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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
170/186

連絡3

リーゼロッテ王女も仕事に一段落ついたようで、俺達の方に時間を割いてくれる。


「お忙しいのに時間を割いてもらってありがとうございます。」


勇者パーティーが全員そろっているんだからこうなるのは当たり前といえば当たり前なのだが、俺としては騎士の話を出しにくくなる分居てくれない方が気が楽で良いな。

来てしまったものは仕方ないんだけど。


「いえ、勇者パーティーの最後の一人である貴方にも挨拶をしたかったので、お礼なんて結構ですよ。」


リーゼロッテ王女にそんな事を言われても正直困る。

俺は光輝や杏華の様なカリスマ性なんて持ってないし、雫の様な頼れるタイプでもない。結衣の様な空気を和ませる力も無い。いたって普通の凡人なので、何だか持ち上げられるとこそばゆい感じがしてじっとしてられないな。



「朝からお忙しそうにしてましたが、何かあったのですか?」


俺が返答に困っていると、アリア王女が今日の王宮のせわしない雰囲気について質問する。

王宮内が慌ただしく動いていたのは気のせいではなかったようだ。


「お恥ずかしいところをお見せしました。先日、侯爵が訪ねてきて急遽兵を貸し出すように依頼してきたのです。その業務で王宮はあわただしく動いています。」


俺は侯爵と兵というワードに反応する。何か嫌な予感がするが、もっと詳しく聞いてからにしよう。侯爵だって何人もいるはずだ。


「侯爵領で何かあったのでしょうか?」

「領地ではなく王都邸です。式の警備の為らしいのですが、少し過剰な警備なので対応に困っておりました。結局ある程度こちらが折れる形で決定しましたが、何があるというのでしょうか。」


侯爵・警備・式。これはデ・フィッセル侯爵で確定ではないだろうか。


「・・・リーゼロッテ王女殿下、その侯爵ってデ・フィッセル侯爵だったりしますか?」

「よくご存じですね。その通りです。」


侯爵の式とやらが今日開催されているだと?

さすがに仕事が早すぎるんじゃないだろうか。こっちはその対策の話をしに来ているというのに、その裏で式が執り行われているとか完全に後手に回ってしまっている。

完全に俺が殴り込んでくることを想定して警備の強化を図っているであろう事が見て取れるな。

罠としか言いようがないが、何とかして式を止めに行かなければ手遅れになってしまうので、この罠に飛び込むしか勝つ方法はないだろう。

メイドさんとの約束も守れなくなってしまう。


「・・・さっきまでの話は無しだ。ちょっと侯爵をシメてくる。」


ここで俺が頭をひねって考えたところで結論は出ないので、取り敢えず式だけでもをぶっ壊しに行こうと席を立つ。


「お待ちください。すぐに動こうにも、なにもかもが足りていません。」

「そ~だよ~」

「こうなったらゲーム盤ごとひっくり返すしかないだろ。その後なんか知らん。」


状況を察したアリア王女と結衣が俺を止めにかかってくるが、ここはレイラさんを助けに行くことを優先させてもらう。

侯爵が権力と人脈を使ってどれだけ頑張ろうが、神様パワーでボコボコにしてやろう。

俺に時間を与えなかった事を後悔させてやる。


「待つんだ!まだ方法はあるはずーーーー」


光輝も俺を止めようとするが、無視してドアに手をかける。


「雫、ちょっと迷惑かける。それはそっちで処分しといてくれ。」


部屋を出ていく時、俺が持ってきたモノを忘れていたことを思い出したので雫に処分をお願いしておく。

大切な証拠だが、もう使う事は無いだろう。持っててもいらないし。


「ちょっと!待ちなさーーーーはぁ。ちょっと迷惑どころじゃないでしょ。」


雫も止めに入ってくるが、俺が外に出て走り出したので途中であきらめる。




「えっと、どういう状況なのでしょうか?」


完全に置いてきぼりを喰らってしまったリーゼロッテ王女がフリーズから回復し、今の状況を確認する。


「うちのバカが突然飛び出してすみません。」


雫が隼人の非常識的な行動をすぐさま謝罪する。


「彼と侯爵との間で何かあったのでしょうか?」

「本を読んでみないことにはなんとも言えませんが、取り敢えず必要な部分だけ説明します。それと、今から話す隼人の事に関しては他言無用でお願いします。」

「わかりました。」


雫のいつになく真剣な表情に、リーゼロッテ王女は気を引き締める。


「それと、騎士を動かす事は出来ますか?」

「式の警護で大半を動員しましたが、数人程度であればすぐにでも出動出来るかと。」


ユグドフレア王国の王国騎士が警備として雇われている以上隼人との衝突は避けられないだろう。

そんな状況で隼人が聖騎士の名を出してしまえば女神の使いに王国が敵対したと判断されてしまう可能性が高い。

ましてや婚姻の式をしている途中の場所だ。教会側から神官を連れてきている所でそんな騒動があれば、ユグドフレア王国の損失は計り知れないものになってしまうだろう。

それを含めた事後処理なんて考えただけでも頭が痛いので、隼人が名乗る前に騎士を引き連れて場を収めに行かなければならない。

雫と光輝はもっとも効率よく今回の件を収められるように動き出す。


「隼人を助けてあげないと~」


まだ事態を軽く考えている結衣が、幼馴染に助けを出そうと提案する。


「助けるというよりも、止めに行くというのが正しい気がするわね。」

「どちらでも構いませんが、早く動かなければ大変な事になりますわよ。」


時間は無いが、焦って取り逃すのも問題である。

もちろん隼人が感情だけで助けを求めに来たとは誰も思っていないので、雫も光輝も本に何かしらの証拠があると踏んでいる。

侯爵を取り締まるだけのモノがあると信じて隼人が持ってきた研究日誌を手に取ってページを開く。




光輝達が研究日誌を慌てて読み始めた頃、隼人はデ・フィッセル侯爵邸の正面ゲートの前に立っていた。


「後は成るように成れだな。」


そう呟いてから門番を昏倒させ、門を殴り付けて破壊して堂々と中に入っていく。


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