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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
142/186

決着

クラーケン討伐にSランク冒険者のロレイが参戦てくれたおかげで光輝の負担はかなり改善されたが、決定打に欠けていた。


「ロレイ、再生能力を封じれると言ったのは嘘だったのかい?」

「いやーそれが想像以上にツヨくてね。でもほら、クラーケンの再生速度は落ちてるよ。」


光輝はクレイヴソリッシュで襲い掛かるクラーケンの脚を斬りすてながら、ロレイに悪態をつく。杏華や雫の援護射撃があると言っても、隼人が居ない分クラーケンの攻撃は光輝に集中している。ロレイはあまりクラーケンに攻撃していないからなのか、怒りを買っておらず光輝に比べて攻撃される頻度が少ない。

そんな状況のなか、ロレイはやれやれといった様子で光輝に自分の仕事っぷりを報告する。


「つまり、完全に無効化は出来ないって事でいいんだね?」


光輝は、ロレイ自身が言い出したことを出来ていないという状況に怒り半分呆れ半分で質問を続ける。


「どこまでイケるかわからないけど、徐々に効いてくるからね。ボクの能力は一回じゃ効かなくても重ね掛けが出来るからねね。もうちょっと頑張ってよ。」


真剣な光輝とは裏腹に、マイペースをつらぬくロレイ。


「クラーケンの手数が多くてそうも言ってられないんだよ。君も攻撃してくれないか?」


襲い掛かるクラーケンの脚を斬り飛ばしながら、光輝はロレイに攻撃を頼む。

すでに光輝の周りには斬られたクラーケンの脚が円状に山積みになっており、光輝を中心にバリケードの様に壁が出来ている。


「でもほら、攻撃対象をボクに移されても困るんだよ。基本的に護衛専門だからこういう大型の魔物と戦わないし。」

「余裕で避けながらよく言うよ。君は弱体化に集中しててくれ。」


普段は護衛の途中で出て来る魔物や盗賊としか戦わないロレイにとって、クラーケンのような大型の魔物は天敵であるはずなのだが、そこはさすがSランク冒険者と言えるような華麗な動きでクラーケンの脚を躱していく。


