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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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巡回

「良いかキサマら!ダンジョンの調査に結構な戦力を投じた今、町の治安を守るのは残った我々の義務である!今回は冒険者と合同ということもあって、勝手が違うだろうが----」


翌日、ダンジョンの調査隊が出発し、俺達は騎士のお偉いさん?からありがたいお言葉をもらっている。


「ーーーー騎士と冒険者が手を組むことはほとんどないが、今回のクラーケンとの戦いで我々は協力しあえると確信している!水中戦に特化しているーーーー」


・・・長い。


「ーーーーお互いに至らぬ点をフォローし合い、アトランティスの強さを示してくれたまえ!以上だ!」


・・・非常にありがたいお言葉だった。

この時間で合同訓練でもした方が連携がとれるようになって良かったんじゃないのか?まぁいいや。騎士と冒険者とで小隊を組んでの警備が始まる。

といっても、普段騎士がやっている巡回に冒険者が参加するだけなのだが。

ボッチの俺は、言われるがままにチームの場所へと案内される。



「やっと来たわね。」

「・・・謀ったな。」


そこにいたのは勇者パーティーの方々。

チームメンバーをみて俺は肩を落としてうなだれる。


「サボり常習犯の監視よ。」

「残念だったね隼人。」

「ま~ま~。一緒の方が楽しいよ~ルーちゃんこっちおいで~」

「ガゥ」

「結衣さんズルいですわ。わたくしもルーさんをモフモフしたいですわ。」


雫と光輝は平常運転で、結衣と杏華はルーに夢中のようである。


「・・・最悪だな。」


結衣がループスを抱きかかえた状態で、俺達は歩き出す。

巡回ルートは光輝達に知らされていて、皆についていくように俺も共に行動を開始する。



どうやら俺がチームに入る事をむこうサイドは知っていたようで、特に驚くこともなくすんなりと合流してしまった。

確かに結衣が言った通り、知った顔が居るのは良いことだが、もっと浅い付き合いの人に変えてほしいところである。勇者パーティーは俺の事を知りすぎていて手を抜けばすぐにバレるのはかんべんしてほしい。

ふと思い返してみると、今回の俺の勇者チーム入りは事がうまく運び過ぎている気がする。アトランティスの冒険者でもない俺を王宮に呼ぶところからすでにおかしい。

ジーノが俺の事を知っていたとしても、あの時点では戦闘面だけであって人物像は解らなかったはず。Aランクだからといって王宮に招き入れるのは理由としては弱い。どこかから推薦されなければそんなことしないだろう。

そして、勇者パーティーの持ち場の発表のタイミングは俺に合わせるように最後だった。

となると答えは1つ。


「雫、謀ったな。」

「どうしたのよ急に。さっきと同じこと言ってるわよ。」


雫の頭上に疑問符が浮かぶ。


「誰かさんの手の平の上で踊らされてたんだと思って。」

「な、なんでそう思ったのよ。たまたま偶然に決まってるじゃない。」


雫はあからさまに一歩下がってたじろいだ。これは確定だな。


「嘘、下手かよ。」


さすがに真面目が売りの雫だけあって、人を騙すような行動は苦手なようだ。頭がいいから相手の行動を読むことはできるも、悪い事は出来ないのだろう。


「ま、まぁそんな事よりも女神様の所には行ってきたの?」

「露骨に話をそらしたな。行ってきたよけど、神託みたいな大した情報は貰えなかったけど。」

「そうなの?」

「行っても真面目な話は近況報告する位のもんだよ。普段は雑談しかしてないし。」

「意外ね。もっとお堅い関係だと思ってたわ。」

「あぁ、皆が会ったディアは真面目モードだったからな。普段の様子だと堅い感じにはなりそうにないな。」


皆がディアにあったのは勇者のお披露目式の時だ。ディアは真面目というよりも、ただただ淡々と業務をこなして帰りたかっただけなのだが、そっけない感じがお堅く見えてしまったのだろう。

その場に俺が居たら絶対にディアをいじってた自信がある。


「そうだったのね。普段の女神様に会ってみたいわね。」

「あんまりおススメはしないけど。それで、ディアが言うには俺の活躍の場がまだ残ってるらしい。普通に考えればクラーケンがまだ生きてるとかそんなところだろう。一昨日の国王の話でもそんなような話し方だったし、新しい情報でも無かったな。」

「確かにそうね。クラーケンの脅威が残っている可能性があるからこの警備体制なわけだし。」

「そのクラーケンの強さについても色々と情報が入ってきているんだ。あのバカげた再生能力があるから、瀕死でも生きていれば回復する可能性が高くてね。」


光輝はやれやれといった仕草で話しているが、声は真剣そのものだ。

自信家であり何でも余裕でこなしてきた光輝は、クラーケンを仕留めきれなかった事に思う所があるのだろう。


「そう考えるのが妥当だよな。ディアの言葉からからすると俺は戦う事になるだろうから、クラーケンが生きてるのであれば、ダンジョンではなく、町に現れる可能性が高い。警戒は怠らないようにしておかないとな。」

「・・・どうしたんだい?そんなにやる気を出して。」

「変なもの食べたんじゃない?」


俺の前向きな言葉に2人は驚きの表情を隠せないでいた。そしてナチュラルに罵倒してくる。


「少し真面目になっただけで言いたい放題だな。ディアにもっと活躍してくれって言われたんだよ。」

「クラーケン討伐のトドメを譲ろうか?」


光輝は毒気を抜かれたような表情でそんな提案をしてくる。

普通の人ならうれしいのだろうが、俺にとっては全くうれしくない提案だ。

ただでさえ何故か勇者パーティー入りして歩いている俺を奇特な様子で覗き見られている現状で、勇者からクラーケンのトドメを貰うなどという接待があった日には変なウワサが立って大変な事になるだろう。


「そんな事してる余裕のある相手じゃないだろ。それに、軟体動物に対して打撃は相性が悪い。殻は割ってやるから光輝が本体を斬れ。」

「無難な作戦だね。」

「わざわざ変な作戦で危険をおかす必要もないだろ。基本方針はそれで、倒せるやつが倒せばいい。」

「そうだね。隼人も僕に遠慮しずに戦ってくれてかまわなーーーー」


光輝の言葉の途中で、ポツリと雨が落ちてくる。キョロキョロと辺りを見まわしていると、一気に雨が降り始める。

民家の屋根の下に一時的に避難して一時的に雨をしのぐ。


「急に降ってきたわね。」


すでに土砂降りとなり、一歩でも出ればずぶ濡れは間違いないという状態。太陽は見る影もなく、空は黒く分厚い雲に覆われている。


「濡れた~」

「ガゥ・・・」

「先ほどまで晴れていましたのに、困りましたわね。」

「クラーケンが来たんじゃないのか?」

「そうかもしれないね。海側に行こう。」


俺と光輝の言葉に全員が頷いて、濡れる事もお構いなしに海の方へと走り始める。

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