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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
15/186

前日

二人には、いつも通りの服装で行くなと言われたので、服を買いに行くことにした。

お金がそんなに無いという話をしたら、マリエルさんのポケットマネーを貸し付けられた。

前回は神託としてもらったのだが、今回はマリエルさんの厚意でくれるというので、さすがにそれは断って借りる事にした。

マリエルさんは、全く散財しないため、貯まったお金はほとんど孤児院への寄付や、慈善事業で使っているらしい。

そのお金をくれるというのだが、そんなモノ貰えるわけもなく、絶対に返すと約束して借りた。

例によって服屋も一番流行っている所を避けて良さそうな服屋に入ってみる。

入った瞬間、失敗を確信した。なぜならーー


「あらぁん!いらっしゃぁい。」


店員が、ガチムチで体毛濃いめの坊主なのにもかかわらず、紅を引いて挙動がクネクネしていた。

そう、オネェ・・・いや、漢女がいた。


「・・・すまん、店を間違えた。」


すぐさま踵を返し、店を出ようとするが、ガシッと肩を掴まれた。


「そんなに急がなくても良いじゃなぁい。あてぃしが、ビシッとコーディネートしてア・ゲ・ル」


・・・あてぃし!?


「・・・いえ、お金無いんで出直します。」


胸元パツパツではち切れそうなショッキングピンクのシャツを着せられてたまるか。


「試着だけでも良いわよぉん?」


それが嫌なんだよ!肩から手を離せ、力強いなおい。


「店長、そんな事したらお客様がまた逃げちゃいますよ。」


店の奥から救いの声が聞こえてきた。この漢女が店長だと?


「そぉかしらぁん?」

「そうなんです。すみませんお客様、あぁ見えても店長は、凄くセンスが良いので、何でも聞いてくださいね。」


そう言ってペコペコ頭を下げる店員さん。

仕方ない、店員さんに免じて見るだけ見ていこう。

店長のキャラはともかく、服の質はかなり良いと思う。

人気店と遜色ないどころか上なんじゃないのか?

おそらく店長のせいで繁盛しないのだろう。

少し見て回ってみるが、漢女が後ろからついてくる。さすがに鬱陶しいな。


「店長さん、俺に似合いそうな服を一式選んでくれ。」

「店長じゃなくてミレディで良いわよぉん。こんなのはどぉかしらぁん?」


すぐに漢女は俺が普段着ないような、カラフルな服を持ってきた。

異世界デビューをする気はないので、チェンジしよう。


「・・・派手だな。店長、もっと落ち着いた色合いにしてくれ。」

「ミレディよぉ!ミ・レ・ディ じゃあ、これはどぉかしらぁん?」


シックでカッコいい服を持ってきた。マジでセンスあるんじゃないのか?


「・・・試着させてくれ。」

「完璧ねぇ、どぉかしらぁん?」


サイズがばっちりじゃないか。なんでわかるんだよ。


「これ一式いくらだ?」

「銀貨9枚と大銅貨5枚よぉ。でも、大銅貨はおまけしてア・ゲ・ル」


値引きして、こちらにウインクしてくるミレディ。

すごくむさ苦しいウインクだし、服の事がなければ今すぐ逃げ出したい。

しかし、日本円にして9000円か・・・安いし買いだな・・・

肌触りもよくて動きやすいし、ミレディが漢女って事以外は優良店じゃないか。


「買おう。」

「ありがとうございましたぁん。」


とりあえず、服は一式そろったし、マリエルさんに借りた金を返すために、ちょっと魔物でも狩って帰る事にする。



その夜

礼拝堂で目を閉じ、フィーレに会いたいと祈ってみた。

祈れば会えると言われても、何を祈ればいいのだろうか?こんな感じで良かったのだろうか?と思いながら目を開けると、また真っ白な空間にいた。

周りを見回すと、後ろに本を熟読しているフィーレが居た。


「こんばんは、フィーレ」

「・・・・・・こんばんは」


・・・会話の続かない方である。


「ディアから会いに行けと言われたんだが、用事でもあったのか?」

「・・・・・・先生・・・だから」

「ごめん、あの時の一回こっきりだと思ってた。」

「・・・・・・」


フィーレは数ミリ下を向く。なんとなくだけど、うつむいてしまったように見える。

確かにまた来てとは言っていたが、どうやって来ればいいかわからなかったし、とりあえずフォローを入れなければ、会えなくなるかもしれないな。


「フィーレの教え方はかなりわかりやすいし、迷惑じゃなけりゃ、もっと教えてほしい。」

「・・・・・・迷惑じゃ・・・ない」

「じゃあ、これからもよろしく、フィーレ。」

「・・・・・・ん」


どうやら機嫌は治ったみたいだ。

なんとなく視線を戻してくれた気がする。


「この前、魔法も使った実戦訓練をしたんだけど、魔術は牽制程度にしか使えなかったし、知らない間に全身軽いやけどを負ってた。そのあたりの実用的な魔術の使い方を教えてほしい。」

「・・・・・・熟練度と防具」

「魔術については、実戦しかないか。やけどは防具で防げるのか?」

「・・・・・・魔術・・・耐性」

「なるほど、それようの装備を整えればいいのか。」

「・・・・・・ん・・・・・・あと・・・本人の・・・耐性」

「どうやったら耐性を覚えれるんだ?」

「・・・・・・使う・・・才能は・・・ある」

「そっちも実戦になるのか・・・」

「・・・・・・ん」

「じゃあ、使える上位の魔術を増やしていけば大体解決するな。」


フィーレは数ミリづつ左右に頭を振った。


「・・・・・・違う・・・応用の方が・・・効率的」


応用?初級魔術の応用か?

魔力コントロールは確かに初級の方がしやすいだろう。


「・・・・・・魔術は・・・ほとんど・・・初級の応用」


確かに火を出す・操る事が初級で、上級になれば術の効果が決まってくる。

つまり術名がある魔術は、使用魔力、効果範囲、威力を限定しただけの物ということか。


「なんとなくだけど、わかった。いくつかの例外以外は、初級魔術で代用が可能という事であってるか?」

「・・・・・ん」

「じゃあ、中級魔術のアロー系・ランス系ってのは、なんでわざわざややこしい形にするんだ?」

「・・・・・・形の・・・イメージ・・・貫通」


ボールよりも貫通力のある、アローやランスにするわけか。


「形で威力が変わるのか?」

「・・・・・・少し・・・でも・・・大事なのは・・・密度」


攻撃魔術は、魔力密度の濃さと、貫通力のある形状で威力をあげられるのか・・・

そうなると確かに中級・上級魔術のほとんどは要らないな。

ファイヤーボールを圧縮して、弾丸を作ってしまえばいい。


「わかった。ファイヤーボールを小さくする練習をするよ。」

「・・・・・・ん・・・正解・・・えらい」

「ありがとう。」

「・・・・・・出来るように・・・なったら・・・本・・・いっぱいある・・・から」


そう言って後ろを指さすフィーレ。

振り向いて見ると、図書館以上の蔵書量を誇るであろう本棚が延々と広がっていた。

何にも無い空間だけど、何でも有るな。


「・・・これ全部魔術書なのか?」

「・・・・・・ん・・・応用じゃない本・・・いっぱい・・・ある」

「ありがとうフィーレ、また教えてもらいに来るよ。」

「・・・・・・ん・・・いつでも・・・来て・・・バイバイ」


手を小さく振って見送ってくれる。

そのまま、白い光に包まれて、現実世界へと戻った。

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