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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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ダンジョン調査2

「大丈夫か?」


少し落ち着いたところでヴァネッサは声をかける。


「す、スミマセン姐さん。俺はダメみたいです。一瞬目が合っちまいました。」


ヴァネッサは近くに居た人間を掴んで走って退避したが、一人はゴルゴンと目が合い既に半ば石化していた。

直に全部石になってしまうだろう。


「お前はゆっくり休め。」

「はい。」


徐々に石化していくメンバーをさとし、もう一人に目を向ける。


「私はなんとか無事です。」


ヴァネッサが助けたもう一人の人物はアロルドだ。ここでリーダー格を助けられたのは大きい。

そんなアロルドにヴァネッサは次の行動の話をふる。


「置いてきた奴らがどれだけ残っているか確認しないといけないな。」

「そうですね。最悪の場合2人で戦いますか?」

「それしかないだろう。ゴルゴンが外に出る方が不味い。それに、騎士が来る予定だ。少しでも時間を稼がなければいけない。」

「わかりました。私も覚悟を決めましょう。」


2人の意見は戦う事に決定する。

クラーケンも生きているかもしれないこの状況で、ゴルゴンまで外に出してしまったらそれこそ手におえない大惨事になるだろう。

何とかして最悪の状況を回避するために2人は動き始める。


「ゴルゴンの石化の魔眼に対して有効手段はあるか?」

「目を合わせなければ良いと言うのであれば、ウォーターシールドで視線をねじ曲げる程度しか出来ませんね。」

「それでも余波は喰らうぞ。」


睨まれるだけで徐々に石化させられ、視線を合わせれば一瞬で石化してしまう程の魔眼である。視線を阻害する手段は悪くないが、完全には防げないのでいずれは石になるだろう。


