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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
125/186

ヴァネッサ

「キサマ、ヴァネッサの姐さんを知らないのか!?それでも冒険者か!?」


後ろで戦っていた冒険者から野次が飛んでくる。

知らんもんは知らん。誰だよヴァネッサ。


「アタシはSランクのヴァネッサだ。皆からは姐さんと呼ばれている。」

「はぁ・・・Aランクの隼人です。」

「そうか。さっきの投擲で援護してくれ。本体が出てきたなら一撃デカイのをくれてやる。」

「・・・何で俺が。」

「オマエしか出来るヤツがいないからだ。遠距離攻撃が出来る人は、前回までの戦いでほとんど療養中だ。」

「・・・あのジジイ、全部のサポートってのはそう言うことか。」

「では、行くぞ!」

「ちょ、えぇ~?」


ヴァネッサは泳いでいる魔物を踏み台に、クラーケンに近づいていく。

後で文句言われるのも癪なので、集めてきたトライデントを投げて援護する。

ヴァネッサに襲いかかる脚をタイミングを見計らってトライデントで迎撃していく。


「離れていろ!」


クラーケンに近づいたところで、戦っていた冒険者に声をかける。

冒険者達は何をしようとしているのかわかっているようで、一目散にクラーケンから離れていく。


「喰らえ!」


ヴァネッサはクラーケンの上から、槍を投擲する。

纏いを使ったのだろうか、槍は電気をおびてバチバチと音をたてながらクラーケンの殻に少しだけ刺さる。


「サンダー!!」


ヴァネッサの叫びと共に、空から雷が落ちる。

雷は轟音と共に先ほど投げた目印の槍に落ちるが、周囲の海へと拡散してしまってクラーケンの身体を少し焦がす程度にとどまってしまう。

海に広がった雷は、周りに居た小型の魔物を感電させて、死体をプカプカと浮かばせる。


「チッ。やはり雷の威力は海に逃げるか。」


高威力の技がクラーケンにはあまり効かず、ヴァネッサは舌打ちをして悪態を突きながら、槍を回収して俺の近くにに戻ってくる。


「全然効いてないぞ。」

「解っている。これ以上威力を上げると、水中にいる騎士や雨で濡れた冒険者にまで被害が及んでしまうんだ。」

「・・・そうか。他に策は?」

「決定打となるモノはないな。脚は切っても再生する事が解っている。どうにかして本体にダメージを与えたいんだが、どうしたものか。」


確かに火属性と水属性は効かないだろうし、風属性も決定打としては欠けるものがある。


「土属性の魔術師で、上から岩を落とすとかはどうだ?」

「難しいだろうな。一人では無理だし、複数人でやるとコントロールに問題が出てくる。」

「なるほど。足止めできれば良いわけだ。」

「正気か?」

「やるしかないんだろ?」


最悪は俺が崩拳で叩き割るしかないだろうが、やれる手は先に打ってもらわないと。

俺の出番なんて要らないから、岩でさっさと片付けてほしいところだ。


「ジーノに掛け合ってみよう。足止めを頼む。」


ヴァネッサはそう言い残して走り出し、先ほどまでクラーケンと戦っていたメンバーにも話をしてジーノのところに向かっていく。


気を取り直して、クラーケンとの戦闘を再開する。クラーケンは雷で焦がされた事にキレているのか、さっきまでのゆっくりさとは打って変わってかなりのスピードで近づいてくる。

海面から顔をだしている脚を鞭のようにしならせて凪ぎ払い、家ごと冒険者を弾き飛ばす。


「怪我人を背負って下がれ!」


俺は迫りくるクラーケンの脚を強化したパンチで止め、腰が引けている冒険者達に指示をとばす。


クラーケン担当の冒険者達も、数人がかりで脚を止めている。

ループスは、脚を一本噛み千切っていた。


「ルー、そのまま全部噛み千切れ。」

「ガゥ!」


俺も負けじとファイヤーソードで脚を切り落とす。受け止めてから切るので、時間はかかるが、雨が当たらないようにゼロ距離で下から振り上げれば何とかなりそうだ。


ループスは2本3本と噛み千切っていき、俺も冒険者達が止めてくれている脚を切り落とす。しかし、努力はつかの間で、失くした脚が順次再生していく。


「こんな速度で生えるのかよ。」


これでは時間稼ぎもままならない。脚を引っ張ってクラーケンと綱引きをした方がまだ現実的だ。


どうしようもない状況に新たな策を考えていると、ヴァネッサが戻ってくる。


「待たせたな!もう少し踏ん張れ!」

「「「「「ハイ!」」」」」


ヴァネッサの激に、冒険者達は揃って返事をする。なにこのシンクロ感。レックスの時も思ったけど、コイツら実は軍隊かなんかじゃないのか?


後ろからは複数の魔術の詠唱が聞こえてくる。詠唱を背に俺も動き出し、クラーケンの意識が後ろの魔術師に行かないように適度に攻撃して撹乱する。


「下がれ!大魔術を放つぞ!」


魔術師のリーダーらしき人物が叫ぶ。その声を聞いて、冒険者達は一気にクラーケンから距離を取った。


「「「「ギカントロックパイル!」」」」


直径2メートルはありそうな岩の杭が雲の中から顔を出した。重力と魔術でコントロールされた杭は、一直線にクラーケン本体に激突する。


ーーゴッーー


音というよりも、衝撃波を撒き散らして杭とクラーケンは海の中へと沈んでいく。


「「「「ウォーターウォール」」」」


石杭の衝撃で発生した波や飛沫を、水の壁がガードしてくれる。すごい親切な魔術師達だ。


「後方にいた騎士団の魔術士を引っ張ってきたが、正解だったな。」

「最初からそうしてくれよ。」


ヴァネッサが俺の隣に立ち、話しかけてくる。後方にいたのなら一緒に戦ってくれればもっと楽できたのに・・・


「騎士と冒険者の間でも色々あるからそうも言ってられんのだよ。最終防衛ラインの守護もあるしな。」

「そうか。」

「これで終わったと思うか?」

「知らん。あんたの方が俺よりクラーケンに詳しいだろ。」


まぁ、ここで終わるようならもっと早くケリが着いていた気もするのだが、ここは何も言わないでおこう。下手にフラグになっても困るし・・・


「では、警戒は続けよう----」


--ザバン--


波の音と共にクラーケンが水面から顔を出す。殻は石杭を喰らってヒビが入っているように見えなくもない。


「全然だったな。」

「チッ・・・全員!戦闘準備!」


ヴァネッサが叫ぶ。全員が一瞬にして武器を構え、迎撃態勢を整える。

ふと、魔力が高まるのを感じて空を見上げると、一本の光の筋が空を駆けた。


「・・・やっときたか。」

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