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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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報告

意識が覚醒すると、真っ白な空間にいた。すぐに神界に来ているとわかり、呼び出した主を探す。

辺りを見まわすと、ディアとフィーレ若干ご立腹な様子でが待っていた。


「ハヤト様、なんですぐに報告に来ないのですか。報連相はとても大切なのですよ。」


予想通りクラーケンとメデューサの事のようだ。


「・・・ごめん。普通に忘れてた。」


王宮で色々あった事とほぼ軟禁状態だった事もあり、教会に行くことをすっかり忘れていた。


「私の聖騎士様なのに信仰が足りていないのですよ。」

「・・・・・・私も」

「私達のなのですよ。」

「以後気を付けます。」


微妙に喧嘩気味なのやめてもらっていいですかね?

それはそうと、今回はうやむやになったとはいえ、神託でここにきている訳だから報告するのは当然と言えるだろう。怠ったのは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。お茶菓子も買ってないし。


「フィーレも何か言ってあげるのですよ。」

「・・・・・・寂しかった」


フィーレはゆっくり近づいて来て、俺の服を掴んでポスッと俺の胸に顔をうずめる。フィーレは華奢な体格だが、しっかりと女性らしい柔らかさがある。密着するのは初めてではないが、初めてではないが故に少しではあるが色々と考える余裕が出来てしまった。


「・・・えっと、フイーレさん?」


少しの余裕が出来たとはいえ、状況が全くつかめない上にドギマギしてどうすればいいのか全く分からない。硬直していると、フィーレは俺の服を掴んだまま上を向く。

相変わらず無表情なのだが、なんとなく怒ってるような寂しさのような雰囲気を感じる。

俺はどうすればいいのか全く分からないままに、取合えずなだめる様にフィーレの頭を撫でる。


「あ~!フイーレだけズルいのですよ!」


フィーレを撫で始めると、ディアも俺に突撃してきた。


「ちょっと、ディアまで!?」


フィーレだけで色々と限界ギリギリなところなのに、ディアのしっかりとした起伏のある身体を押し付けられる。

服の上からでもわかる女性特有の果実の柔らかさが伝わり、頭がオーバーヒートしそうになる。

どうしてこうなってしまったのか?男である以上嬉しくないわけがないのだが、相手が相手だけに理性を飛ばす前に意識を飛ばさなければいけない。

かろうじて保てている理性で、2人が満足するまで頭を撫でた。



「今後は通うように心がけるのですよ。」

「・・・・・・ん」

「わかった。ちゃんと報告するようにするよ。」


全員が落ち着きを取り戻し、話を再開する。


「それで、今日の呼び出しはメデューサの件で良いか?」

「それもありますが、また手柄を捨てようとした件なのですよ。」

「・・・ごめん。条件反射で勝手に目立たない方に動こうとしちゃって。」


ディアが何で俺をアトランティスに送り込んだのかをすっかり忘れていた。そもそも聖騎士にしたのだって俺の知名度を上げるためだったし、今回は忘れていたことが多すぎるな。


「む、すぐに治すのですよ。」

「努力します。」

「今回の一件でハヤト様の株はちゃんと上がったのですが、聖騎士としてまだまだ足りないのですよ。フイーレ、あれを持ってくるのですよ。」

「・・・・・・ん」

「何これ?」


ディアの合図でフィーレがホワイトボードを持ってくる。なんでホワイトボードがあるんだろうか?


「ドーン!なのですよ!」


ディアは掛け声とともにホワイトボードをクルクルと廻し、ガシッと不自然なタイミングで文字の書かれていた裏側で止まる。

そこには何やらおかしなことが書かれていた。


『ハヤト様著名化計画!』


タイトルの様にでかでかとそんな事が書いてあり、所々に強調されて『聖騎士』とか『Sランク』とか色々と書かれている。


「何これ?」

「ハヤト様を有名にする為に、フイーレと考えたのですよ。」

「・・・・・・頑張った。」

「あ~、何て言ったら良いんだろう・・・」


すごい面倒事な気しかしないんだけど、女神様の言う事だから従わないといけないんだろうな。


「まずハヤト様には、Sランクの冒険者に成って貰うのですよ。」

「それはさすがに無理じゃないのか?」


Aランクに上がるのも最速だと言われたくらいだ。知名度の低いこの状態でSランクになったら他の冒険者の反感を買うに決まっている。


「・・・・・・大丈夫」

「実はハヤト様のがSランクに上がる条件はすぐに満たせるのですよ。」

「・・・は?」


・・・マジで?

知名度関係ないの?


「Sランクへの昇格は、1ヶ国以上の王家からの推薦と3ヶ国以上のギルド本部の承認があれば大丈夫なのですよ。」

「詳しいな。」

「・・・・・・勉強した」


どうやらフィーレが冒険者のランク制度を勉強したらしい。

きっと隣でエッヘンと胸を張って自慢げな様子のディアは何もしていないだろう。なんだかそんな気がしてならない。


「ハヤト様の場合、すでにムスぺリオスの推薦はAランク昇格の時点で持っておりますので、ギルドの承認だけなのですよ。」

「なるほど。・・・ん?」


ここで王都ばかりを旅してきた弊害が出てしまったようだ。

俺はこのアトランティス王国で3ヶ国目じゃないか。しかも全ての国でギルドマスターと知り合っている。何も言わなければそのまま終わりそうだが、ディアの事だからきっと何かするんだろうな。

憂鬱である。


「アルカディアとムスぺリオスはすでに問題ないので、あと一つでコンプリートなのですよ。」

「ほら、でも今回ギルド関連あんまり顔を売れてないから難しいんじゃないのか?」

「神託を出すのですよ。」


まさかの神託。さすがの俺もびっくりだよ。


「さすがに神託の安売りはどうかと思う。」

「・・・・・・大丈夫」


何が大丈夫なんだろうか?神託とは言わずにこっそりやってくれるのか?どちらにしろ聖騎士としてなのか冒険者としてなのかは知らないが、仕事をしなければならなくなるだろう。


「フィーレもすごいやる気だね。」

「・・・・・・ん」


働く本人があんまり気乗りしないんですが、今深く考えるのはやめておこう。ハゲそう。


「さっそくテティスに連絡しておくのですよ。」

「・・・・・・ん」


テティスってのは誰だろうか?きっと神様の名前だろうが、その人が穏便に行動してくれる事を切に願う。切に願う。

ワイワイと盛り上がっている2人の女神様を見ながら俺は平穏が遠のいていくような気がしてならなかった。



ディア達への報告も終わり、現実へと意識が戻っていく。




俺達は王宮でさらに数日すごし、特に大きな事件もなくアルカディア王国へと帰還した。

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