺の考えは割と侯爵よりだけど、侯爵の方を持ってやる義理なんて微塵も無いから光輝をプッシュするとしよう。

レイラさんの結婚を止めに来ただけなのに何だかスケールの大きな話になってきてしまったな。


「出来るのならやってみると良い。この状態になったのは不本意だが、自分でデータを取れるのはよしとするしかあるまい。」


侯爵が構えてさらに魔力を高めていく。辺りはさらに強い黒い魔力におおわれるが、俺と光輝の魔力が憂鬱な感覚を吹き飛ばしていく。

特に光輝の剣の輝きが凄まじく、何もせずともただあるだけで闇を払拭していく。

全員が武器を構えて集中し、魔力の嵐と緊張感が辺り一面を埋め尽くす。


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