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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
173/186

私兵

私兵達が薬を呑んだ瞬間、魔力の嵐が吹き荒れる。限界まで高まった魔力があふれ出し、私兵達の顔つきがは戦闘モードに切り替わる。


「おいおいマジかよ。」


騎士が倒され、私兵が戦闘態勢に入ったところで侯爵家と子爵家の使用人たちは一斉に俺達から距離をとる。


「ハヤト様!」


ループスに守られたレイラさんからマジックバッグが飛んで来る。俺はすぐさまバッグに手を突っ込んで手甲を取り出して装着する。これでやっと纏いが使えるようになった。

俺に味方するような行動をしたレイラさんは批判的な目を向けられるが、ループスが居るせいで誰も手出しは出来ない。



私兵達の人数は5人。恐らく冒険者パーティーからの引き抜きだろう。

前衛は獣人の大盾片手剣持ちが1人で、後衛にエルフの弓術士が2人とエルフと人間の魔術師が1人づつ。かなりアンバランスなメンバーだが、何かあるのだろうか?


「ウオォォォォォ!」


先に動いたのは盾持ちの獣人。大盾を構えながらの突進。獣人脚力との脚力と薬によって底上げされた身体強化によってその速度は音速へと至る。

俺は獣人の突進をすれすれで躱してカウンターを入れるが大盾できれいに受け流される。


「チッ」


自然と舌打ちが出る。相手が受け止めに来ていたらこちらも大盾を壊しにいけたのだが、斜に構えて弾くように受け流されては崩拳の衝撃も逸れてヒビすら入れられない。

さらに、バランスを崩させられた俺に向かって矢が数本飛んで来る。

俺は転がる様にして何とか躱すが、そのうちの一本を獣人が盾で受ける。


ズンッ!!


大盾と矢が触れた瞬間、エルフの秘術とかいう謎技術で矢じりが爆発。さらに飛んでいた矢も誘爆して大爆発を起こす。

至近距離で爆発が直撃した俺は、身体のあちこちを焦がしながら10メートルほど吹っ飛ばされ、さらに数メートル転がって止まる。

ゆっくりと立ち上がって自分の身体の状況を確認する。俺の魔術の適性が火属性で良かった。ダメージはあるが戦えないほどではない。


爆発による黒煙が晴れ始め、その中心地が見えてくる。キレイだった石畳はヒビが入り、余波で捲れ上がっている部分もある。その中にポツンと無傷の獣人が盾を構えて立っていた。


「・・・マジかよ。」


ため息が漏れる。さすがにあれを無傷で耐えているとは思わなかった。


立っている獣人をよく見ると、透明なバリアで守られている。魔術師が防御の魔術やらバフやらを張っているのだろう。非常に面倒な展開だ。

フレンドリーファイヤーで重傷はないにしてもあの規模の爆発ならば怪我くらい負ってくれても良いんじゃないだろうか。


「まさか立つのがやっとではないだろうな。」


獣人の呆れた耐久力にどう攻めようかを考えていると、まさかの挑発が飛んで来る。立ったまま構えも取らずに動かないでいる俺を満身創痍で動けないと思ったのだろうか?


