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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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乙女の勘

本当に王宮から歩いて帰らされる事になってしまった。

国王陛下は馬車を手配してくれようとしたが、丁重に断った。

国の紋が入った馬車に乗る勇気がなかっただけだ。そんなものに乗った日にはたちまち巷で噂の人物になってしまう。ごめん被りたい。

光輝達の本音としては、俺も王宮に泊めて行動を管理したかったようなのだが、それについては女神様の指示をあおぐという苦し紛れの言い訳で押し切って帰ってきた。



そんなわけで、教会という目的地が追加されてしまった。

明日も一日あるので、行くのは明日にしよう。


「しっかし、歩くと遠いな。」


町のあらゆる所に大小様々な水路が張り巡らされており、渡るのにいちいち橋を通らなければならないのは面倒だ。

当たり前だが、緊急時以外は水路を飛び越えてはダメらしい。

雫に絶対にやるなと釘を刺されたが、俺だって常識くらいはある。誰も見てないところでしかしないよ。



王宮に居た時間はそんなに長くなかったのだが、町をふらつきながらゆっくり帰るとやはり時間がかかる。

泊まっている宿につく頃には夕方になっており、国王と話すという気疲れもあって飯を食って寝た。



翌日、アトランティス王国の教会を訪れる。

入り口で男神と女神の石像に迎えられる。国柄的に水とか海とかに関係ある神様だろうか?

まぁ、俺が祈る相手はディアだからこの二柱が誰であろうと関係ないのだが。



「ハヤト様。もっとドカンと活躍しても良いのですよ。」


いつものように真っ白な空間で目を開くと、プンプンといった様子のディアに迎えられる。

怒ってはいないが、コラッと軽く注意してくるお姉さんのような感じだ。


「開口一番にそれかよ。ディアには悪いけど、そこまでの活躍は目立つからしないぞ。」

「聖騎士になっても相変わらずなのですよ。」

「ディアも変わらなくていいって言ったじゃん。」


そもそも無理矢理称号を押し付けられたのであって、自分の意思でなったわけじゃないんだし・・・

まぁ、成ってしまったものはしょうがないんだけど。


「それは建前なのですよ。」

「そうだったの?なんかゴメン。」


そういう系の建前はわかりづらくてしかたない。

中途半端にやりたくないから称号の件は無いモノとしてしまったけど、女神様本人からそう言われてしまうと少しは自覚を持った行動に変えなければいけないのかもしれないな。

面倒だけど。


「もちろんこうなる事は予想できてましたし、やる気が出てくれたらラッキーくらいに思ってたので良いのですよ。」


どうやら、ディアはちゃんと俺の事を理解してくれている様だ。ちょっとやそっとじゃ俺の面倒臭がりは治らないぞ。


「かなりぶっちゃけたな。そもそも活躍してほしいなら相性を考えてくれよ。クラーケン相手はさすがにキツいぞ。」


今回は、下が海で上からは雨とか俺が完全に無能と化す一番呼んだらダメなやつじゃん。


「でも、ハヤト様は身体強化と纏いがほとんどで、属性魔術をメインとして使っていないのですよ。」


ディアがかなり痛いところをついてくる。思い返せば、楽な戦いでしか魔術戦闘をやっていない気がする。心のどこかで拳の方が信頼できると思っているのだろうか?


「・・・確かに。でも纏いは属性攻撃だし、牽制でちゃんと魔術使ってるから。それに、軟体動物に対してメインの打撃も効かないし。」

「それはそうですけど、私も私で神界でいろいろあるのですよ。聞きますか?」

「・・・遠慮しとく。」


神界の事情なんて知っても良い事なんてないだろう。


「その方が良いのですよ。」

「まぁ、アトランティスでやることも大半は終わったし、活躍の場なんてもう無いだろ。」


国王側は何か情報を掴んでいるのか、クラーケンが生きている可能性を考慮していたが、あそこまでボコボコにしたんだから恐らく生きてはいないだろう。良くても重体で、捜索隊の戦力で何とかできるレベルのはずだ。


ダンジョンの捜索も断れたことだし、警戒態勢が終わるまで町の警備をしてお役御免だな。


「それが、そうでもないみたいなのですよ。」

「・・・まじ?」


女神様のお告げがここで出ちゃうのか?


「私の乙女の勘がそう言っているのですよ。」

「・・・乙女?」


まさかの勘である。しかも乙女の勘。もう神様関係ないし。さらに言ってしまえばどこに乙女が居るのやら。


「心から思ってるじゃないですか!ハヤト様はヒドイのですよ。」


平然と心を読まれてしまった。これはしょうがなくないか?乙女の勘とか根拠として弱すぎる。


「ゴメンゴメン。ディアほど清らかな乙女は世界中どこを探しても居ないよな。」

「むぅ、口だけで誤魔化しても無駄なのですよ。」

「本当すいません。」


ディアは頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。最近ディアの威厳が無くなってきた気がする。まぁ、謝るけども。


「許してほしければ、聖騎士の名に恥じない働きをするのですよ。」

「・・・誠心誠意努力します。」

「覇気が足りないのですよ。」

「・・・頑張ります。」


とりあえず、来るかもしれない脅威に備えて準備しておこう。

またクラーケンが攻めてくるなら、調査の方が楽だったのかもしれない。今さら後悔しても遅いんだけど・・・

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