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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
172/186

アドルフ

身体強化も使わずに2人も瞬殺したので、騎士達は驚き目を丸くしている。

何はともあれ、集中が削がれたのは好機だ。


「ルー。レイラさんを守れ。」

「ガゥ!!」


俺の命令に、ループスは身体を元の大きさに戻してレイラさんの隣に立つ。これで心置きなく戦える。

突然Sランクの魔物が現れたことによって、侯爵の使用人達が小さく悲鳴を上げて後ずさり、悲鳴を聞いた騎士達が振り返る。


「ファイヤーボール×256」


騎士達が俺から完全に意識を切り離したところで、ファイヤーボールを叩き込む。


「クソッ!」

「卑怯な!」


飛来するファイヤーボールに気付いた魔術師が防御をするが、さすがに全員を守りきる事は出来ず悪態をつく。

ファイヤーボールの余波で煙が立ち込める中、遠距離支援の面倒な魔術師と弓術師を潰す為に走り出す。


「ガハッ!」

「ぅぐ!」


視界の悪い中、魔力知覚を頼りに近くに居る騎士からを次々と殴り飛ばしていく。


「フンッ!!」


数人倒したところで、恐らくアドルフであろう殺気と気合をきいて、煙の中から脱出する。

一拍遅れて舞い上がっていた煙が風によって消し飛ばされる。そこには水平に大剣を薙いだ後のアドルフの姿と半分ほどに減った騎士達のが残されていた。


「剣圧で煙を消し去るのかよ。」

「お前の様な騎士の風上にも置けないようなこざかしい戦いは嫌いなんだよ。」

「有効な戦術だろ。」

「ぬかせ!お前ら!メインは俺がやる!遠距離支援に切り替えて撃てる時に撃て!」

「「「「「はっ!!」」」」」


アドルフの号令によって、残っていた剣士や槍術士はサブウエポンであろう弓や杖に持ち替える。

そこそこ数は減らしたが、これは面倒な状況になったかもしれない。俺は気を引き締めてアドルフと対峙する。


「はあぁぁぁ!」


アドルフの突進からの振り下ろし。俺は迫り来る大剣をギリギリで躱し、カウンターで上段の蹴りをお見舞いする。


ガキンッ!


アドルフは体勢を崩しつつも籠手でガードしてニヤリと笑うも、籠手が一撃で壊れた事に驚く。そして追撃を恐れたのか、跳び下がって剣を構える。


「どんな小細工を使ったんだ?」


蹴りを受けた腕をプラプラと振りながら疑問を投げかけてくる。

どうやら腕が痺れただけで、籠手と一緒に腕の骨を砕く事は出来なかったようだ。


「ただの体術だよ。」

「なるほど、手の内は明かしてくれないか。」

「本当の事を言ってんだけどな!」


二度目の交錯。アドルフは攻撃が当たるのは不味いと判断したのか、大剣の連撃で間合いを取り、俺を近づけようとはしない。

対する俺は、いずれ来るであろう連撃のスキを突く為に回避に専念する。

アドルフに疲れが見えそうになった瞬間に魔術と矢が飛来する。


「チッ」


非常にタイミングのいい攻撃に舌打ちをしつつ、ファイヤーウォールで魔術を対処し、ファイヤーウォールを超えてきた矢を躱す。


「そこだ!」


連携のとれたアドルフの追撃をバックステップで何とか回避するも、何本も飛来する矢をさすがに全て避ける事は出来ずに手ではじく。


パンッ!


矢に触れた瞬間、炸裂音と共に弾いた矢の矢じりが炸裂し、粉々になって飛び散った鉱物の欠片が腕を中心に身体の至る所にひっかき傷を作り出す。


「何だこれ。」


幸いにも身体強化のレベルが高いのでひっかき傷程度で済んだが、生身で受けていたら悲惨な事になっていただろう。


「そいつはエルフの秘術だ。」


俺の呟きに答えながらも攻めの手を止めないアドルフに苛立ちを覚える。


「この攻撃はこざかしくないいかよ。」

「華麗な連携攻撃に何か問題でもあったか?」


そっちじゃねーよと思いつつ攻撃を躱す。

触れれば炸裂する矢と魔術をファイヤーボールで相殺し、アドルフの豪快な剣を捌いていく。防戦一方でこちらからの攻撃の手数を増やせない。


「少し強引に行くか。」


俺は一瞬だけ身体強化の強化率を上げ、半ば強引にアドルフの懐に飛び込んで崩拳を放つ。

超音速の拳は鎧を砕き、腹にめり込んでアドルフの巨体を弾き飛ばす。


「ぐふっ!」


アドルフは苦悶の声を漏らし、血を吐きながら転がっていく。

援護射撃で飛んで来る攻撃を全て回避して反撃に移る。


「ファイヤーランス×64」


ファイヤーボールではガードされそうなので、ランクの高い技で魔術師の張る防御壁ごと一掃しにかかる。


「ファイヤーランス×64」


何とか耐えきった魔術師に対してさらに追撃をかける。魔術師は絶望した様な顔をするがお構いなしにファイヤーランスを発射する。

余波で侯爵邸の外壁が穴だらけになってくが、もうどうでもいいや。そんな事を気にしていたら勝てる戦いも勝てなくなる。


騎士達を黙らせることに成功したので侯爵の方に向き直る。

非戦闘員はループスと俺におびえて一歩後ずさるが、護衛として雇われている侯爵の私兵達は面白そうに俺を見ている。

ここからさらに面倒な戦いになりそうだ。そんな事を思っていると、後ろから殺気を感じて戦闘体勢に戻りながら振り返る。


「ふんっ!!」


気配を消して近づいて来ていたアドルフが胴を真っ二つにしようと大剣を横に薙ぐ。


「っ・・・」


ギリギリのところで気付いた俺は、肘と膝で大剣の腹を挟んでかろうじて直撃を免れる。

火事場の馬鹿力だろうか、どこから出て来るのかわからないアドルフの力技で数メートル吹っ飛ばされる。


「肋骨とか折れてると思うんだけどな。」


喀血してたし内臓にもダメージは入っているはずだ。アドルフは何で動けるのだろうか?

「隊を任された騎士として、負ける事は出来んのだよ。」

「責任感が強い事で。」


俺は起き上がりながらクラウチングスタートの様な格好になり、地面を買って一気に加速する。

身体強化を最大限に発揮し、速度を出すために本気で蹴り込まれた地面は足跡の様に点々とヒビを残していく。

超超音速でアドルフに肉薄し、それに気づいてガードしようとした頃には俺の膝が顔面にめり込んでいた。


「ブッ!!」


跳び膝蹴りをもろに食らったアドルフは今度こそ戦闘不能になる。



ようやく騎士達が片付いたので第二ラウンドとなる私兵達を見ると、全員が侯爵印の違法薬を呑み終わったところだった。

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