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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
175/186

化け物

化け物に変化した私兵達が雄叫びをあげる。


「おいおい。こんなところでそんなことしたら大勢死ぬぞ!」


俺はすぐさまループスに命令してレイラさんを安全なところに避難させる。


「問題ないよ。キミが彼らをこんな風にした犯人なのだからね。」

「言っとくけど、俺はわりと発言力強いぞ。」


護衛が化け物になったこと自体を俺の所為にして逃げるつもりかもしれないが、光輝達を味方にしてしまえば侯爵の圧力でも何とかなるだろう。


「そんなものは関係ないよ。キミはここで死ぬんだからね。」

「死人に罪を擦り付けるとかいい性格してるな。」

「約束も無しに大事な式をしている貴族の屋敷に勝手に入って来たキミに言われたくないよ。」

「緊急だったから仕方無いだろ。」


仕事が早い侯爵が悪いな。

ゆっくりしてくれていれば俺も実力行使で攻め込んでいないというのに。


「さて、お喋りは終わりだよ。その不届き者を殺せ!」

「ウオォォォォォ!!」


大盾の獣人が先ほどよりも明らかに速い音速を超える速度で差し迫る。


「チッ!」


俺は獣人の突進を舌打ちをしながらバランスを崩しながらも何とか回避する。

侯爵の命令は聞くのかよ。などと考えている暇を与えてくれるほど甘くはなかった。

バランスを崩した俺に、魔術と矢が何本も飛来する。

魔術は身体強化した拳で迎撃して矢は回避を試みるが、風の矢が数発俺の脇腹を掠める。


「ぐっ」


爆発しなかった事が不幸中の幸いと言えるが、脇腹に激痛が走りバランスを保てなくなって倒れる。

倒れた俺に、獣人からの片手剣の振り下ろし。


ゴッ!


剣は地面を抉って爆発に似た衝撃波を撒き散らす。

俺は地面を転がって直撃は回避したが、爆風で飛ばされてさらに転がる。

バウンドするタイミングを見計らって着地し、化け物達をしっかりと見据える。


「良いぞ、そのまま殺してしまえ!」


侯爵からの野次が飛んでくるがそんなものを気にしている暇なんてない。

化け物になって連携の精度が落ちたとはいえ有り余るパワーで護衛達の脅威度は上がっているといえる。

俺は、先程出した全力の身体強化を使う。

護衛達が化け物になったときの様に魔力の嵐が巻き起こるが、護衛達と違って邪悪な感じは無く俺の魔術特性である火のせいか辺りに熱風が駆け抜ける。

嵐が収まっても、俺の周りに陽炎の様な空気の揺らめきが漂い続ける。

全力の身体強化をコントロールするための極限の集中の中でタキサイキア現象が起き、世界がスローモーションに変わる。



戦場の空気を変える程の事態を脅威と捉えた獣人が咆哮を上げながら俺に向かって動き出す。

獣人の突進から一拍遅れて魔術と矢の援護射撃が後を追ってくるのがはっきりと見える。

思考が加速しているおかげで護衛達の音速を優に超える速度の攻撃にも難なく対応できそうだ。



迫り来る獣人の突進をいなしつつ力の方向を変えて一回転させ、後を追ってくる魔術と矢を獣人を盾にして受け止める。


ガガガガガガ!


一度放った攻撃は止まる事無く俺達に飛んで来る。事態に慌てた魔術師が獣人に透明のバリアが張るが、それを壊す勢いで魔術攻撃が降り注ぐ。

獣人に張られたバリアは攻撃のラッシュに耐えきれずに砕け散る。


「がああぁぁぁあぁぁぁ!!」


魔術が刺さり、矢が炸裂し獣人は痛みに吠える。

爆発の余波が俺にも届くが全力の身体強化の前では大したダメージも入らない。

しかし、少しでもきれいに防げるように獣人を振り回して攻撃魔術を迎撃していく。


ズンッ!


ラッシュを全て防ぎ切り、白目をむいて動かなくなった獣人を場外に放り捨てる。

これで獣人が復帰してくる事は無いだろう。



前衛を潰したので残りの4人に目を向ける。面倒なのはエルフの秘術とかいう爆発する矢とバリアだ。

矢の中でも魔術で出来た矢はそれほど脅威ではない。スローで見た限りでは実弾で矢じりに刻印がされているモノが秘術であると予想出来る。

先ほど一瞬だけ出した超超音速で弓術士の方に走り出す。

魔術の矢と実弾の矢が入り混じって飛来するが、実弾を優先的に回避しつつ鳩尾に崩拳を叩き込む。


「ぐふっ!」


弓術士は短く呻き、血を吐きながら崩れ落ちる。


「キサマ!」


真横でもう1人の弓術士が実弾の矢を番える。

ほぼゼロ距離で放たれた矢を、俺は強化された左手で掴み取る。

矢じりを握りつぶす様に受け止めた矢は、拳に中で弾けて指の隙間から余波が漏れる。

受け止めきれなかった矢の直進するエネルギーは左手を駆け抜け、身体の中心軸である正中線を軸に回転エネルギーに変換。そして右ストレートに変えて叩き返す。


「へぶっ!」


拳は顔面に突き刺さり、弓術士を吹っ飛ばす。弾かれた弓術士は侯爵邸を突き破ってはるか後方まで飛んでいく。

残り二人。


「ひっ!」


俺に睨まれた魔術師が小さく悲鳴を上げて杖を構える。その瞬間、8重のバリアが出現して行く手を阻む。


「もうその程度じゃ止まらんよ。」


俺は渾身のストレート一撃で全てのバリアを破壊し、余力の無くなった拳が魔術師の胸の中心にトンと当たる。

一拍置いて、自身の全力を拳に乗せて叩きつける。


「がっ!」


魔術師は胸骨が砕け、胸に数センチの陥没を作って崩れ落ちる。


「はあぁぁぁぁ!!」


最後の1人がやぶれかぶれに特攻してくる。自身にバフをかけ、身体強化を使ってはいるが所詮は魔術師。獣人には及ばない速度なので攻撃をひらりと躱し、すれ違いざまに胸に拳を当てて力を解き放つ。


「ぁ・・・」


最後の1人も倒れ、辺りを静寂が包み込む。



「さて、用意していた戦力はこれだけか?」


俺は逃げずにその場にとどまっている侯爵に問いかける。その顔には先ほどまであった余裕は消えて、苛立ちをあらわにしている。


「キサマ、騎士との戦いは手加減していたのか!」

「人聞きが悪いな。殺さない程度に本気でやったさ。これでその薬がヤバいものだって証明できたし、現行犯でお縄だな。」


少なくとも子爵は自体の全てを見ており、驚いた顔をしている事からこんなモノだとは知らなかったのだろう。

状況からしてこちら側に引き込むのは不可能ではないはず。


「ふん。私を裁くのはこの国にとって損害が多すぎる。秘密裏に処理して終わりさ。」

「裏で手を回しても無駄だよ。お前を裁くのは教会だからな。」


侯爵はまだ何か策があるようだが、もうどうしようもない事を伝える。


「何?」

「豊穣の女神ディアーナ様が聖騎s----」


カッ


セリフの途中で俺と侯爵の間に一本の矢が刺さり、そこから2人を引きはがすかのようにウォーターウォールが発動。

そして俺が壊した正面ゲートから誰かが入ってきた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ディアーナ様はおしい…って思ってそう
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