鍛冶屋
朝、目を覚まし今後の行動を整理する。
来週、サラマンダーを狩りに行く約束をしたが、それまでにやることがたくさんありすぎる。
先ずは、金稼ぎだ、旅の用意も買えやしない。
次は教会からの自立か、ここも早く出ないと教会職員の目がだんだん痛くなってきた。
気にしなければ問題無いが、このタイミングで出るのがベストだろう。
長期滞在できる宿も探さなきゃいけないし。
物価も飯くらいしかわからん。
召喚されてから今までが濃厚過ぎて、町を見る時間がなかった。
そのせいで、王宮、教会、ギルド、関所くらいしか知らない。これは大問題だ。
「困った時はレイラさんに相談だ」
今日も朝一の混雑を避け、ギルドへ向かう。
「レイラさん町の地図とかないかな?大雑把なやつで良いんだけど。」
「ここには置いてないです。行きたい所が有るのであれば、私が簡単に説明しましょうか?」
「それは助かる。結構多いから簡単な地図も書いてくれると助かる。」
「わかりました。どこが知りたいのですか?」
今朝まとめた話をして、簡単な地図を描いてもらう。
「ありがとう、ちょっと行ってくるよ。」
「はい、お気を付けて行ってらっしゃいませ。」
ギルドを出て、町を散策する。
宿屋は飯が美味いところをいくつかピックアップしてもらった。長期滞在となると、コスパの高い所が良いだろう。今回は前を通って、雰囲気だけ見て行こう。
武器、防具、ポーション等の冒険者として必要となる店。雑貨や魔術の媒体となる道具を扱う店と多種多様な店を回る。
この辺りは、商店街っぽくなっていて、近くに色々あるため非常に便利だ。
賑わっている所ではなく、一本裏の通りの古めの武器屋に入ってみる。
「いらっしゃい」
どうやらあまり歓迎されていないっぽい。すごく嫌そうな顔をしている。
投げ売りの安い武器が並べられていて、奥には数本、ディスプレイ用で作られたであろう高級品があった。
投げ売りは素材別で固まっていて、ディスプレイの物は、素材から特性まで細かく書かれていた。
どうやら金額はピンキリで素材によって跳ね上がるみたいだ。
武器の良し悪しなど解らないので、店主っぽいおっさんに聞いてみる。
「すまない、攻撃用の手甲を探している。新しく作るんだが、それが出来るまでの繋ぎで、格安の物無いか?」
「そこにあるもんだけだ。奥にはないぞ。」
「そうか、置いてあるものは古く感じるのは気のせいか?」
入った時から思っていた。なんとなく古いものを扱っている気がする。
それか売れなさ過ぎて、ここまで年数が経ってしまったのか。
「感じるも何も古いのさ、中古物だよ。」
「中古屋だったのか」
古さはあるが、どれもきれいに磨かれていて傷があるようには見えない。リペアのプロなのか?
「違う。新品も作ってるが、気に入ったやつにしか作らん。」
「・・・俺は合格か?」
「たったこれだけの会話で何を判断しろと」
「雰囲気とかでわからんのか?」
俺からすごいオーラとか出てないか・・・
一応勇者なんだけど・・・ハゲによく絡まれるし・・・
「ひやかしなら帰れ。表の人気店なら探し物もあるだろう」
「あそこの雰囲気が好きじゃなくてね。ここみたいな、いかにも職人って感じの店の方が掘り出し物が有るかと思ったんだが。」
頑固オヤジが作る一級品ってのは定番中の定番だろう。
「さあな、新品を作るんだろう?じゃあそこで買え、まけてもらえるだろう」
「まだ紹介されてないんだ。店を知らない。」
「そんなテキトーに店を決めるのか?」
おっさんが少し苛立ったように俺に問いかける。
武器屋としてのプライドなのか、優しさなのかは判断できんが、言ってる事は理解できる。
「信頼出来る人だからな。ただ、あんたの方が良い武器を作るんなら、あんたに頼む。武器の事はよく知らんが、あんたの作品と比べて俺が判断する。」
「だったらここにある武器をよく覚えておくんだな。」
「それ、意味ないだろう」
「なぜだ?」
「違ってたらすまんが、そのディスプレイの品も中古だろう。」
「ほう!?」
俺の発言に驚いたように目を見開く。
「装飾に統一感がないし、素材の関係もあるんだろうが、価格はバラバラ、極めつけは、きれいに砥いであるが、そこの投げ売りと一緒で中古品だろう。」
なんとなく感じていた事をそのまま言ってみる。これでキレられても、リリィさんの紹介の店に行けばいいだけだしな。
しかし、オヤジの反応はいい方向に違った。
少しの間沈黙していたが、耐えきれなくなったのか、少しニヤけてから笑い出した。
「くっはっはっは、見抜いておったか、気に入った。その通り、ここにあるのは全部中古品だ。奥に来い、俺の作品を見せてやる。」
カサリは表の入り口の看板を閉店に変えて、カウンターの奥へと案内してくれた。
扉をくぐると、工房になっていて、炉や金床見たことのない鍛冶道具が所狭しと並んでいた。
「俺の工房へようこそ、名のり遅れたが、この工房の主、ドワーフのカサリだ。そんで後ろを見てみろ、これが俺の作品だ。」
そう言われて後ろを振り返ると、くぐってきた扉側の壁にカサリの作った武器が飾ってあった。
武器の持つオーラが明らかに違う。武器自体が持つ力強さと、邪魔にならない程度の装飾とが混じり合い、武器の性能もそうだが、芸術と言われてもいいくらいの仕上がりだ。
「すごいな。さっきまでの商品とは格が違う。俺は冒険者の隼人だ、紹介される前に一言、良い鍛冶師を見つけたと言っておくよ。」
「作品には自信がある。断る気で紹介されて来い。」
「わかった。なかなか楽しかったよ。」
そう言って店を出る。
お目当ての物は無かったが、左があるし、右手は素手でも大丈夫だろう。
その後ポーション屋を数件はしごし、市場価格を調べ、魔術ショップにも行ったがめぼしい物は無かった。
よくよく考えれば、魔術書も道具もフィーレが持ってるし、俺がわざわざそろえる必要はない。
この辺りで、日が傾いてきたので、街の散策を切り上げた。




