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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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神託の結末

「そんなわけだから宜しく。」


俺は王宮に新しい神託の説明に来た。

国王陛下をはじめ、勇者パーティーその他数名と、事情を知っている人を集めて会議を開く。

会議と言っても、俺が一方的に昨日の話を喋るばかりなのだが。


「事情は理解した。女神様の言葉であれば、多少強引でも動くしかないな。」

「仕方ありませんね。しかしハヤトさん、今の話は嘘ではありませんよね。」

「・・・当たり前だろ。俺を何だと思ってるんだよ。」


国王陛下は前向きに検討てくれるが、アリア王女からは疑いの目を向けられる。俺が何したって言うんだよ。


「何もしない人でしょうか。嘘はつかないとは思いますが、念のためです。」

「デスヨネー」


エスパーか何かですか?確かに自分でも何もしない方だと思っているが、想像以上に的確に言われたな。


「日頃の行いのせいだよね~」

「そんなに悪くないだろ。」


悪くないよね?逃げ回ってるけど、結局捕まってなんだかんだで働いていると思うし、そこまで信頼を失うようなことはしていないはずだ。


「最低よ。」


すかさず雫からツッコミが入る。周りもうなずかないで貰えるとありがたんですけど・・・

俺がマジで信頼ゼロみたいじゃん。笑っていられるうちに早くドッキリの看板を出してもらえませんか?


「・・・」

「冗談よ。」

「ちょっと本気っぽかったぞ。」

「そんなことより、話を進めるわよ。」

「おい。」


俺の視線に耐えかねたのか、雫は顔を背けて話を先へと進めていく。

雫のわざとらしい動きにあきれつつも、仕方なく乗っかる。会議なんて面倒なことはさっさと終わらせてゆっくりしたいものである。


「アトランティス行きを控えている僕達が今から動くのは難しい。国王陛下、国内のウワサの騒ぎの一件お願いできますか?」


光輝が引き継いで、話を進める。

どうやら救援要請があってアトランティス行きは決まっていたようで、出発目前だったようだ。そんな中ディアの神託が下りて忙しさに拍車をかけてしまっていたらしい。

まさに踏んだり蹴ったりである。


「かまわない。アルカディアの事は我々で対処しよう。」


国王陛下は光輝の提案に頷いてから、大臣に目配せをする。どうやらこの問題を何とかできそうな感じなので安心する。

うちの女神様がお騒がせして大変申し訳ないかぎりである。


「宜しくお願いします。」

「今日の臨時会議はこんなところでしょうか?」


こうして議会は閉会し、後日ウワサ根絶のために王宮と教会が動き始める。




そして数日後、俺は何故か空の上にいた。


「で、何で俺はここにいるんだ?」


王族が所持する飛行船で、皆は優雅な空の旅を楽しんでいる。そんな中、俺は訳もわからず船首付近の甲板で外を眺めながらボーっとしていた。


「神託だからしょうがないじゃない。」


俺の独り言に返答が返ってくる。横を見ると雫が俺の隣に立っており、若干してやったり顔のニヤケ面が妙に憎い。


そう、問題はディアの神託だ。

神託自体を無かった事にしたため、俺の考えでは聖騎士のアトランティス行きも無しになった気でいた。だからこそ、宿でループスとのスローライフ開幕を謳歌していた。

それが間違いだった。スローライフ開始から数日で、その幻想は木端微塵にぶち壊された。

王宮側はこれ以上ディアの怒りに触れない為、神託通り俺を丁重にアトランティスに運ぼうと考えていたようだ。

きっと、どこぞの誰かの口添えがあったに違いない。正確に言えば、今隣に立ってる雫とか、今勝ち誇った顔をしている雫とか、皆のお母さんである雫とか・・・

俺は長期間の依頼に出なかったことを後悔している真っ最中だ。


「・・・その神託はなくなったんだよ。」

「世間一般には無かった事にしたわね。でも、神託そのものが帳消しになった訳じゃないわ。」

「そうですわ。みんな揃ってお出掛けも楽しそうですわね。」

「そ~だよね~」


女性連中がこぞって雫に賛同してくる。

こうなってしまったら、どうあがいても勝ち目はないので早々に諦める事にする。


「観光スポットが多いんだっけ?」


水の都アトランティス。別名、観光都市アトランティス。その名の通り水と共にある町で、町全体に水路が張り巡らされ、町中をボートで移動できるらしい。

それだけ聞いて、俺はイタリアのベネチアを想像した。しかし、実物はもっとすごいらしい。

違うところは、水中にある。アトランティスの町は下にも伸びている。正確には海底にある建物が海上に顔を出していると言った方が的確だろうか。

海中の景色を楽しめる海底都市と、キレイな海の上にある海上都市。そんな二つの顔を持つ町がアトランティスである。


「君達は行く先が非常事態に陥っているということを忘れてないかい?」


光輝からツッコミが入る。そう、今アトランティスは大型の魔物の脅威にさらされているらしい。

正直、町は半壊しているんじゃないかと思っている。海底都市とか直せるのか?


「非常事態じゃなければ有名な観光地でしたのに。残念ですわ。」

「ちょっとぐらいは観光できるかな~?」

「色々とあって出遅れたけど、さっさと終わらせて観光するわよ。アリア王女、風向きは順調ですか?」

「えぇ、いい風が吹いています。二日ほどで着けるかと思います。」


アリア王女を含め、女性陣はやる気満々である。そりゃあ、海底都市が全面パノラマの水族館状態とあっては気にならない理由はない。

俺だって一度は見てみた気もするし・・・


「じゃ~それまでは優雅な空の旅だね~」

「空の魔物はわたくしが倒しますわ。」


杏華はライフルを大事そうに抱いて、魔物殲滅にテンションを上げている。そんなに気に入っていただけたなら頑張ったかいがあります。

若干バトルジャンキー化している杏華を生暖かい目で見つつ、心の中でこの状態が今だけであることを祈る。


「杏華、浮かれすぎて魔力を使いきらないでね。」

「も、もちろんですわ。」


一抹の不安をいだきつつ、飛行船はアトランティスに向けて進んでいく。

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