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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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奇怪なモノを見る目

仮眠をとって頭痛も治まったので、光輝と合流して国王陛下のいる執務室に向かう。

ノックをして部屋に入ると、国王・フィオレ・騎士団長・アリア王女が待っていた。


「今回の戦いは非常に助かった。さすがは勇者様といったところだね。さっそく本題に入らせて貰うけど、呼んだ理由はダンジョンでの話を聞きたかったからだ。メデューサを倒したのはハヤト殿で良かったかな?」


恐らく光輝達への礼はすでに済んでいるのだろう。国王陛下が俺に対してお礼を言ってくる。

しかしここで素直に礼を受け取ってしまったら、控えている勲章の授与式で俺が立役者の1人であると大々的に発表されるかもしれない。ならば1度とぼけて様子をみた方が良いのかもしれない。


「・・・さぁ?」

「うちのバカが申し訳ありません。」


間髪入れずに雫が俺の頭を押さえつけて謝罪をする。あなたは俺の保護者か何かですか?

ドラマとかでよく見るやらかした息子の頭を押さえつけて謝罪するオヤジみたいな絵面になってるんだけど。


「結果を見てないって言っただろ。俺じゃなかったらどうするんだよ恥ずかしい。」


俺はまだ第三者の介入があって、真っ黒な中二病みたいな奴がメデューサの始末をして去って行ったみたいな展開を諦めてないんだからな。


「ハッハッハ。やはり皆呼んでおいて良かったようだね。メデューサの死因は頭部を下から粉砕された事だよ。ハヤト殿の技で間違いないかな?」

「・・・恐らくそうです。」


俺が否定することは織り込み済みだったようで、逃げ道を絶つ為に皆が呼ばれていたようだ。

状況からして俺の蹴りはヒットしていたみたいだ半分石化していて当たったか不安だったが問題なかったらしい。

雫以外の勇者パーティーの皆は苦笑いで、アリア王女に至っては頭を押さえている。これは後でお小言をいただく事になるかもしれない。


「であれば間違いなくハヤト殿の功績だろうね。」

「ただ、勝てたのはメデューサが冒険者や騎士団と戦ったからであり、俺は美味しいところを持っていったに過ぎません。」


これは真実だ。チラッと見えたメデューサは冒険者とも戦闘で傷を負っていたようだし、さらに騎士団との戦闘で短剣も破壊されていた。

恐らくそのどちらかが欠けていてもメデューサを倒す事は出来なかっただろう。


「そんな事ありませんよ。メデューサは負傷していましたが、我々騎士が出来たのは些細な事だけです。」

「だそうだよ。」


騎士なんだからもっと冒険者を見下して自分の手柄を誇示してくれても良いと思うんだけど、この真面目な騎士団長様はそうしてはくれないらしい。

この様子だとヴァネッサ達にもすでに状況は聞いているだろうし、本当に逃げ場は無くなってしまっているらしい。


「・・・もう、好きにしてください。」


追い込まれた俺は、洗いざらい吐く以外の道は残っていなかった。

そして、俺のわかる限りのことを報告する。

俺が喋れば喋るほどこの場にいる全員の真剣な表情が崩れていく。

話させたのはそっちなのに、報告が終わる頃には俺の事を奇怪なものを見るような目で見ていた。


その後の国王陛下からの話も驚くモノだった。

ダンジョンの最奥部には漆黒の魔石が鎮座していたらしい。かなり大きなものだったが、俺達には見覚えがあった。

大きさが桁違いだが、恐らくアンデッドロードがばら撒いていた魔石と同じものだろう。

国王陛下は俺達の話を聞いて、何かの拍子で起動しないように何重にも封印を施したうえで、人の目に触れない場所に保管することに決めた。




全てを報告し終えて執務室から解放され、自由時間となった。


「これからどうするの?」


雫が全員に問いかける。


「ここから出ちゃダメなら、訓練所でも行って軽く身体を動かしてくる。」


石化でなまっているであろう身体を動かしたい。そして、先ほどの執務室での鬱憤をどこかにぶつけたい。


「だったら僕と組手でもするかい?」

「断る。」


光輝が笑顔でふざけたことを提案してくるので、間髪入れずに断る。


「即答か。」

「だって剣の形が若干変わってすごいオーラはなってるし、なにより光輝の顔がやる気に満ち溢れてるから面倒。」


さっきからずっと気になってたんだが、光輝の剣の形が若干変わっている。それ以前に威圧感の様なものがものすごい事になっている。

恐らく俺が魔力知覚を出来るようになった事が原因であると思うのだが、正直近寄りたくないほどの何かが漏れ出ている。光輝には何とか抑え込んでもらいたいところである。


「残念、解放されたクレイヴソリッシュを試したかったんどけどね。」

「それじゃあ軽くですまないだろ。俺は一人で練習してるから。」


光輝はいつもの少しオーバーな動きでやれやれといった仕草をするが、そんな状態の剣とやりあったら腕の一本や二本斬り飛ばされそうなので勘弁してください。


「でも、僕も訓練所に行くよ。」

「組手は無しだぞ。」


俺は光輝に断固とした態度で釘をさす。


「わかってるよ。」


どうやら光輝も普通に身体を動かしたかっただけのようだ。俺との戦いをあっさりと諦めて、騎士の訓練に交じろうかと呟いている。


「私も行こうかしら。」

「で 、では、わたくしもいきますわ。」

「えぇ~。じゃ~私も~」


光輝に続いて、雫・杏華・結衣も行くと言い始める。


「全員かよ。」

「ま~ま~。いいじゃん仲良しで~」

「・・・そうだな。」


何故か結衣を先頭に、俺達は訓練所へと向かって行った。

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