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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
130/186

情報提供

「まだなんとか息はあるみたいね。もう一仕事してもらいましょうか。」

「・・・」


女は、命からがら海底洞窟付近にたどり着いたクラーケンに話しかける。


「ケガは適当に休ませれば勝手に治るかしら?それと・・・そうね、『狂化の針』を追加しておきましょう。」


女は、ほとんど動かないクラーケンの身体に、鈍く光る針を何本か差し込む。針は何の抵抗もなくクラーケンの身体に刺さり、根元まで入って見えなくなる。

クラーケンの身体がドクンッと一度痙攣するが、針を刺した跡は何事も無かったかのように傷1つ残っていなかった。

そんなやりとりをしている途中で、背後から足音が響く。


「誰?・・・アナタでしたか。何でこんなところにいるのかしら?今回の企みには参加しないって言ってたはずだけど。」

「・・・成り行きで来ちゃったから、取り合えず話だけでもしておこうかと思って。」


後から来た人物は、邪魔をしに来たわけではない事を話す。


「洞窟に独りってのも楽しくないから、話し相手にでもなってよ。」

「いいね。キミたちの計画からあすると、今回の攻撃は少しやり過ぎてるんじゃないかと思うんだけど、真意はどうなのかな?」

「言いたいことは解るわよ。この場所にいたクラーケンを半分石化してから針を刺したんだけど、反応がないから何本も刺したのよ。そしたら想像以上に凶暴化しちゃって手がつけられなくなったから、諦めて好きにさせたの。」


女は自分の過ちを気にすることなく、やってしまったものは仕方がないと言った様子でへらへらしている。


「今、まさに針を追加してたみたいだけど?」

「勇者が来ちゃったから、攻撃してもらおうかと思ってね。最悪、1つくらいなら国を滅ぼしちゃっても大丈夫じゃない?暴走したクラーケンがやったことだからワタシは知~らない。」

「・・・」

「話に来たと言う割には口数が少ないのね。邪魔しないのであれば問題ないわ。ワタシはクラーケンの暴れっぷりを見て楽しんでるから。」

「・・・」


女の無責任な様子にあきれつつ、後から来た人物は洞窟から出ていった。




翌日、光輝達は国王に呼ばれて執務室にいた。


執務室には、オズワルド国王、フィオレ、ダリオ、光輝、結衣、雫、杏華、アリアがそろう。


「お忙しいところ、お時間をとっていただきありがとうございます。早急な対応に感謝します。」

「ダリア商会との仲だから構わない。と言いたいところだが、この後も色々と用事があってね。早速本題に入ってくれ。」


礼を言って、深々と頭を下げるダリオにオズワルドは本題を話すよう求める。


「わかりました。陛下のお耳にいれておきたい話は一つです。商業連合でもきな臭い動きが見られます。」

「きな臭いとは?」

「何でも、どこかの商会がご禁制の品を出荷しているようなのです。」

「成る程な。しかし、それは私の耳に入れるような話なのか?」


暗い面持ちで話すダリオだが、オズワルドは商業連合の内情を話されて困惑する。

空白地帯である商業連合地区での出来事に、アトランティス王国としてかかわることは到底不可能だ。

救援物資や復興の資材を依頼している商会ではあるが、商人同士のいざこざは別問題である。


「勿論でございます。その品と言うのが、魔物を強化するマジックアイテムのようなのです。」

「それは!」


魔物を強化するマジックアイテムと言う単語にアリアが反応する。


「何か知っているのか?」

「はい。先日のアルカディアの大進行でも発見されました。魔物を亜種以上に強くするマジックアイテムですね。私たちのところに現れたのは勇者様が倒せましたので良かったのですが、あのタイミングでもっと高ランクの魔物が強化されていたら不味かったかもしれません。今回の旅の中で、そのマジックアイテムの危険性についても報告して回っています。」

「それほどとは・・・」


アリアの話にオズワルドは顎に手を当てて真剣な表情で考える。


「終わった話ではありますが、今回のクラーケンも似たような事が起きていたかもしれません。死体を回収して解剖された方が宜しいかと思います。」

「確かクラーケンの死体は沈んで行ったな。特殊個体かと思っていたが、マジックアイテムがかかわっているとなると話が変わってくる。回収を急がせよう。」

「斬った脚が生えるなど聞いたこともありませんし、そもそもクラーケンはあれほど強くないはずです。」


パズルのピースがサクサクとはまっていくように会話が進んでいく。


「そうだな。そして、問題は人間がそれに関与しているかもしれないと言ったところか。」

「その通りでございます。最悪の場合、魔王と通じている者が居るかと。」


可能性の一つではあるが、不可解だったクラーケンの強さ、何故か降る大雨、大進行の様な魔物の総攻撃。そのすべてが今回の話で説明がつく。

そして、オズワルドは考えたくなかった事実を口にする。


「敵は魔王だけでは無かったか。ダリオ殿は、どこの商会が怪しいか当たりは付けているのか?」

「残念ながら出来ておりません。それどころか、少しうかつに踏み込みすぎてしまったかもしれません。」

「へまでもしたのか?」

「確定ではありませんが、どうも悪い予感がします。念には念を入れて強力な護衛を雇って商業連合を離れ、陛下に報告しに来た次第でございます。」

「解った。裏切り者の件はこちらで引き継ごう。アリア殿もそれでよろしいかな?」

「もちろんです。戻り次第お父様に報告させていただきます。」

「そちらは頼んだ。」

「はい。」


本来、商業連合内でのいざこざであれば国の介入はしないのだが、もし本当に魔王と人間が通じているのであれば、アトランティス王国どころか世界中の国が動かなければいけない状況である。


「ダリオ殿は無理をしないようにしてくれ。」

「わかりました。私は少しこちらに留まってから商業連合に戻らせていただきます。御用があれば何でもお申し付けください。」

「わかった。」

「貴重なお時間を頂きありがとうございました。」

「こちらこそ、情報提供に感謝する。」


ダリオは一礼して部屋を去っていく。


残ったそれ以外のメンバーは、先ほどの話の対応について軽く話を進める。


「さて、勇者殿は今の話をどう思うかな?」

「クラーケンの事は良く解りませんが、引き起こした黒幕が居るのであれば、今回の一件はまったく終わっていないと思います。」

「そうだな。一刻も早く黒幕を倒さねば、第二・第三のクラーケンの様な魔物が現れてもおかしくはない状況だ。次が来る前に終わらせねばならない。協力してくれるか?」

「もちろんです。」


光輝は当然の様に協力要請を快諾し、今後の作戦を話し合う。

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