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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
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かちこみ

わらわらと出て来る警備兵達を殴り飛ばしながら奥へと進んでいき、式をしている中庭の広場に到着した。

恐らく主要人物は全員そろっているだろう。


一方には子爵とレイラさん。そして、レイラさんに抱えられたループスと使用人が数名。

もう一方には恐らく侯爵本人とその第一夫人と思われる女性。子爵よりもはるかに多い使用人達。屋敷のほとんどの使用人が出てきているのではないだろうか?

奥には神官の様な人物がいて、手前にはユグドフレア王国の騎士達がざっと50人ほど並んでいる。

この世界の結婚に関しては良く解らないが、今回の式とは、婚姻届け提出の様な者だろうか?神官がそんなような紙を持っている。

もし婚姻届けだとしたらサインはきっと最後なので、間に合ったと言えるだろう。


そんな事よりも、本当に手の空いた騎士達の半分ほどが来ているのではないだろうか。

ここに斬り込むのは骨が折れそうだ。


「何者だ!」


後方から堂々と入ってくる人物に気がついた騎士が声を上げる。


「やぁ、子爵。侯爵様は初めましてだな。」


俺は、片手を上げて挨拶しながら出来るだけフランクに子爵に話しかける。


「キサマ!」

「襲撃に備えてるって聞いたからお望み通り遊びに来たよ。」


子爵が立ち上がって臨戦態勢を取ったことによって、騎士達も侵入者を通すまいと気合を入れる。


「そのわりには戦力が足りていないようだが?」

「生憎と、おたくらと違ってお友達が少ないんだよ。それと、数を戦力としてみているなら間違いだという事を教えてやろう。」


子爵は侵入してきたことに驚いたものの、冷静に俺を見直して1人であることに余裕を覚えた表情をする。

まぁ、普通はそうだろうな。1対50で緊張する方がおかしい。


「ほぅ、たった一人でこの人数に対抗できると?」

「楽勝だな。」


子爵の余裕に、俺も余裕で返す。

勝てない雰囲気を出したら向こうの士気を下げられない。勝つ事自体は出来るだろうが、殺さずに無力化まで考えると正直キツイ。圧倒出来る風を装っていかなければ最後の最後まで粘られるかもしれないので、格上感を出していく。


「ハヤト様いけません。彼らは王国騎士です。何かあってはユグドフレア王国と対峙することになります。」

「全く問題ないな。正義は俺にある。」


しびれをきらしてレイラさんが忠告してくれるが、女神パワーでねじ伏せるんだから今回に限ってはそんな事はどうでもいい。

それよりもぶん殴りたい侯爵にたどり着くために騎士が邪魔なのが問題だ。この状態から戦わない道なんて無いだろうから仕方なく戦うけど。




「戯れ言を。」


ひときわ目立つ甲冑を着た中年男性が苛立ちながら吐き捨てる。


「あんたが指揮官か?」

「いかにも。私がこの部隊を預かっているアドルフだ。」


まぁ、何となく指揮官だとわかっていた事だが、ちゃんと返答が会えって来た事に驚きを隠せない。

もしかしたら言葉が粗暴な割に話せる人物なのかもしれない。


「デ・フィッセル侯爵には違法薬物の生産販売の容疑が懸かっている。罪人を守っているなんて騎士の名折れだろうから手を引いてくれないか?」


俺は一縷の望みをかけて、指揮官改めアドルフに話しかける。


「デ・フィッセル侯爵と、どこの馬の骨とも解らん冒険者、どちらを信じるかなんて考えるまでもないだろう。」


しかし、俺の言葉は考える余地も無く一瞬で切り捨てられた。

・・・でしょうね。

結果なんてわかってたよ。ちょっとぐらい考えてくれてもよかったんじゃないかとは思うが、アドルフの言っている事は普通に正しいよな。


「忠告はしたぞ。」


俺はそう言いながら拳を構える。


「アドルフ、その不敬な侵入者を殺せ。」


ここまで状況把握でほとんどしゃべらなかった侯爵が俺の討伐という指示を出す。

問答無用で殺しに来るのはいかがなものなのだろうか?


「だそうだ。」


アドルフは腰に携えている剣を抜き、無駄のない動きで中段に構える。

アドルフが構えた事によって、周りに居た騎士達も後を追うように次々と構え始める。


「意外と話のわかる人かと思ったんだけどな。」


望み薄だった希望が立たれてしまった事を残念に思いつつ、俺も気合を入れ直す。


「死に際に冥土の土産として聞いてやろう。」

「それは無理な相談だな。」


ピリピリとした空気が辺りを支配し、誰もが音もたてずに息をのむ。




「はあぁぁぁ!」


先に動いたのはまだ若いであろう騎士の1人。しびれを切らしたのか一気に俺へと差し迫ってくる。若いと言っても俺と同じくらいの年齢なのだが。


「馬鹿者!」


アドルフの怒号が飛ぶが若い騎士はもう止まらない。

剣の間合い入ったところで上段からの振り下ろし。速いことは速いが、もっと速い攻撃を観慣れている俺にとっては取りに足りないスピードだ。

頭上に迫ってくる刃を俺は両手で挟むように取る。


バキンッ


「なに!?」


騎士の振り下ろしは最後まで振り抜かれたが、鮮血が舞う事は無かった。


俺は片手をパー、もう片手をグー喧嘩の前に指の関節を鳴らすような格好を頭の上で作り、刀の腹を挟み込んだ。

拳は崩拳を放ち、手の平で受け止める。間に挟まれた剣は衝撃に耐えられず、音を立てて根元から折れた。

白刃取り。否、白刃折りに驚きを隠せずに呆ける騎士の顔面に後ろ回し蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす。


「がふっ!」


蹴りの回転を利用して折った剣の刃を投擲してさらに数人を弾き飛ばす。


「「「がっ!」」」


刃がクリーンヒットしたのは1人だけ、残りのかすった者や飛んで来た人にぶちかった人はすぐさま立ち上がって剣を構え直す。

残り48人。

戦いは始まったばかりだ。

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