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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
159/186

不安

誤字報告ありがとうございました。そして投稿が遅くなってすみません。

「ハヤト様、少しお時間をいただいても宜しいですか?」


レイラさんの格好を見て俺の思考が止まる。


「・・・大丈夫だ。」


俺は何とか平常心を装い声を絞り出す事に成功する。上ずってなかっただろうか?

この世界の寝間着はネグリジェかナイトガウンが主流だ。最近、杏華がシースルーというどうしても大人向けになってしまいそうなモノを持ち込んだせいで、貴族界隈で大流行しているそうだ。

・・・そんな事はどうだっていい。

何故こんな時間にナイトガウンの様な物を着て俺の前に現れたのだろうか?もしかして、婚約者のふりでは説得力に欠けるため、既成事実でも作ろうという話なのだろうか?

普段のレイラさんはキリッとしていてキャリアウーマン感を出しているが、パジャマ姿はどちらかというと可愛らしさが出ている。非常に眼福であり、控えめに言っても最高だ。

そんな変な事を考えていたらレイラさんが不思議そうな顔をして自分の格好を確認する。


「・・・あ、大変お見苦しい姿をお見せしました。着替えて出直します。」

「そのままで良いよ。」


レイラさんが顔を赤らめて出直そうとしたところを、反射的に止めてしまう。

仕方ないだろう。俺だって聖人じゃないんだから。


「はぁ、わかりました。」


多少腑に落ちない雰囲気を出しつつも。レイラさんは俺の部屋に入ってきて、ベッドに腰かける。

俺はレイラさんを引き止めてしまった事を後悔しつつ、視線が下に行かないようにしっかりと目を見て話すように心がける。


「先ほど、家の方に手紙を出しました。お父様は王都の屋敷に居ると思いますので、早くても数日後には今回の縁談の詳しい話が聞けるかと思います。その際に同行して貰えますか?」


レイラさんの話は、父親への挨拶の話だった。

レイラさんの実家のファン・デル・フェルデン子爵家は、市民のほとんどがエルフの領地らしい。一応レイラさんの家と相手の侯爵家の知識は勉強しておいた。


「大丈夫だ。取り敢えず、当初の予定通り婚約者ってことで行けば良いんだよな。」

「はい。」


不謹慎かもしれないが、こんなマンガみたいな状況で少しテンションがおかしなことになっている俺に対して、レイラさんの表情は暗い。


「どうかしたか?」

「いえ、ただ少し不安でして。」


レイラさんなりに色々と考え、迷った挙句こうして着替えるのを忘れて俺の部屋に来てしまったようだ。レイラさんの格好にも今の状況にも変な事を考えてしまった自分をぶん殴ってやりたい。


「こんな事をするのは初めてだからどう動けばいいのかわからんし、貴族の話なんて付いていけそうにない。相手の出方次第で対応してくしかないのは辛いが、最悪の場合の手段は用意してあるから大丈夫だ。」


俺はレイラさんを安心させるように笑ってみせる。最悪の場合のカードは用意してあるが、どれを切るかを考え直しておかなければいけないかもしれないな。


「そうですか。せめてお父様の目的だけでも先にわかればいいのですが。」

「普通の政略結婚じゃないのか?」


レイラさんの父親の考えはわからないが、政略結婚の道具としてしか見ていないならガツンと言ってやりたいところである。


「恐らくそれだけだと思いますが、他にも何かありそうな気がしまして。」

「借りが出来たとか、弱みを握られたとかか?」


実はレイラさんの実家は借金まみれだったとかいうオチは無いだろうな。流石に貴族が抱える程の借金の建て替えは出来ないぞ。


「単なる私の思い過ごしならいいのですが・・・。」


そんな会話を何度か続けた結果。

レイラさんは話疲れたのか、安心してくれたからなのか、そのままベッドに倒れて寝てしまった。

俺はレイラさんにそっと布団をかけてあげた後、どうすればいいかもわからず瞑想して朝までの時間をつぶした。

緊張と煩悩で寝る事なんて出来ず、精神統一で何とか乗り切った。





「やっぱり、引き止めるべきだったのですわ。」


場所は変わってアルカディア王国所有の飛行船の上。隼人たちがアルカディア王国を出るよりも数日早く、勇者パーティーはユグドフレア王国へと旅立っていた。

杏華は何度も打診していた隼人の同行の話を雫に切りだす。


「まだ言ってるの?これで何回目よ。」

「ですが。」


隼人の話を聞いた杏華は少し焦り、どうせ目的地が同じならば一緒に飛行船で行こうと隼人とアリアに話をしていた。

しかし、一緒に行けば注目を集めてしまうと考えた隼人は同行に難色を示した。

レイラの話を織り交ぜつつ公私混同はダメだと杏華を説き伏せてしまい、隼人の別行動が決定してしまう。


「隼人の屁理屈に勝つにはもっと逃げ場をなくさないと無理よ。逃げる事は一流なんだから。」

「仕事は仕事で割り切るタイプだからね~目的地が近くても絶対に乗ってこないよ~」


杏華の軽い暴走を結衣も止めに入る。


「それに、もしかしたら目的地は王都じゃないかもしれないからね。」


そして、光輝の発言に全員がハッとした。


「・・・光輝、なんでそんな重要な事言わなかったの?」

「そうですわ!」


先ほどまでの雰囲気はどこかへと消え去り、雫と杏華で光輝に詰め寄る。


「僕も考え直してみてから気がついたんだ。隼人は目的地をはっきりと明言していなかったってね。」


そう、実際は隼人も行き先をわかっていなかったわけだが、隼人自身はそういう目論見があってわざと目的地の話を避けていた。


「となると、依頼主の故郷に行ってる可能性が高いわね。」

「わざわざ隠してたって事は~そ~なのかもね~」


光輝の爆弾発言について考え直た雫と結衣が行き先は違うという結論に至る。


「い、いけませんわ。(それではわたくしのプランが)」

「考えたって仕方ない。会える事を祈ろうか。」

「そうね。王都に居る可能性が無いわけではないわ。」

「ちょっと怪しいけどね~」


そんなこんなで船は上空を進んでいき、隼人の到着から数日遅れでユグドフレア王国に足を踏み入れる。

意外と早い再会があるとも知らずに。


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