「ガンバってね~」


ロレイはクラーケンの脚をひらりと躱しながら呑気な声で光輝を応援する。


「君こそねっ。倒しても元に戻ったら意味がない。僕がクラーケンを倒す頃には完璧に再生を封じてくれよ。」

「わかってるよ。」


光輝の要望に応える様に、ロレイはクラーケンの弱体化に集中する。


「はあっ!」


光輝も再生速度が落ち始めているクラーケンの脚を斬り続ける。回数を重ねる毎に光輝の剣筋は洗練されていき、切断速度が再生速度を上回り始める。


「あ、また脚が増えたみたいだよ。」

「わかってる。君の首尾はどうなんだい?」


どこか楽しそうに話すロレイの声に、光輝はだんだんといら立ちを積もらせる。その怒りをぶつけられたクラーケンの脚が宙を舞っていく。

クラーケンの脚は50本を超えており、再生速度が遅くなっているといってもほぼ一人で捌ききるのは光輝でも不可能だ。


「そこそこってところだね。良いところまで来てるよ。」

「出来ると言ったからには何とかしてくれ。」


諦める事の無い光輝は、がむしゃらにクレイヴソリッシュに力を込めてクラーケンの脚を迎撃していると、土砂降りで真っ暗っだった空が明るくなり始める。


「・・・!?」

「・・・雨が止んだ?」


徐々に雨脚が弱まり、数秒の内に完全に止んでしまう。先ほどまでの土砂降りが嘘だったかのように日が差し始め、辺りが明るくなる。


「みたいだね。ダンジョンの黒幕が倒されたのかな?」


突然の事態にクラーケンでさえも動きを止めて当たりを確認している。

もし本当に予想が合っていて黒幕がいたのであれば、ロレイの言う通り黒幕と思われるモノが土砂降りを作っていた魔術を行使できない状況に陥ったというなのだろう。


「その確認はクラーケンを倒してからにしようか。このチャンスを無駄にするわけにはいかない。」

「そうだね。」


光輝は、何故かフリーズしているクラーケンの脚を手当たり次第に斬り、剣を構え直して集中する。


「これはもっと後まで取っておきたかったんだけど。」


「何か策があるのかな?」


光輝にとって、晴れているというのはそれだけで力に代わる。魔術を発動するのにその媒体となるモノが在った方が効率がいいからだ。

今までの暗闇では魔力消費量は最悪と言える状態だったのだが、晴れたここからは魔術の効率が格段に上昇する。


「あぁ、そのまま下がっていてくれよ。コントロールが難しいんだ。」

「へぇ、キミの新技には興味あるね。」

「これだけ光があれば多少無茶しても魔力はある程度は尽きなさそうだよ。」


光輝の周りに濃密な魔力が漂い、形を成していく。


「ライトソード×16」


光輝に翼が生えたかのように、光輝の背中の両サイドに光の剣が8本づつ浮かぶ。


「おぉ!」


ロレイは現れた光の剣にテンションを上げ、感嘆の声を漏らす。


「隼人も同じソード系に手を出していたのは意外だったけど。使い方は僕が一歩先を行かせてもらうよ。」


先日の戦いで少しだけ見た隼人のファイヤーソードに対して光輝も驚いていた。アンデッドロードとの戦いでソード系の汎用性の高さを見ているので、当然と言えば当然ではあるのだが、似たような技を求めた事に勝負心が湧き上がってくる。


「はあっ!」


16本の光の剣を器用に操り、クラーケンに攻撃をしていく。ある剣は脚を斬り落とし、ある剣は脚を地面に縫い付ける。


「スゴイね。16本もの魔術を本当に操ってるよ。一本一本の強さもかなりのモノだし、これは見れて良かったよ。」


すっかり観客気分のロレイは、楽しそうに光輝とクラーケンの攻防を見てテンションを上げている。


「OOoooOoooOoooooo!!」


クラーケンも負けじと吠え、光輝に脚を叩きつける。


「・・・チッ!ロレイ、まだかい?」

「もう少しだよ。」

「光があるとはいえ、想像以上に魔力の消費が激しい。」


光輝の表情に余裕の色は無く、肩で息をしていて魔力も体力も残りわずか取った状態だ。


「仕方ないな。倒してくれればなんとかするよ。」


ロレイもそんな状態の光輝を見て、お気楽な口調を止めて真剣な表情に切り替える。


「わかった。信じるよ。」


そう言い残して光輝は一気に攻勢に出る。前に出て、足場のあるギリギリまでクラーケンに近づく。


「OOoooOoooOoooooo!!」


光の剣は光輝の周りを回転するような動きで迫りくる脚を斬り、全ての攻撃をしのぎ切る。


「ライトフォール」


光輝はクレイヴソリッシュを天に掲げて魔術を行使すると、その剣に向けて空から一筋の光が落ちる。

クレイヴソリッシュは光を全て吸収し、数十メートルの光の剣へと姿を変えた。


「はあぁぁぁぁ!!」


一閃


ライトソードを砲台としたレーザー攻撃と、光輝の上段からの振り下ろしで視界が真っ白に染まり、誰もが手で視界を覆う。

音を置き去りにしたような一撃は、一拍遅れて辺りに衝撃波をまき散らす。

轟音と暴風が止んだ後、皆の視界に入ってきたのは剣を杖の様にしてかろうじて立っている光輝と真っ二つになって浮かんでいるクラーケンだった。


「ボクのチカラを使うまでもなく殺しきっちゃっうなんて、さすが勇者ってところかな。」


ロレイは面白いものが見れたと満足そうに呟いた。

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