「喋ってないでかかってきたらどうだ?」

「お望み通りいってやろう!」


獣人は雄叫びと共に再び突進を仕掛けてくる。


「同じ技とは芸が無いな。」


横に避けられないのであれば上に避ければいいだろう。上ならば矢を盾で受けるのは難しい。

腰を落として低い姿勢で迫り来る獣人の頭を片手で押さえつけて身体をひねりながら跳び越える。

空中の俺を狙って先ほどよりも多い数の矢が飛来するが、俺は押さえつけている手で獣人の髪を掴み自分の身体を引き寄せるように引っ張って躱す。


「ぶふっ!」


自分の身体を引き寄せたついでに獣人の脳天に膝を叩き込んだ。

獣人は盾で顔面を強打して変な声を漏らして気絶する。


「「「「なっ!」」」」


思いもよらない回避と攻撃にこの場に居た全員が驚く。

誰もが固まっている隙におれは後衛達に向かって走り出す。

牽制でファイヤーランスを放つが、魔術師の防御壁にことごとく防がれ、数の暴力と言わんばかりに数十発の矢や魔術が飛んでくる。

俺は身体強化で速度を一段階引き上げてすべて躱す。

まずは一番面倒な弓術士を仕留めにかかるが、顔面を殴り飛ばそうとした拳が透明なバリアに防がれる。

魔術的な防御壁は物理攻撃である崩拳では破壊しきれない。勿論身体強化や纏いを使っているので弱い防御壁ならば簡単に壊せるのだが、今回は薬の効果なのかなかなかに硬い。

防御壁を破れなかった少しの隙をついて、もう一人の弓術士から矢が飛んで来る。

俺はバックステップで矢を回避して距離をとった。


「助かった!」


弓術士の1人がフォローに入ってくれたメンバーに礼を言う。

しかし、そんな隙をついて俺は再び距離を詰める。崩拳ではなく纏いで強化した炎の拳をバリアに向けて突き放つ。


パキンッ


ガラスが砕け散るようにバリアが壊れ、突き抜けた拳は弓術士の腹にめり込んで肋骨が折れる感触が腕に伝わってくる。


「がふっ!」


弓術士の身体はくの字に折り曲がり、内臓まで到達したダメージによって血を吐いて倒れる。


取り敢えず弓術士を1人潰したので、次は魔術師に目を向ける。バフの効力はよく解らないが、バリアの方は俺にとってかなり厄介だ。


「ファイヤーボール×128」


魔術師の居る方向に炎球をばら撒いて牽制。爆炎で視界を奪う。

もう一人の弓術士から矢がとんで来るが、それも難なく躱して蹴りを叩き込んで昏倒させ、まだ炎が収まっていない中に飛び込んでいく。


魔術師側からも攻撃魔術が飛んで来るが、どうやらバフと盾役がメインの仕事の様で難なく手甲でゃじく事が出来る。

バリアは厄介ではあるが、全力でバリアを壊しにいけば破壊出来る事はわかっているし、メインのアタッカーが居なくなった今となってはそんなに重要ではなくなった。

一応張られてはいるので面倒ではあるが、何とか破壊して魔術師達も気絶させる。


「さて、騎士も私兵も片付いたぞ。」


爆炎も完全に晴れ、侯爵家の用意した戦闘要員が全員倒れ伏している中で俺は侯爵に話しかける。


「・・・これで終わりだと思わないことだね。」

「どう考えても俺の勝ちだろ。まだ何かあるのか?」

「もちろんさ。」


あと残っているのは使用人のメイドや執事達だけだ。マンガでよく見る様な戦闘メイドや執事は見たところいない。

それなのにもかかわらず、侯爵は余裕の笑みを絶やさない。


「まぁいいや。変なモンを持ち出す前に聞け。俺はアンタを裁きに来た----」


「「「「「ウオォォォォォ!」」」」」


俺が格好良く名乗りを上げようとしたところで後ろからの突然の咆哮。侯爵も俺の後ろで咆哮を上げる何かをニヤリと笑いながら見ている。

何事かと思って振り返ると、ムスぺリオス王国で見た漆黒の化け物が俺を睨みつけていた。


「えぇ~」


化け物は5人いて、はじけ飛んではいるが身体に残っている装備からして先ほどの私兵達だ。何故このタイミングでこんなことがおきるのだろうか。


「君の見た研究日誌には載っていなかったかな?私は薬を飲んだモノを任意で狂化出来るのだよ。アレは死んでさえいなければ動く事が出来る。命を取らなかった君のミスだね。」

「クソ野郎。」

「さて、君は狂化した彼等に勝てるかな?」


一番厄介な第3ラウンドが始まる。

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