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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
129/186

ダリア商会

クラーケンとの戦いが終わり、勇者一行は王宮へと案内され、国王陛下と対峙することとなった。


「私がアトランティス国王オズワルド・フォン・アトランティスだ。」


現アトランティス国王のオズワルドは30を過ぎたくらいだろうか。フィオレと少し離れていると言っていたが、今まであってきた国王に比べるとずいぶんと若い。


「はじめまして。私は異世界から召喚された光輝です。こちらが、同じく召喚されたパーティーメンバーの雫・結衣・杏華です。」

「コウキ殿、救援要請に答えて頂き感謝する。それと、緊急事態で盛大にお迎えも出来ず申し訳ない。」


オズワルドは光輝達に深々と頭を下げる。


「こちらこそ着いて早々にですぎた真似をしてしまいました。」

「いやいや、勇者様方の活躍には助かった。これで国の危機もある程度は去ったと言えよう。」

「ある程度?」


光輝はオズワルドの言葉に引っかかる。

確かに親玉を倒したからと言って終わりではない事は解るが、今回の戦いでは残党狩りもほとんど出来ている。

サハギンやマーマンが襲ってきたところで、戦力としては人間が有利であるはずだからだ。


「まだ1つ不安要素が残っている。今回のクラーケン発生の調査だね。残党狩りの延長のようなものだからこちらで対処しよう。」

「せっかくここまで来たのですから、最後まで手伝わせてください。」


光輝はいつも通りのお人好しが出てしまい、自ら名乗り出て調査にも首を突っ込もうとする。

そんな光輝の様子に、雫は頭を押さえ、杏華と結衣はやれやれと言った表情になる。


「それは嬉しい申し出だ。存分に勇者の力を振るっていただきたい。」

「お任せください。」


オズワルドは光輝の申し出をありがたく受け取る事にした。戦力が増強された事に喜びつつ、頭を悩ませていた不安材料も、光輝の参戦によってスムーズに片が付きそうなので安堵する。

フィオレはというと、純粋な善意で何の見返りもなく救いの手を差し伸べる光輝を好意的な目で見ていた。

その視線に気づいてしまったアリアと雫は、2人そろって小さくため息をついた。


「さて、今日は皆お疲れだろう。戦いの詳しい話は明日するとして、今は戦いに参加してくれた皆の労をねぎらおう。ホールで歓迎会の準備をしてある。楽しんでいってくれ。」

「ありがとうございます。」




堅い話を終え、少しの休憩を挟んでパーティーが始まる。


「今日は皆、集まってくれて感謝する。色々とタイミングが重なり、盛大にパーティーが出来る事を嬉しく思う。先ずは幾度とない襲撃の対策に助力してくれた貴族諸君。そして、はるばる助太刀に来てくれた勇者様方。最後に、いち早く救援物資を届けてくれたダリア商会。皆の支えがあってこそのパーティーだ。疲れもあるだろうから、今日は緊急の要件以外はお堅い話も無しにして存分に盛り上がってくれ。乾杯!」


「「「「「乾杯。」」」」」


オズワルドの音頭で乾杯し、各々談笑に花を咲かせ始める。

参加者には、事前に勇者達への挨拶は控え目にするように通達があったようで、本当に必要最低限の挨拶しかしなかった。

その為、勇者パーティーは気疲れすることなく楽しく過ごせている。主に結衣が楽しそうにしている。



「やぁ、奇遇だね。」


光輝の後ろから声がかかる。振り向くと、ロレイが立っていた。


「君は、こういう所は嫌いじゃなかったのかい?」


光輝は疑問を口にする。ムスぺリオスでは隼人のように表舞台から逃げているような印象があったからだ。


「そうだよ。ボクは護衛で仕方なくここにきているんだ。」

「なるほど。こんなところまで来るなんて、さすが護衛のスペシャリストといったところか。」


普通は王宮内まで護衛で来るなんてありえないだろう。


「誰の護衛できたの~?」


結衣が会話に参加する。


「さっき紹介されてたダリア商会会頭の護衛だよ。」

「おぉ~大物だ~」


国王がわざわざ貴族・勇者に並べて発表したほどの人物である。なみの商人ではない事くらい想像しやすい。


「本来の護衛ならこんなところまで来ないんだけどね。会頭も用心深いったらありゃしない。」

「聞いてる限りでは大商会のようだし、用心深いのは良い事じゃないのかい?」

「ココをどこだと思ってるのかな?普段からこの国にいる貴族ならまだしも、商業連合地区に居城を構えるダリア商会会頭がアトランティス王国の王宮で狙われるわけないじゃないか。」

「確かに確率は低いだろうね。」


王宮には兵士たちが詰めており、セキュリティは万全だ。

普段は国外にいるのであれば、パーティーで暗殺されるような反感を買う事はほとんどない。

ダリア商会の会頭は、相当な用心深さといっても過言では無い。


「商業連合ってなに~」

「こっちでの授業で教えてもらった話じゃない。商業連合地区は商人たちの町で、この世界の物流の中心よ。アルカディア王国の大進行の後も商業連合から物資の搬入があったはずよ。」

「なるほど~」


雫は、いてもたってもいられず、結衣に説明を入れる。


商業連合地区は、どの国にもある程度容易にアクセスできる為、自分たちだけでなく行商人も多くいきかう事によって無いモノは無いと言われる程にすべての物が流通する地区である。


「そう、商業連合地区は地図上ではどこの国にも属さない空白地帯なんだけどね。五大商会を中心に議会制で法整備もされている国と言っても過言では無いような町だよ。ダリア商会はその五大商会の一つだね。」

「そんな重要人物が、なぜこのタイミングでこの国に来ているんだい?」

「詳しくは知らないけど、商業連合は国ではないからね。会頭は一応この国の人間なのさ。その辺が関係しているんじゃないのかな?」


光輝のもっともな質問にロレイはフワッとした返答をする。はぐらかしている訳ではなく、本当に知らない様子だ。


「危険を冒してまで自国に救援物資を届けに戻ってきたのか。なかなかの人物のようだね。」

「そうでもありませんよ。今回は別件もあったので私が来ただけなのですが、周りに方々に好印象に取られてしまっただけです。」


ロレイと勇者パーティーの会話に、後ろから恰幅の良い中年男性が割って入ってくる。


「あぁ、この人がダリア商会会頭だよ。」


丁度よかった。とでも言うかのように、ロレイは入ってきた男性の紹介をする。


「はじめまして勇者パーティーの皆様。ダリア商会会頭ダリオ・ダリアと申します。以後、お見知りおきを。」

「はじめまして。勇者の光輝です。別件とは?」


ダリオが挨拶しながら差し出す手に答えて、光輝も挨拶をする。


「それは明日お話ししましょう。国王陛下にも明日お話しさせていただく予定ですし、国王陛下もお堅い話は無しだと言っておりましたので、今日は楽しい話で盛り上がりましょうか。」

「それもそうですね。」


他愛もない話をしつつ、時間は過ぎていった。

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