デート
レイラさんとの買い物の約束当日。
昼過ぎ、待ち合わせ場所の商店街の入り口へと向かう。
商店街の入り口に着くと、すでにレイラさんは来ていた。
「こんにちはレイラさん、待たせたか。」
「こんにちはハヤト様、まだ約束の時間前なので、問題ありません。」
「そうか、今日はよろしく。」
「はい、私の知識を総動員して、お手伝いいたします。」
やる気満々といった感じで、使命感に燃えているレイラさん。
ギルドにいる時の淡々とした感じと違って、今日は少しオーバーアクションな気がする。
「そんなに頑張らなくても良いんだけど。」
「だめです。道具で旅の快適さが大きく変わってきます。ここは良い物を手に入れましょう。」
意気込みがすごいな、すごく温度差を感じる。
ここは、テンションを合わせて、レイラさんを頼りにさせてもらおう。
「わかった。今日は、副ギルド長の知識を存分に貸してもらうことにするよ。」
「ふふっ、頑張ります。」
そう言って商店街の中へと歩き出した。
レイラさんは結構近い距離で隣を歩いていて、レイラさんの香水だろうか、風に乗ってときおりフワッと森林のような香りがすごくドキドキする。
そんなことを考えていると、レイラさんと目が合ってしまう。
まずい、これではただの変態みたいじゃないか。何か話題を振らないと。
「レイラさんの私服姿を初めて見るんだけど、ピシッとしててカッコいいな。凄くにあってると思う。」
「ありがとうございます。私は可愛らしい服が似合わないので、こういう服ばかりになってしまうんです。」
少し残念そうな顔を知るレイラさん。
可愛い格好に憧れでもあるのだろうか?
「そうか?ギルドの制服は可愛らしい感じだったけど、似合ってると思うんだけど。」
「ほんとうですか?」
レイラさんの声のトーンが少し上がる。
「ああ、俺は嘘が下手だからな。」
「ふふっ。自分で言う事ではないと思いますよ。でも、ありがとうございます。ハヤト様こそ今日の服装、とても似合っていてカッコいいですよ。」
「ありがとう。実は、服のセンスが良くなくて店員さんに選んでもらったんだ。変人だったけどセンスは抜群だったな。」
「もしかして、ミレディさんの店ですか?」
「よく知ってるな。有名だったりするのか?」
あそこほど強烈なインパクトのある店は王都でもそうそうないだろう。
ミレディさんがかすむようであれば、王都は変人だらけの町になってしまう。
「ある意味では、ですが。ミレディさんを見た瞬間に9割の方が逃げ出すそうです。よく購入までたどり着けましたね。」
「がっちり掴まれて逃げられなかったんだよ。結果的にはよかった気もするんだけど。」
他愛もない会話をしながら、商店街の中を歩き回る。
道具屋や雑貨屋などを何店舗もまわり、旅に必要な道具を買いそろえていく。
レイラさんは本当に色々なことを知っていて、その道具の長所・短所を細かく教えてくれるので、自分好みの道具を選ぶのは簡単だった。
これらを一人で揃えようとしなくてよかった。
途中面白い物を見つける。
見た目はただのカバンなのだが、容量が見た目以上に入る物で、かなり欲しかったが、高すぎた。
レイラさんが言うには、容量の大きさによって金額が跳ね上がるらしい。
道具は一通り揃い、まだ時間が有ったので、この辺りで美味しいお茶菓子を売っている所も聞いておく。
おいしそうな物ばかりで迷ったが、気になったものを何点か購入した。
これで、女神様も喜ぶことだろう。
「今日はレイラさんに来てもらって助かった。」
「お力になれてよかったです。」
「お礼になるかわからんが、予定がなければ夕食でも食べに行かないか?ごちそうするよ。」
その発言に驚くレイラさん。しかし、直ぐに我に返り返事をくれる。
「はい、ご一緒します。」
商店街内の流行っている店に入り、食事をする。
気にしていなかったが、どうやらこちらの世界では、16歳で成人らしい。
ギャップに驚きつつも、レイラさんに勧められたので、断るわけにもいかず、はじめて酒を飲むことにする。
勧められたお酒は、意外と飲みやすく結構飲んでしまったが、ほろ酔い程度ですんだ。
俺は、意外と飲めるタイプなのか?
レイラさんは酔うと結構しゃべるようになり、最近のギルドでの出来事や、愚痴を聞かせてくれた。
周りが結婚していくという話については、返答を曖昧にしておいた。
地雷を踏むわけにはいかない。
俺たちが呼ばれた原因でもあるのだが、やっぱり魔物の数がだんだん増えてきていて、一部を除いて、不安の声が広がっているようだ。
ほかの国では、自称勇者が現れて、鑑定の後、勇者の称号は無く、嘘が発覚したことにより牢屋にぶち込まれるという輩も登場したらしい。
勇者や聖女といった、一部の称号に限り、称号の詐称は犯罪になるようで、見つかればすぐに投獄される。
自称するくらいやる気があるなら、俺よりそいつの方が向いてる気がするよ。
お酒も話も結構盛り上がり、レイラさんは酔ってウトウトしてきてしまったので、帰る事にする。
「レイラさん歩けるか?」
「大丈夫です。」
とは言ったものの、フラフラしているのでしっかり家まで送ってくことにする。
「レイラさん家まで送ってくよ。」
「ありがとうございます、ハヤト様。」
酔うと意外とだらけるレイラさんのギャップは可愛いと思った。