「一応石化のポーションは持ってます。それでも気休めにしかならないでしょうが、無いよりはましでしょう。完全に石化される前に倒しきるしかないですね。」

「わかった。では、目標は時間内に倒しきること。出来なければ後から来る騎士のために少しでもダメージを負わせることだな。」

「わかりました。あんなのがいるとわかっていれば、もっと万全な対策をとれたんですけどね。」

「そう言うな。状況は良くないが、何とか切り抜けよう。」

「頑張りましょう。」


アロルドは石化のポーションを取り出し、ヴァネッサにも渡す。

2人はそのポーションで乾杯し、一気にあおる。そして、ゴルゴンの待つダンジョンの最奥へと戻っていく。



ダンジョンの奥。一緒に来た調査班は全員が石化し、武器を構えたまま動かない彫刻と化していた。

2人はその間を縫うように歩き、ゴルゴンの見える位置まで近づいていく。ゴルゴンは暇そうに石の上に座って足をばたつかせて待っていた。


「あら、戻ってきたの?残念ながらお友達は皆は石になってしまったわよ。それに、一人減ってるわね。」


足音で2人が戻ってきたことに気付いたゴルゴンは、振り返る事無く問いかける。


「残念ながら石化してしまったよ。それと、アタシ達はキサマを倒す準備をしてきただけだ。」

「彼らが稼いでくれた時間は無駄にしませんよ。」

「言うほど稼いでいないわよ。全員を石化した後にゆっくりしてただけ。」


ゴルゴンはアロルドとヴァネッサの挑発をさらっと躱し、逆に煽り返す。



「キサマ!」


ゴルゴンの挑発に乗り、ヴァネッサが動き出す。目にもとまらぬ速度でゴルゴンに接近する。


「それじゃあさっきと同じじゃないーーーーあら?」


先ほどのジルドの二の舞で終わると思いながらゴルゴンは振り返るが、そこにヴァネッサはいなかった。

ゴルゴンが振り返ると同時にさらに加速し、後ろへと回り込む。


「あぁ、この我が身を蝕む刺すような痛み。・・・イイ。」


ヴァネッサの纏いが発動し、ヴァネッサの身体にバチバチと放電現象がおきる。体質でほとんどダメージがないといっても、身体に直接纏いを使うのは痛みを伴う。

しかし、ヴァネッサの趣味嗜好からすると問題ないレベルである。

自身をも傷つける纏いに気分を高めながらヴァネッサはゴルゴンに攻撃を繰り出していく。


「相変わらず速いですね。あれなら視線を合わせる事はなさそうですが、一歩間違えれば一巻の終わりですね。そうならない為に私が居るんですけど。」


アロルドはウォーターシールドで歪む視界の中で、ヴァネッサの戦闘速度に目を慣らす。


「サンダーランス!」


ヴァネッサはゴルゴンの視界に入らないように移動を繰り返し、サンダーランスで攻撃を重ねる。


「アナタ、あり得ない技を使うのね。」

「そいつはどーも!」


ゴルゴンは人間が使えるはずもない纏いに苛立ちつつも、ヴァネッサの攻撃を避けて何とかヴァネッサを視界に納めようと視線を動かす。


「私の事も忘れてもらっては困りますよ。」


そんなゴルゴンに、アロルドは後ろから斬りかかる。


「クッ。2対1は卑怯じゃないかしら?」


ゴルゴンは自前の短剣で何とかアロルドの攻撃を防いで文句をたれる。


「勝たなければ意味がないので仕方ないですね。・・・やはり、ウォーターシールドでは魔眼を防ぎきれませんね。」


アロルドはゴルゴンとの鍔迫り合いの中、徐々に体が重くなっていくのを感じ、若干の焦りを感じる。


「2対1でも、アナタたちも無駄死にになりそうね。」


残りの冒険者は2人。1人は魔眼が徐々に効き、1人は視界に捉えれば終わる。状況的にまだ有利を悟ったゴルゴンは余裕が生まれて軽口をたたく。


「それはどうでしょうか?」


しかし、2人と言ってもSランクとAランクの冒険者だ。すぐにやられるような人たちではない。


「ハァッ!」


アロルドとの鍔迫り合いに集中しているゴルゴンに今度はヴァネッサが攻撃を仕掛ける。


「チッ!ちょこまかと鬱陶しいわね!」


アロルドに集中すればヴァネッサが。ヴァネッサに集中すればアロルドが攻撃を繰り出し、ゴルゴンを翻弄していく。


所属しているパーティーは違えど地元の高ランク冒険者なので、戦い方は何となくでも把握している。

アロルドを盾役にして、ヴァネッサが遊撃を仕掛ける。攻めきれず決定打こそ無いモノの、2人はゴルゴンに手傷を負わせていく。

しかし、無情にも時間が経って状況は一変する。


「あら、もう終わりみたいね。」

「・・・すみません。後は任せました。」


アロルドは時間切れでヴァネッサにひと言残して完全に石化してしまった。


「とうとう1人になったわよ。」

「・・・チッ!仕方ない、アレを使うか。」


ヴァネッサは身体の魔力を高め、一気に開放する。


「オーバードライブ!」


ヴァネッサの身体を駆け巡っていた電流がいっそう強さを増す。身体からスパークがあふれるというよりも、人体がプラズマ化しているような状態へと変化する。


「アナタ、本当に人間なのかしら?」


ヴァネッサの速度は更に上がり、通った後は電流が尾を引いて軌跡が見える。


「あぁ、この雷に身体が侵食されていく感じ・・・ゾクゾクする。」


しかし、この状態が長く持たない事はヴァネッサ本人が一番わかっている。持って2.3分それ以上続ければ元に戻れなくなる。

その為、ヴァネッサは勝負を急ぐ。


ゴルゴンの周りを駆け抜けながら、サンダーランスを全方向から発射して撹乱する。

360度全方向から飛来するサンダーランスをいくつか喰らい、ゴルゴンは舌打ちをする。

そして、タイミングを見計らってヴァネッサは止めの一撃を繰り出す。愛槍に最大級の纏いを使い、ゴルゴンめがけて突きを放つ。



それはただの偶然だった。

急に高まる魔力に惹かれる様にゴルゴンは振り返る。眼前にはヴァネッサの槍が迫っていたが、槍を握っている本人と目が合う。合ってしまった。

ヴァネッサの槍はゴルゴンの右目を少しだけ突き差し、石化して止まる。


「私の目が!」


ゴルゴンは数歩後ずさって右目を押さえる。

サンダーランスを喰らって所々が焼け焦げ右目を失うも、最後に立っていたのはゴルゴンだった。


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