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裏方の勇者  作者: ゆき
ユグドフレア編
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マカロン

「という事でレイラさんのお願いでユグドフレア王国まで行って来るよ。」


俺は教会の一室で、ディア達にしばらくアルカディア王国を離れるという報告をしに来ている。

部屋にいるメンバーは俺・ディア・フィーレ・マリエルさんの四人。

ユグドフレア王国に行くにあたって、教会と王宮には話を通しておかなければいけない。ただ国を出るだけで報告しなければいけないのは正直面倒くさい。

まぁ、教会は義務じゃないからしなくても良いのだが、しないと後々怒られることがわかっているので先にやっておく。


「わかったのですよ。」

「・・・・・・ん」


2人の返答はさっぱりした物だった。紅茶を飲みながら自然にGOが出る。

意外とすんなり話が終わってしまったな。


「聖騎士としての仕事はしばらくなさそうか?」


旅立ったは良いが、急に呼ばれるなんて事が無いように恐る恐る確認を入れておく。


「せっかくハヤト様がやる気になっている所申し訳ないのですが、特にそう言った情報は入ってきていないのですよ。」

「別にやる気になったわけじゃないから張りきらないでね。」


著名化計画を進めようとしている割には休暇をしっかりくれるようだ。ホワイト万歳。

このまま、窓際族の様に何の仕事もなく役職手当だけで生きていきたい。


「それはダメなのですよ。」

「えぇ~」


ディアがバンッと机を叩いて立ち上がる。表情は全く怒っていないので、ただのノリでやったような感じだろうか。

少しの沈黙の後、スッと椅子に座り直した。何か気の利いた一言を言ってあげたかったが、いきなりだったので反応が遅れてしまった。ごめん、ディア。


「それにしてもハヤト様が自分から率先して動くのは意外でございますね。」

「何故か皆そういう反応するんだよな。自分で言うのもなんだけど、俺はヤるときはヤるからね。」


俺だって常識人なんだから、やらなければいけない事くらいわきまえている。何故か皆にはそれが上手く伝わらないのだが。


「そうなのでございますか?」

「確かに仕方なく動いてきたのがほとんどだけど、こういう時もちゃんとある。」


困っている人に手を差し伸べる事くらいできる。ただ、光輝みたいにだれかれ構わずではなく、かなり限定的になっているだけだ。


「聖騎士の活動もやる気を出してほしいのですよ。」

「前向きに検討しておきます。」


聖騎士に関しては、やると決まっちゃったからやるけど、なかなか乗り気になれない。

ディアの言う通り大真面目にやってしまうと、光輝と同等以上に目立ってしまうかもしれない。表舞台は光輝にお任せしたい俺にとってはなかなか踏み出せない。そう考えるとただのSランクは丁度いい目立ち具合なのかもしれないな。


「それはやらない人の言い方なのですよ。」


「・・・・・・社交辞令ダメ。」

「ハイ、ガンバリマス。」


女神様2人から釘を刺されてしまった。この世界でもこの社交辞令は通用してしまうんだな。


「ハヤト様もヤる時はヤるとおっしゃっておりますし、きっと大丈夫でございます。」

「ソウデスヨ。」


マリエルさんの援護は大変ありがたいんだけど、その銃弾は俺にも当たってます。

また神託が来てしまったらそれなりの手柄を立てられるように頑張ろう。


「兎に角、今のところハヤト様に活躍してもらう所が無いので、好きにするといいのですよ。」

「わかった。しばらくレイラさんのお願いでアルカディアを離れさせてもらうよ。」


俺のユグドフレア王国行きは特に大きな問題もなく進みそうだ。

向こうで待ち構えている問題は一個だけなので、迅速かつ速やかに事態を収束させて休日を満喫しよう。


「それはそうと、ハヤト様は買ってきた物を差し出すのですよ。」

「・・・・・・お菓子。」

「何で知ってんだよ。」


完全に覗かれてんじゃん。俺にプライベートというモノは存在しないのか?

出すタイミングを失っていたのは確かだが、まさかディアからたかられるとは思っていなかった。


「女神様に不可能は無いのですよ。」


別の所で披露して欲しい能力だなと思いつつ、マジックバッグから昨日結衣の店で買ったマカロンを取り出す。

十数種類の綺麗なグラデーションが詰まった箱を皆の前に置く。


「それは!?最近話題のユイ様のお店のお菓子でございますね。」

「良く知ってるな。」


真っ先に反応したのはマリエルさんだった。この人もお淑やかそうで意外と女子っぽい所があるな。

ディアとフィーレも物珍しそうに箱の中をのぞき込んでいる。


「信者の方からウワサは聞いているのでございます。非常に美味しくお店には常に列が出来ているのだとか。」

「確かにすごい列だったな。」


やっぱり話題になっている様だ。確かに強気な価格設定だが、これだけ珍しい物がショーケースに並んでたら買ってみたくもなるわな。しかも美味い。


「カラフルでコロコロしてるのですよ。」

「・・・・・・可愛い。」

「マカロンってお菓子だ。」


2人は興味深そうに好きな色を手に取って眺める。焼き菓子で焼き色がついていないモノは見た事無いんだな。マカロンって生菓子になるんだったか?その辺りは良く解らんな。

ひとしきり眺めた後、それぞれが口へ運ぶ。


「甘くて美味しいのですよ。」

「・・・・・・ん」

「こっち酸味があってスッキリしているのでございます。」


特に自分がかかわった訳ではないが、結衣が考案したレシピを美味しいと言ってもらえてうれしく思う。


「一応、そこにあるヤツは全部違う味だからな。」

「そうなのでございますか。」

「あぁ。」


フルーツを使ったモノが多いが、プレーンから始まってベリー系・柑橘系さらにはコーヒー・紅茶といったラインナップで十数種類の味が存在していた。

俺はちゃんと全て購入して持って来たが、各種類一個づつしか出していない。


「それでは全種類コンプリート出来ないのですよ。」

「別にコンプリートしなくても良いじゃん。」

「もっと出すのですよ。」


ディアに恐喝されて、俺はもう一セット献上した。全く一個いくらすると思ってんだ?

そんな俺の気も知らずにディア達はマカロンを食べつつワイワイと会話に花を咲かせた。

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